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テケリへと剣を突き、その身を穿つ。

だが、子供が小枝で水面をかき混ぜるように、その衝撃はすぐに拡散し収まり、なかったことにされる。

ただ、最初からそこに突き立ててあったかのように、私の剣があるだけ。


私の剣が効くかは不明、いや、おそらく、十中八九、多分、効果はないだろうが、私はテケリを粛清しなければいけない。

人ではなく、騎士として。


突きを繰り出したときと同じ速度をもって剣を引き戻すと、すぐさま先の攻撃に倍する速度を乗せ、二連撃を叩き込む。

二度。


…………。


全く、効果がない。

全力で、殺気を隠すことなく剣を取ったのだけれど、テケリに変わった様子は見られない。

私の力不足に悔しい思いだが、どうしたらいいのか、途方に暮れる。


人に害を成すモノを、放置するわけにはいかない。

しかし、処断するには手には余る。

なれば、どうするか……。


悩んでいると、テケリが身体を蠢かせる。

反撃かと身構えるが、そんな雰囲気ではない。

ただ、ヒトガタの形へと成る。


その姿は、半日前にも見た、のっぺりとした黒い人影だ。

だが、なんだか少し、見覚えがある。


――ッ!?


ソレに気がついたとき、私は我を忘れた。

そして、激情に攫われるままに剣を振るう。

それは、騎士と名乗るのはおこがましい、ただ子供が駄々をこねるようだ。

技も想いもなく、ただ差し伸べられる手が怖くて剣を振るのは、なんとも無様だ。

無様だと、自覚はしているが、今の私にはテケリの芯となっている、彼の骨すらも録に破壊できないといやがおうにも身体に叩きつけられるまで、止められなかった。


ああ、もう止めだ。

私には、どう足掻いても、テケリをどうにかできる力はない。

そして、なぜかテケリは私には懐いていて、こんなに剣を振るってその身を刻もうと、反撃の素振りを見せない。

このまま放置してしまえば、また村々に被害が及ぶかもしれない。

森に潜むという魔物も、まだ討伐できていない。

そして、村人も、近隣の民も、そのことを知らない。

なお悪いことに、おそらく彼によって、魔物が殺されたというような情報が出回っているかもしれない。


ならば、どうするか。

私がテケリを連れ、人に危害が向かわないように立ち回りつつ、森に潜む魔物をなるべく早く討伐し、力を蓄え、テケリを打ち倒すのが最善だろう。


言葉にすれば簡単で、行動に移そうものなら困難極まりない。

だが、やり遂げなければならない。

私の身は既に朽ち、だからこそ、できることもあるのだと、勢い込んで、独り頷く。


テケリが、手を伸ばしてくる。

私は、その手を掴む。

半分、いや、殆ど敗北宣言のようなもので、嫌々だったが、しかたがない。

せめてにと、強く強く握ってみるが、全く堪えているようには見えなかったので、諦めて力を抜く。


テケリは、一歩踏み出す。

私も、この状態で進む足に追いつかなければ、無様に転んでしまうので、慌てて歩みだす。

歩幅は、彼と同じだ。

おそらく、彼の骨を使ってその形を保っているのだろうなと、やるせない思いを止められない。

だが、立ち止まるわけにはいかなかった。


テケリをどう殺すかはわからないが、その前にしなければいけない事が沢山あるのだから。

憎むべき、人の害になるテケリを、目の届かない場所に置くことなぞできないので、少しずつ早くなっていく歩みに遅れないよう、付いていく。


たとえ、人から疎まれようと、私は騎士であり、私という悪を許さない心を持つ自我が健在なのだから。


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