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アレは棒を抜き、自分の中にいたものの体液を見ると、ひどく戸惑っているようだった。

攻撃に、害意を感じはしたが、中にいるモノを一突きで殺せなかったようだ。

やはり、見えない状況だと殺しづらいのかなと思い、ペッと吐き出す。


アレは見る。

出したモノが逃げる。

アレが棒を一閃させる。

転げまわる。


……ほむ。


アレはなんだか、観察しているようだ。

斬りつけられたモノは、叫んでいる。

相変わらず、うるさい。


アレが、棒を騒がしいモノのそばに突き立てると、静かになる。

殺してはいないようだ。

いつたべていいのか、今か今かと待つ。

チラチラとアレの様子を伺いながら、待つ。


アレは、転がっているモノの様子を見ているようだ。

ジッと、見ている。

なので、自分もジッと、見る。


あ……。


死んだ。

アレに刺されて、ビクビクと痙攣したかと思うと、死んだ。

少しだけその様子を眺めていたアレは、急に興味が無くなったのか、別の方へ視線を向ける。

自分も、釣られてそちらへ意識を向ける。


揺らめくモノが大きくなって、木の壁と、その内側に広がっている。

一体、あの揺らめくモノはなんなのだろうと不思議に思う。


ふと、アレが走り出す。

新たなたべものが見つかったのかなと見てみるが、どれがどれだか分からないので、とりあえず目の前のたべものを頂いてしまおうと思う。


のしかかる。

飲み込むと、グムグムと咀嚼する。

そこそこ美味しい。

鹿には劣るが、狼よりは美味しい。


少し、筋張っていて、酸っぱいけど、これはこれでと満足していると、アレが戻ってくる。

左腕がダレている。

穴が三つ空いていて、千切れる寸前でぶら下がっている状態だ。

身体も、所々に傷が新しくでき、なんだか濡れていて、異臭がする。


一体、自分が目を離している隙になにがあったのだろう?

ただ、先程まで自分が駆けていた場所にいたモノらが、アレに害を成したことは分かる。

今も咀嚼しているモノのように、自分がたべてしまおうかと向かおうとするが、アレは自分には構わず、ドンドンと森の奥へと走っていく。

いや、構わずだが、すれ違う一瞬に、自分のほうへチラリと目を寄越したのは気のせいではない、はずだ。


後ろに引っ張られるような悔しさを感じつつも、アレへと付いていくことにした。

なにより、ここで離れてしまったら、再会する目処が立たないのだから。


……随分と進む。

ズンズンと、終わりがないように、一緒になって進んでいく。

ふと、思い出したように、止まる。

自分も、止まる。


アレは、自分を見る。

自分も、アレを見る。


…………。


アレは、またもや棒を抜く。

自分を、刺す。

刺す。

刺す。


もう一度、アレの前にペッとしたモノを出して欲しいのかなと理解した。

だが、すでに骨しかなくなってしまったし、他のモノも入れていないので、どうしようもない。


どうしようかと悩む。

悩んでいる内にも、アレに刺され続けている。

時々、横に払ったりもしている。

余程、怒っているのか、わりと激しい。


……なにも、思いつかない。

とりあえず、たべおわったので、骨を使ってアレの形を模してみる。

いや、模すのではなく、これはもう、そのまんまと自画自賛してもいい。

骨格的に似ていたからなのか、以前よりうまく形を取れている。

二足で立つのも、苦ではない。


アレを、見る。

攻撃は止み、害意も消え去っているが、戸惑っているようだ。

何に対して戸惑っているのか、そもそもそんな感情を感じているのかは不明だが。


手を伸ばしてみると、手を薙ぎ払われる。

そして、首を突かれる。

次に、左胸、右脇腹と突かれる。

骨に棒が掠り、キャリリと身体の中で響く。

骨に達するほどでもない、浅い払いも、九度ほど連続して行われると、間髪入れずに、顔を突かれる。

今度は、カッという音を鳴らして棒と骨が当たるのが分かる。


今回の形は、全身に骨を入れて、自分の身体を凝縮させ、その周りに纏わせて強度を、その上に柔らかくさせた身体を纏わせて柔軟性を持たせているので、中々の自信作だ。

だが、骨を全身に入れ込んでいると、それが損傷する確率も上がるのだなと実感した。

痛くも痒くもないが、芯が傷つきやすいと不便だなと思った。


ふと、アレはなにかを諦めるかのように棒を抜く。

自分が、もうたべものを入れていないことがわかったのかな?

わかってくれたのならば、いいなと、手を伸ばす。


アレは、ノロノロと自分の手を握る。

自分は、握り返す。


アレは、突っ立っているので、自分が一歩、少し力強くなった歩みでもって、少し先に、進む。

アレは、自分に少し引っ張られるように、しかし、ちゃんと付いてくる。


少し嬉しかったので、歩む足がどんどん軽くなっていく。

アレも、自分に追いつくように足を前へと出す。


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