6.金と女と飯と烙印
数ある作品の中から、私の作品を見つけてくださり、ありがとうございます。
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「それじゃあ、これがスフィラ討伐の報奨金だ。300万ミルあるはずだから、ちゃんと数えろよ。」
「ありがとうございます。300万と聞くと、凄いきもしますが、まぁ、命がけだったことを考えれば、妥当と言えなくもない金額ですかね。」
「普通はそれをパーティーで山分けになるんだが、お前さんは一人で総取りだからな。ところで、お前さんそれ持ち歩いて大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫だと思います。俺次元収納が使えるので。」
「そうか、お前さん次元収納持ちか。ならば良い依頼があるんだが、しかしまぁ、Sランクがやる依頼でもないか……。」
「どんな依頼ですか?」
「あぁ、まぁただの荷物運び何だが、物が物だけになぁ……。」
「なんか、危ないものとか、違法なものとか、そんな感じですか?」
「バカヤロウ!ギルドがそんな依頼承認するわけないだろ!これでも世界機関だぞ。」
「はぁ、で、何を運ぶんですか?」
「家だよ。」
「は?」
「だから家だよ家、ハウス!」
「なんでまた家を運搬することになるんですか?」
「いやな、依頼主によるとだな、今現在家が建ってる場所を、事業の為に更地にしないといけないが、その家は先祖が残してくれたものだから、解体するには忍びないと。ただ、自分が住んでる家は別にあるから、必要かと言われればそうでもない。しかし、やっぱり解体は……。ということで、どこか適当な場所に移転して、保存しておきたいから、次元収納持ちがいたら是非と言われてたんだが、家一軒を次元収納で移動できる魔力の持ち主なんて、そうザラにいるものでもないから、どうしたもんかと思っていたんだ。ちなみに、その家は使ってくれるならただで譲ってもいいとも言っていたな。」
「やります!ていうか、その家下さい!」
「お、そうか?やってくれるか?ただ、依頼料は内容の割には安目だがかまわないか?」
「家をいただけるなら、依頼料が多少安くてもかまいません!ていうか、土地ってどこで売買してるんですか?土地さえ手に入れば、住むところが確保できるじゃないですか!」
「塀の内側ならまぁ、ここで斡旋できなくもないが、外なら開いてりゃ好きな所に建てればいい。街の外なんて、結界でも張れなけりゃ、魔物に殺されるだけだし、だれも好き好んで外でくらそうとは思わんからな。」
「え?街の外って、ただで土地を貰えるってことですか?」
「まぁ、そうなるな。」
「やったぁ!いきなりマイホームゲット!アリサさん、結婚し「結構です。」ですよね……。」
「コントは終わったか?じゃあほら、依頼書。話は俺の方でしておくから、明日にでも、そこに書いてある場所に行ってみろ。」
「わかりました。ありがとうございます!」
「それと、Sランクの冒険者証は、来週まで出来上がらないから、この街以外ではAランクの依頼しか受けられねぇぞぉ~。」
「はい、わかりました~!」
異世界に来て、最初はどうなる事かと思ったが、いきなりマイホームゲットイベントが発生するとは。やはり、ステータスの運の数値は伊達じゃないようだ。
まぁ、いきなりの求婚は言い切る前に断られたが、この肉体は16歳、人生まだまだこれからだし、出会いはきっと突然に……。
ということで、俺は家を手に入れることが出来る喜びで浮かれたまま、近所の食堂に昼飯でもと思って歩いていると、角を曲がってすぐに柔らかい何かにぶつかって弾き飛ばされた。
浮かれて油断していたとはいえ、盛大に後ろに転んで2回転半したのは、相当恥ずかしかったが、何にぶつかったのか確認しようと顔を上げると、そこには、真っ赤なカールのかかったロングヘアーのやたらと背の高い女の子が、俺を見下すようにして立っていた。
「あ、あの、すいませんでした。」
俺は盛大に吹き飛ばされたことは置いておいて、一応ぶつかったことを謝り、その場から立ち去ろうとすると、その赤髪の女の子が、後ろから俺の襟首をつかみ、子猫のように宙づりにされてしまった。
俺はいまいち状況が理解できず、宙づりにされたまま後ろを振り返って、女の子を見上げる。
「あの、何か?」
「何かとは何か!其方はわらわの胸を堪能しておいて、すいませんでしたの一言で済まわそうという魂胆かえ?」
「かえ?いやいやいや、人聞きの悪い事を言わないでくださいよ。確かにぶつかりはしましたが、胸をどうのこうのなんてしてないじゃないですか。」
