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鬼神 -onigami-  作者: 紫月
第1章:鬼神と鬼狩
4/8

*翠の鬼守と碧の鬼狩*

愁杜を嫌う翠憐。翠憐の思惑とは――…?




「<この……鬼狩(おにがり)めが……ッ!!!>」

 翠憐(すいれん)は叫びながら空を進み、愁杜(しゅうと)の頭上高く、(にぶ)く光を反射する切っ先を(かか)げた。しかし、

「<いい加減……止めろってッ!>」

「ひゃ……<ぃやぁあ! 放せ! 触るな鬼狩ぃ~~~!!!>」

 武器は(はた)き落とされ、いとも容易(たやす)く担ぎ上げられ、捕獲(ほかく)される。

「<……うん。今日も仲がよくて何よりだ>」

 緋誓の執務前の恒例行事(こうれいぎょうじ)となりつつある朝の微笑ましき(?)光景だ。

「<緋誓(ひちか)姫様! 仲よくなどありません!!>」

「これが仲いいように見えるのか、緋誓?」

「ああ、見えるよ。やはり一月半も()てば心を開くか」

 そう、あれから……皇帝(こうてい)皇后(こうごう)両陛下の来訪の日から早一月半の月日が流れた。

「<緋誓姫様! 憐はこいつ嫌いです!! 何故(なにゆえ)鬼神(おにがみ)である緋誓姫様の(そば)にこんな鬼狩りがいるのですか!>」

「<まあそう言うな翠憐>」

 緋誓と愁杜と翠憐。主従と言うよりは兄妹のような関係だ。

「……っと時間だ。悪いけど今から明日の夕暮れまで私は地下に()もるよ。愁杜、何かあったらお前が知らせてくれ」

「食事は?」

「あー……それも頼む。自分では意識しないからな」

「わかったよ」

 緋誓は愁杜との話に満足すると、翠憐に向き直り言った。

「<翠憐。(くれ)々も愁杜を傷つけないように、な? 傷つけた場合は、(たと)えお前であっても許さない。いいね?>」

 翠憐は何も言わなかった。緋誓はその沈黙(ちんもく)肯定(こうてい)と取り、地下へ行った。

「さてと、書類整理でもしといてやるか」

 緋誓のいなくなった部屋で、愁杜は書類の整理を始めた。

「<何ならお前は部屋に戻ってるか?>」

「……ら……しい……」

「<え?>」

 鬼の(こと)で問い掛けた愁杜の耳に、途切れ途切れの言葉が届いた。

「<何か言ったか?>」

「…………」

 (しば)しの沈黙の後。



「……(けが)らわしい……」



 嫌悪(けんお)感も(あら)わに翠憐は言い、そのまま部屋を出て行った。

「……けがら……?」

 愁杜は翠憐の口から『穢らわしい』と言われたことに多少驚いていた。だが、それを上回る衝撃(しょうげき)があった。それは、翠憐の放った“言葉”が鬼の言ではなく……

「人間の……言葉……?」

 人間の話す言葉だったことだ。

「……まあ、別に(わか)らない訳じゃないんだな……」

(俺が鬼の言解るのと同じか)

 そう一人納得し、愁杜は山積みになっている書類の整理に(いそ)しむのであった。




「翠憐様」

 愁杜を残し、執務室を後にした翠憐を呼び止める声があった。

「…………」

 翠憐は、無言のままゆっくりと声の方へ振り向いた。そこには翠憐付きの侍女(じじょ)がいた。

「大丈夫ですか……? 御気分が(すぐ)れぬ御様子ですが……」

「あーうん、大丈夫。何も問題ないよ」

「そうですか」

 翠憐は侍女と二人きりで話す時だけは、はっきりと人間(ひと)の言葉で話す。

「鬼神様の御機嫌は如何(いかが)でしょう?」

 侍女は、そっと静かに翠憐に問い掛けた。

「悪い。……急を要するかな。まだ?」

「申し訳ありません。今暫し時間を要するものかと(ぞん)じます」

「……そう……」

 翠憐は遠い()をして、誰にともなく(くちびる)を動かす。

「もう少し……。もう少しで我が兄様(あにさま)が……。鬼守(おにもり)片割(かたわ)れが、目を覚ます……」

「……はい……」

「そうすればきっと、緋誓姫様も……。早く……早く目お覚め下さい……音璃呪(ねりじゅ)兄様……」

 翠憐は(わら)った。満足そうに、(あざけ)るように。その時、


 バサバサ……バサッ!


「!!」

 翠憐達の背後に現れたのは――…。

「何故、あなたが……ッ!!」




 運命は嗤う。ふわりふわりと舞いながら。悲鳴の様に、狂気の様に、乾いた(きし)みを上げながら……。



今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。マイペースな更新ですが、これからも読んでやってください。評価、感想など頂けると嬉しいです。

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