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55 透明人間(3)

ここはシャトーのリビングルーム。プリンセス、マーガレット、爺、モンちゃんがあれこれと話し合っているとパピヨンちゃんからの連絡があった。


いつもは音声つきの映像が届くのだが、どういうわけか今日は映像も音声も無く、テキスト、つまり文字だけが送られてきたのだ。


「実は息子のドロールの部屋で彼の行動を偵察しようとしていたところ、まずいことに私は捕らえられてしまい、今虫かごの中にいます。


今日は帰れないので、エネルギーを節約するために現時点での映像は送らず、かなりエネルギーを節約できる文字のみの連絡をしています。


私は恐らく明日の午後、彼が学校から帰ってきてから殺される、つまり彼の蝶の標本コレクションにされるようです。


けれどもそれまでは虫かごの中から偵察活動を続け、もし決定的な場面があればそれを写真に撮り、残りのエネルギーで何とかシャトーへ送ります。


私は明日命を失うことになりそうですが、少しでもお嬢様のお役にたてれば嬉しいです。今回のミッションはこれまでで最も大切なミッションだと心得ておりますので、決して助けには来ないでください。


今までありがとうございました。楽しかったです」

ここまで読んでプリンセスもマーガレットも涙を流していた。感情の激しいマーガレットは

「プリンセスお姉さま、すぐにパピヨンちゃんを助けに行きましょう」


「でも今助けに行ったりしたら肝心の証拠を見つけることができなくなってしまうわ。ここはパピヨンちゃんの言う通り彼女からの情報を待つべきだわ」


「それは分かるけど、このままじゃパピヨンちゃんが、パピヨンちゃんが、パピヨンちゃんが、ああ、殺されてしまうわ。お姉さまは、パピヨンちゃんはどうせコパンだから構わないと思ってるんでしょ?」


「そ、そんなことないわ」


「じゃ、もしこれがパピヨンちゃんじゃなくて私だったらどうするの?やはり見捨てる?」


「何をバカなことを言ってるの。見捨てるわけないでしょ。でも今回は多くの女子生徒たちが嫌な思いをして、傷ついているの。


この事件を解決できるのは私たちしかいないの。一方でパピヨンちゃんは私たちの大切な仲間であることには変わりないの。


だから私としては何とかパピヨンちゃんからの情報を待つと同時に彼女を助け出したいとも思っているのよ」


「そう、結局パピヨンちゃんを見捨てるのね。お姉さんて冷たいのね」

と言ってマーガレットは不機嫌になって部屋から出て行ってしまった。


 マーガレットはドクターフォリーの家にやってきた。感情がたかぶったまま出てきてしまったので、辺りが薄暗くなっていることに気づいた時は既に夜の7時になっていた。


それでも彼女は何とかパピヨンちゃんを助けたい一心で、テレパシーでパピヨンちゃんの居場所を探った。


「パピヨンちゃん、マーガレットよ。今ドクターフォリーの家に着いたところよ。すぐ助けてあげるから。今どこにいるのか教えてちょうだい」


「お嬢様、来てはいけません。今2階にある息子のドロールの部屋にいますが、ドロールはいません。彼は何をするか分からない危険な人物かもしれません。ですから早くお帰りください」


「あなたは2階にいるのね。すぐ助けてあげるから待っててね」


マーガレットは2階へいく前に1階の様子を見える範囲で覗いてみると、ドクターフォリーとドロールが向かい合って話している。どうも口喧嘩をしているようだ。


「今なら2階には誰もいないからパピヨンちゃんを助けられるわ」

マーガレットは浮遊魔法を使って2階のベランダへ上がった。ところがあいにく窓は閉まっている。


そこで両手を丸く組み合わせるとそこからオレンジ色の光が発光し、その途端窓の一部が小さく丸く切り取られたように穴が開いた。


彼女は素早く左手をそこに入れて鍵を動かして開くようにした。そっと中に入ると部屋の片隅に虫かごがあり、そこにはパピヨンちゃんがいたのだ。


「パピヨンちゃん、もう大丈夫よ。さあ」

するとパピヨンちゃんは虫籠から飛び出したが、どういうわけかマーガレットが入ってきた窓から外に出てしまったのだ。


「お嬢様、さあ、早く外に出てください。彼が戻ってくるかもしれません」

「いえ、証拠のマントを見つけないと」

と言うが否や押し入れの中を探し始めた。


すると布団が入っている奥の方に透明マントと思われるものが見えた。それを軽く羽織って部屋にあった鏡を見ると、羽織っている部分だけが透明になっている。


体全体に覆いかぶさるように羽織ると完全に透明になった。するとかじりかけのリンゴがいきなり飛んできてマーガレットの背中に当たった。


「痛い!」

思わずマントを落としてしまった。すると素早く近づいてマントを拾った者がいた。


そこにはドロールがいて、マントを手にして不敵な笑みを浮かべていた。

「人の部屋に勝手に入ってマントを盗もうというのか、この泥棒猫め!」


「そのマントがここにあることをあなたのお父さんに教えたらどうなるかしら」

「そうはさせないさ」


言うが早いか持っているマントをかぶろうとしたが、その前にマーガレットの魔法光線が彼に向かって放たれた。

「Petrificus Totalus 石になれ!」

魔法光線を浴びてしまったドロールはそのまま動けなくなってしまった。


「1時間くらいすればまた元通り動けるようになるから心配しなくていいわよ。では私はあなたのお父さまにこのことを伝えてくるわ。動けない状態のあなたがマントを握っていることが何よりの証拠になるわ」


マーガレットはこれまで何度も姉のプリンセスに助けられてきたことを無意識のうちに負い目に感じていた。だから今回は自分一人で解決できそうなことが嬉しかった。

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