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9.コーヒーブレイク

数ある作品の中から、私の作品を見つけてくださり、ありがとうございます。

読んでいただける方に楽しんでもらえるよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。

 建築には歴史がある。

 古代ギリシャやローマのドーリア式やイオニア式、その後のロマネスクやゴシック、ルネサンスなどは聞いたことのある人も多いだろう。

 我が国日本はというと、仏教建築に始まり、数寄屋造りや城郭建築を経て、現代は西洋の影響を受けつつも、日本独自のモダニズムが誕生し、日本の家屋は世界を見渡しても、独特な風情を醸し出している。

 ここに、一軒の古屋敷がある。

 いかにも中世のヨーロッパ調かとおもいきや、そこにはところどころに日本独自のモダン調が見え隠れしている。

 この屋敷を建造したのはいったい何処の誰なのかは不明だが、ここに一人の匠が立ち上がった。

 人々は彼を“素材の魔術師”と呼ぶという。(ここで例のあの音楽を脳内再生お願いします。)


 はい、どこぞのリノベーション番組が如きナレーション、いかがでしたでしょうか。

 私のテンションが、自然とこの空気感を醸し出してしまったので、ついついやってしまいました。

 そうなんです、出来たんです!我が家が!!!


 ガルバリウム鋼板もありません、調湿塗料もありません、石膏ボードもスタイロホームも塩ビ管もシリコンコーキングもないんです。

 電動丸ノコも、インパクトドライバーも、ビスケットカッターも、角のみ盤も、マルチツールも、ブロワーすらないんです。

 でも大丈夫、安心してください! “クリエイト”がありますから!!!


 まず、この世界電気を蓄電するという概念がないんですが、その代替物はあるんですよ。

 そう、皆さんおなじみの“魔石”です。

 電気が貯められなくても、魔力は貯められます。

 そして、私は確信したんですよ、これはもう絶対に間違いないと言っても過言ではありません。

 この魔石に魔力を貯めて、色々な効果を発動させる装置が、この世界ではお店で買えるのですが、その名前がもう間違いないんです。

 “バッテリー”って言うんですよ。

 これもう間違いないでしょ。

 私以外にも、います。若しくはいました。日本人が!


 そして、“バッテリーチャージャー”って機械の名前くらいは聞いたことある人も多いんじゃないかと思いますが、この世界では、“バッテリーチャージャー”は職業の名前なんですよ!


 バッテリーに魔力を貯める人を“バッテリーチャージャー”と呼んで、お金を払って魔力を貯めてもらうんですよ。

 魔法は得意ではないけど、魔力はありますって人の良い小遣い稼ぎになっているんですよ。


 ということで、俺の異世界冒険譚はここで終了です。

 今日から俺は“バッテリーチャージャー”として生きていきます。


「痛っ!」


 俺、今までの話、一切声に出してないんだけど、なぜかシャクヤクさんからスリッパが飛んできたんですけど……。


 ということで、家のリノベも完成したので、そろそろ冒険者としての依頼をこなしていこうかとシャクヤクさんと話していたところだ。

 シャクヤクさんの俺への借金も、結構な額になってきたので、大物を狩って、懐を温めてあげたいところだが、そうそうこの間のスフィラのような魔物が現れるわけでもなく、駆け出しの冒険者よろしく、ゴブリンだのスケルトンだの、そんな依頼しかないので、当然その程度の依頼では、得られる報酬も雀の涙程の金額で、シャクヤクさんの一日の食費にすら届かない。


 そこで天才的な頭脳の持ち主であるこの俺が、素晴らしいアイディアを思いつきました。

 この世界は広いんですが、狭いんです。

 転移魔法陣というものがありまして、それを使うと世界中どこにでも行けてしまうんですよ。

 そして、もう一つ、最近仕入れたとっておきの情報によりますと、ダンジョンのある地域にはヤバい魔物の出現率が高いという話なのです。


 ということで、ダンジョンのある地域を探してみました……。


 ここじゃねーか!


 はい、ここムーシルトは、遠い昔、魔王が支配していた地らしく、その魔王を倒してダンジョンに封じ込めたというすごい人がいたんですが、その人がなんと、そう、皆さんご存じ、キラ教という宗教で信仰されている神様だったんですね。


 まぁ、神様だし、魔王くらい封印出来ても不思議ではないのですが、その神様、他にも森に生息する魔物を一瞬で殲滅し、封印したとか、世界各地でもう、すごい伝承が残りまくりなのですが、まぁ、尾ひれがついているであろうことは想像に難くないとでもいいますか、そういう話って、皆さん盛りたがりますからね。


 で、ここ以外のダンジョンがある地域はというと、そのカーミオ大森林のあるハーコッテに、中央大陸はヤバいし、街が無いので滞在も難しいから却下としても、あとは俺が最初にいたミドガルと、ハプルという地域にもあるらしいのですが、本命はハーコッテ!

