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プロローグ

僕のベストプレイスは、この河川敷。


ここは岩手県のとある1地区。

この地区のほとりにある、そこそこ広範囲に広がっている河川敷に、僕はよく来ている。


この河川敷は、時々ジョギングをしているオジさんや、犬の散歩をしている人もいる。

暇を持て余した人達が、一斉に集う場所が、ここである。


以外にも、飲み物を豊富に備えている自動販売機や、適度に座れるベンチや階段、さらにはトイレまでがあるので、

結構時間をつぶすことができる。そこそこ広い事からも、何時間居座っても目立つ事もない。

この最高の楽園を見つけてしまってからというもの、僕は、最近しょっちゅう時間をこの河川敷でつぶしている。


まぁ、青春系ドラマに出てくる河川敷、そのちょっとパワーアップバージョンと思ってくれれば、それでいいとしよう。


学校が終わって帰るまでの1時間くらいは、この公園にお世話になっている。


この時間帯が一番の見所。

ちょうど学校から帰宅すると、ほんのりとした、淡い夕焼けの光が辺り一面の自然をちょっと桃色がかった橙に映えさせる。

そしてそれと同時に、少しずつ回りの住宅街が明かりを付け始める。


まだ空はほんのり明るいのに、住宅街の明かりも照らされている。

自然の明かりと人工の明かりが共存するこの瞬間、俗に言うトワイライトタイム。

この瞬間が何とも言えない美しさでたまらない。

まあ、これが1つ。



そして、もう1つ、この河川敷での楽しみがある。

それが、ここで仲良くなった、ユリアと名乗る見知らぬ女性。


髪を染めていてピアスを開けている。

パッと見は、いわゆるヤンキーと見えるかもしれないだろう。


しかも、学生なのか社会人なのか一切分からない。

何をしているかも、というかなんなのか全く分からない。


出会いは約1週間前。そんなに昔では無い。


僕が学校がめんどくさくて仕方なくなり、どうでもよくなってこの河川敷に来た時に、いきなり話しかけられた。

最初はちょっと強引な色仕掛け的な迫り方で僕に迫って来こられたので、もう逃げようかと思った。


ああ、どっかのギャルに絡まれたな俺。御愁傷様と。



でも、強制的に話しかけられているうちに、僕が学校がめんどくさくなってサボっている事を打ち明けると、

彼女自信のうざったい宇宙哲学論を織り交ぜた饒舌説明を、辺りが真っ暗になるまで受けた。


そりゃもう、延々と彼女のターンだった。

でも不思議な事に、以外と一理あると思ってしまう自分が居た。

永遠とべらべらしゃべって疲れるけど、どこか不思議な説得力があるのだ。



で、今日はそんなユリアさんから

「特別な指令を与える」

という事で、夕方、学校が終わり次第ここに来てくれといわれた。


だから僕は今、ここに居る訳だ。


さわさわと自然の周波数を奏でる草の音色に身を委ねていると、ライトに照らされている道路から、

1人の女性が自慢の巨乳を見せつけるがごとく、谷間を揺らしながら歩いて来た。

うん…やっぱりちょっとはしたない見た目ではあるな。


でもまちがいない。あれが、ユリアさんだ。


ユリアさんはそのまま無言で僕の所まで歩いて来て、僕の隣にストンと腰を下ろした。

しかし、それもつかの間、僕の胸ぐらを掴んで引き寄せ、僕の頬にいきなりキスをしそうになった。


「うわ!ちょっと!ユリアさん」


とっさに僕は身体を全力でのけぞらせ、自動強制キスを回避した。

が、胸ぐらはがっちりと掴まれていて離れない。いや、離してくれない。

いや…離してくれよ…。


そしてまた、ユリアさんが顔を近づけてくる。


「ちょっ…ちょっと!ジョギングのオジさんに気づかれるって!」


僕の言葉通り、約20mの所に、ジョギングをしているオジさんが居る。

オジさんのこのスピードなら、あと数十秒で、僕たちの所を通過するだろう。


「ゆ…ユリアさん!本当に辞めて下さいって!」


すると、観念したようにユリアさんがやっと手を離してくれた。

と思いきや、それもつかの間、


「もー!つまんないよお前ー!」


と、罵声を浴びせられた。


その大声は、河川敷全体に轟き、もちろんジョギング中のオジさんもコチラに気づいた。


キ…キスしてた方が穏便に済んだかも…。


そう。ユリアさんは、いきなり何をしでかすか分からない所がある。

外見からも、何となく手に負えなそうな雰囲気があるが、ちょっと度が過ぎている所がある。

でも、度が過ぎ過ぎているがゆえに、不思議な気楽さがあったりもしなくもない。


