日常
彼には誕生日プレゼントがなかった。
お年玉も、クリスマスプレゼントもなかった。
その代わり彼には、借金にまみれたお人好しな父親と
家族に気遣う母親の「愛」があった。
彼にはお金があった。
その代わり、家族がいなかった。
否、「愛」がなかった。
彼らには欲しくてたまらないものがあった。
しかし、それは願っても手にいれることは
できないはずだった。
-俺がお前らの願い、叶えてやるよ-
「修一、早く帰ろうぜ!」
「おい、待てってさっきからいってるだろ!」
先程まで静まり返っていた教室に
大声が響く。
「今日は新作ゲームの発売日なんだよバカ!
はやくしねーと売り切れちまう!」
「お前が先にいってればいいのに・・・」
「二人で割引なんだよ!
・・・お前はなんで片付けが下手なんだよ・・・。」
「・・・先いってるぞ。」
「ちょっと待てよ!片付け終わったなんて
聞いてねえよー!!」
~ゲーム売り場のレジ~
「ついに!ついにあのゲームが買えるぞ!」
「誠、今思ったんだけどさ、
俺必要なくねえか?お前金持ってるだろ?
割引されなくたって・・・」
「俺は節約がうまいんだよ!」
「・・・・・・。」
「なあ修一、このあと暇か?俺とゲームしないか?」
「ああ、分かった。その代わりその顔やめろ。
ニヤニヤして気持ち悪い。」
「んなことねえよ!そこにいるギャルが俺のこと
ガン見してるぜ?やべぇイケメン・・・って思ってるぜ、絶対。」
修一には分かっていた。あのギャルが「キモ・・・」と
呟いたのを。
神崎 修一 ・・・ 本作の主人公。
ごく普通の高校2年生。
和菓子が好き。とんこつラーメンが嫌い。
藍沢 誠 ・・・ 修一の親友。
勉強が苦手で、ほぼ体育で単位をとっている
かもしれないというのが自慢。