58 イケメン超能力者の逆襲(1)素朴な生活
18話でプリンセスの魔法で遠くの田舎に移動させられてしまったイケメン超能力者は、大自然の中で生活していた。
いきなり自分が森の中にいることに気づいた時、彼は途方に暮れていたが、たまたま通りかかった農家の女性が優しい人で、彼女の家にしばらく住まわせてもらうことになった。
大家族なので、彼女と夫、そして3人の子供たちと夫の祖父と一緒に寝起きし、3度の食事も共にしていた。
彼自身は二階の端にある小さな部屋を与えられていた。彼は無一文だったが、寝食を共にさせてもらう代わりに家業である農業を手伝っていた。
大自然の中で素朴な生活を送り、土にまみれて農業をしているうちに彼の心の中の邪悪なものが減り、彼本来の素直な性格になりつつあった。
彼の部屋にはテレビも何もないので、寝食の他には農作業だけという素朴な生活だったが、それがかえって彼の人間形成に良い影響を与えているようだった。そして最近では自分が優れた超能力者であることを忘れかけていた。
そんなある日のこと、鍬で畑を耕していると
「よお、イケメン超能力者君、元気にやっているようだね」
そこには以前彼を高給で雇っていた黒マスクの男が立っていた。マスクを被っているので、笑っているのか、無表情なのか皆目見当がつかなかった。
「君を見つけるのに苦労したぜ。各地に散らばっている俺の部下たちの情報を集めてやっと探し当てたっていうわけだ」
「何の用だ?あの女子高生魔法使いに敗れたブザマな姿を笑いに来たのか?」
「とんでもない。俺は君の能力を高く評価しているのさ。勝負というのは時の運だ。あの時はあの小娘の作戦がうまくいったというだけのことで、作戦さえうまく立てれば、絶対に君が勝てると思っているのさ。だからこうして苦労して探していたというわけさ」
「それで?」
「また俺に力を貸してくれないか。あの小娘には手を焼いていて、金儲けの邪魔ばかりされているのさ。
あの小娘を始末してくれたら300万円やるぜ。今日は手付金として50万円を今すぐ渡す用意があるぜ」
「俺は改心して、今のこの素朴な生活に満足しているのさ。金なんか要らないのさ。さあ、お前に用はない。帰ってくれ」
「ほお、かつてはすさんでいたお前がずいぶん変わったものだな。しかしだな、人間というものはそう簡単には変われないのさ」
すると女の子の声がした。
「お兄ちゃん、私も手伝うから。私の超能力もなかなかのものよ」
「亜紀子、どうして?」
「君が協力してくれないのなら、君の妹を我々の犯罪に巻き込むが、それでいいのかな。彼女の超能力は君ほどではないが我々の役に立ちそうだからな。今回君がこの妹さんと協力して仕事をしてくれたら2度と君と君の妹さんに声はかけないと約束しよう」
「妹は関係ない。妹に手を出すな」
「妹さんはすっかり仕事をする気になってるよ。」
「クソっ、汚ねえぞ。人の弱みにつけ込みやがって」
「お兄ちゃん、一緒に仕事をして自由になろうよ」
「うぐっ。くそー。わかったよ。本当の本当に今回だけだぞ」
マスクの男は胸ポケットから一枚の紙と札束を取り出して彼に見せながら
「これが誓約書だ。そしてこれが手付金の50万。さあ、受け取れ。二人で力を合わせればあの小娘は始末できるさ。成功を祈ってるぜ」