1週間もあれば、このキチガイ度合いには慣れるもので、幸か不幸か、僕は以前よりはだいぶ、

このユリアという異質な女性を受け入れれるようになってしまった。


「あ、そういえばユリアさんは、今日は何を頼みに来たの?」


「あ、そうそうそうそう。ここら辺でちょっと気になる事があってね。

それを調査するのに協力して欲しいんだよ」


「え?なに、気になる事って?」


「それがだな、ここらへんにある道路で、大量に運転事故が発生しているらしい。

それを突き止めるのに、協力して欲しい」


「事件の…解明ごっこ?」


「あ?ごっことはなんだよ、ごっことは!」


「ご、ごめん…」


ユリアさんには慣れたが、ユリアさんに対する恐怖心はまだまだ抜けていない。


「で、でも…その運転事故はもうとっくに捜査は終わってるんじゃないの?」


「そりゃあね。でも本当の謎はまだ解明されていないよ」


「本当の謎?実は誰かがタイヤをパンクさせているとか?」


「ははっ。そんなレベルの話じゃないよ。大体そんなのは、警察ならとっくに解明出来ているさ。

この事件には、もっと大きな謎が隠されている。それこそ、現代科学では解明出来ないね」


「げ…現代科学?」


「だって、特に危険でもないのに、不気味なほど全く同じ所で20人が運転事故を起こして亡くなっているんだぞ?」


そう…

その道路は、異様に人が死ぬ道路として有名な所だ。

そしてつい最近も、1台の車が考えられない方向に突っ込んだ事件が発生した。

かろうじて乗っている人は生きていたとの事らしいが、どうやらその運転者いわく、


「勝手に車が曲がっていった」


とかなんとか。


しかし、20人…確かにちょっと死に過ぎかもな…。



「ユリアさん…もしかして、祟りとか、呪いとか言うんじゃないだろうね…」


「いいや、それはない。あったとしても、人災だ。

この世、いや、全宇宙は、意思がない所には絶対に事象は起きないんだよ」


「え?どういう事?」


「つまり、事象、物質は、必ず何者かの意思によって生み出されているって考えよ。

例えば君の部屋を思い出したまえ。部屋にある物全て、人間によって生み出された物だろう?」


「そりゃ…まあ確かにそうだけど…」


「そして君自身も、人間から…あの行為によってね!プププ…!」


「な…なんだよ…それはそうだけど」


「まあでもそういう事さ。でも、人間が生み出した物じゃない物もあるけどね。

例えば宇宙とか惑星とか」


「え?それって、いわゆる神様って事?」


「そうなのかもしれないね。流石にそこまでは私はにゃわからんけど。

でも今回の件については、人間の仕業さ。

確実に、この事件を面白おかしく楽しんでやがる奴が、きっと居る」


「ほ…本当なの?それは」


「うん、間違いない。この事件は、必ず仕組んでいる奴が居る」


「で、その仕組んでいる奴を突き止めるのを手伝ってくれと…そういう事だね」


「もちろん!という事で、1つ君にお願いがあるんだけど、良いかな?」


「え…な…なに…?」


「君、明日学校をサボりたまえ」


「えええ!!!」


「えー良いじゃん1日くらい!1日、無駄な授業を受けるのと、この私と

楽しい楽しい探偵活動をするの、どっちが楽しいかはもう分かるよな!」


まあでも実際、この人の言う通りだ。

どうせ学校に行っても、結局役に立つのかよく分からない授業を受け続けるだけだ。

それよりは…うん。僕はこの人と明日一緒に付き添ってみるとしよう。


それに、そんな授業がいやでここに逃げ出して来たわけじゃないか。

そこで、このつまらない日常から脱出出来る機会が巡って来た。


なら、僕はここで乗らない訳にはいかないだろう。




「うん、いいよ。明日、この謎に迫ってみよう」


すると、ユリアさんが僕の肩に馴れ馴れしく腕を回して来た。


「おお!話分かってんじゃん!そうだよ、そう来なくっちゃ!」


か…顔が近い…。

でも嬉しそうだと、こっちもなんだかこっぱずかしいな。

それに、近くで見るとやっぱり整っている顔というのがよく分かる。


「じゃあ、明日の朝6時にここにきて」


「え!?朝6時!早!!」


「あ?うっせーよ。早く来いって言ったら来い!」

「う、うん…」


彼女の威圧には…僕はまだあらがえそうにない…。



そうして、僕たちは明日、不思議な事件を解決する冒険へと旅立つ事になった。



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