 ここは、しょっちゅうギルドからの討伐依頼が出るほど、強力な魔物が出るらしいので、Sランク冒険者が一番多い街ともいわれているらしいです。


 正直な話、俺としては、一度行ってしまえば、あとは魔法の“転移”を使って、移動が出来るので、滞在する必要性もないのですが、でも、最初は転移魔法陣で行かないと、いや、距離的に、行けるか?でも、魔導車で行くにしても、買うには結構な出費となるし、魔導バイクだと一人しか乗れないし、結局、転移魔法陣が一番楽で早くて金もかからずと、いいことずくめなので、やっぱり転移魔法陣で行くことにしよう。


 そういえば、シャクヤクさんなんですが、最近判明した竜の生態についてお話しておこうと思います。


 竜がそうなのか、シャクヤクさんがそうなのかはわかりませんが、一日のうちの三分の二は寝ております。

 もっと言うと、食う時以外はほぼ寝ております。

 今も寝ております。

 食べるときに起きて、それ以外は寝るというルーティンを確実にこなしています。

 所謂食っちゃ寝状態なのですが、それであのスタイルを保つことが出来るって、ある意味才能なんじゃないかと思うのと同時に、世の女性諸君に、シャクヤクさんの何かしらの成分を生成した薬でも飲ませて、スタイルアップが出来たとしたら、これはもう、働かないで一生食べていけるのではとも思うのですが、シャクヤクさんに話したら、正面から真顔でグーパンくらって、鼻血が噴き出しました……。


 というわけで、話が大分それたように感じる方も多いかと思いますが、実はそれてません。


 シャクヤクさんがずっと寝てるので、俺が一人で、ハーコッテのギルドに行って、討伐依頼が出ていないかを確認しにいく羽目になったので、話つながってますよね?


 そんなこんなで、やってまいりましたハーコッテ!


 これから早速ギルドに向かいたいと思います。


 流石は世界でも有数の有力冒険者が多く集まる街のギルドとでもいいましょうか、第一印象はデカい!でした。

 ギルドというと酒場が併設されていて賑やかってイメージを持っている人も多いかもしれないけど、ここは違います。

 区役所とか市役所とか、そういう役場的なイメージとでも言えば良いのでしょうか、とにかく、整然としていて、荒くれ者が集まる場所という雰囲気が感じられません。

 職員も淡々と仕事をこなしているという感じだし、依頼書の掲示も板にナイフで突き刺してあるとかではなく、ファイルです……。

 きっと、マンガやアニメでよく見るギルドをイメージしてやってきた異世界からの転生者がここを見たら、おそらくこれじゃないとこぼしながら、愕然と膝をつくでしょう……。

 今まさに俺がそうなりかけました。

 これならまだムーシルトの方が、イメージに近いんじゃないかと思います。(アリサさんもいるし。)


 ということで、俺はラウンジのような場所で、売店で買ったコーヒーを飲みながら、ソファに座って、借りてきたファイルをながめております。


 ムーシルトとほぼ同じような内容だけど、ちらほらと若干強めな魔物の討伐依頼も出ているので、まぁ、この辺で妥協して、お金を稼ぐなら数をこなすというのがやはり現実的なんだろうと思う。


 射幸心という言葉を知っているだろうか。

 パチンコや競馬などで、労せずに大金を手に入れ、遊んで暮らそうとすることを、そう呼ぶらしいが、異世界での冒険者がまさにそれで、射幸心で身の丈に合わない魔物を討伐に出かけて、帰らぬ人になるという話は、よくある話らしい。

 お金がすっからかんになるくらいならまだしも、まさに命を落とすのであれば、もはやそれは仕事と呼んでよいのだろうか。


 そういう訳なので、俺は適度な強さの魔物を、数多く狩ってお金を稼ぐという、いわば薄利多売的な考えを基本理念として、堅実にこの世界で生きていこうと思う。


 と、優雅にファイルを眺めながら考えていると、ギルドの正面入り口のドアが勢いよく開いたかと思うと、一人の中年よりの青年が入ってきて、いきなり大声で叫んだ。


「支部長いるか!? まずいことになった。」


 彼は全身血まみれで、息を切らせ、今にも倒れそうな足取りで、ギルドになだれ込んできたのだった。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

感謝の言葉しかありません。

よければ次のお話も読んでいただけるとありがたいです。

どうぞよろしくお願いいたします。

このお話が面白いと思っていただけたなら、評価やコメントなどいただけるとありがたいです。

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