「よし、ならば、其方、そこに立つが良い。ふむそうじゃ。そして、わらわが正面に立つと、どうじゃ、其方の目の前には何が見える。」
「えぇと、とても綺麗な御胸が見えますね……。」
「そうであろう?であれば、あとは言わずともわかるであろう?」
「えぇ、まぁ……。」
「其方は、生娘の大きくて綺麗な胸を弄んだら、そのまますいませんと立ち去るよう教育されて育ったのかえ?」
俺は今、からまれているのだろうか……。
たしかに不注意でぶつかったことはぶつかったが、その当たり所が悪かったせいで、強請られるのだろうか……。
ていうか、そもそもこの女の子、デカくないか? いや、身長の話ね。
俺の今の身長は正確にはわからないけど、それでも、小さい方ではないはずだ。
その俺が襟首をつかまれて持ち上げられるって、この女の子デカ過ぎだろ! 身長がね。
「あのぉ……。俺はいったいどうしたら許してもらえるのでしょうか?」
「そんなものは決まっておろう。ほれ、聞いてみるが良い。」
赤髪の女の子は、そう言うと再び俺の襟首をつかんで、自分の胸元に俺の横顔を押し当てた。
頭の辺りには、再び柔らかくて心地の良い感触が伝わってきたが、ちょうどお腹の辺りにきた俺の耳には、盛大に「ぐぅ~」という音が聞こえた。
「あぁ、はいはい、はぁはぁ、なるほどなるほど。つまり、俺はこれからご飯を食べにそこの食堂に向かっていたのですが、そこに同席させろと。そして奢れと。そういうことですか?」
「其方よくわかっておるではないか!よし、行くぞ!!」
というわけで、俺は謎の美女(大型)にタカられる運びとなった。
「あの、先ほどギルドで依頼料を貰ったばかりなので、どんどん好きなものを食べてくださいと言いたいところなのですが、この流れって、貴女が食べた代金を俺が支払ったら依頼料すっからかんになる気がしてならないので、そこはどうか、節度を持って注文していただきたいと思うのですが、よろしいですか?」
「其方、わらわをなんだと思っておるのじゃ。そんな節操もないことはせぬから心配するな。それよりも、其方もほれ、食べたいものを注文するのじゃ。」
「はぁ、どうもすいません。それじゃあ遠慮なく……。」
なんか、俺が奢ってもらうみたいな空気になっているが、けしてそうではない。
これ絶対油断すると、いきなり食事代の支払いで路頭に迷うパターンだ……。
と、かなりビビッてメニューを見たが、意外にも代金は一桁台の物が多く、高くても30ミルとか、そのくらいの金額だった。
しょっぱなからの破産イベントではなかったらしい。
ていうか、もしかして、1ミルって、1米ドルくらいの価値なのかもしれない。
だとすると、さっきもらった依頼料って、エグい金額だったのかも……。
「で、依頼料をもらったと言っておったが、どんな依頼を達成したのじゃ?」
「はぁ、西のシャデリーという街で、スフィラという魔物を倒してこいと言われまして。命からがら何とか倒すことが出来ました。その魔物討伐達成の報酬です。」
「ほう、其方一人でスフィラを倒したのか。それは大したものじゃな。あ奴のツメはなかなかにやっかいじゃからの。」
「え、スフィラと戦ったことあるんですか?」
「まぁ、戦ったという程のものでもないが、ほんの少しじゃれあったことはあるな。」
「そういわれると、なんだかお姉さんが強そうに見えてきました。」
「はっはっは、其方なかなか目の付け所が良いようじゃの。飯も馳走になることじゃし、なんならわらわの弟子にしてやっても良いぞ?」
「あ、いえ、間に合ってます……。」
「なんじゃ、つれないの。 そうじゃ、そういえば、まだ名を名乗ってなかったのう。わらわはシャクヤクと申す。其方の名はなんじゃ。」
「俺はフィンって言います。」
「そうか、フィンか。よろしくな、フィン!」
「よろしくお願いします、シャクヤクさん。」
「なんじゃ、よそよそしいの。シャクヤクで良いわ。既に我らはチチくりあった仲じゃろうに。」
「いやいやいやいや、ものすごく人聞きが悪いので、その話は控えてほしいです……。」
「はっはっは。フィンは初心なんじゃの。あ~っはっはっは。」
といった感じで、俺はシャクヤクという赤髪の大女に盛大に絡まれながら、昼食をとった。
昼食代も、シャクヤクはなかなかの食べっぷりではあったが、それでも100ミルでおつりがくる程度ですんだので、助かった。
俺は、昼食後はシャクヤクと別れて、ギルドで借りている宿に戻るはずだったが、何故かシャクヤクも一緒についてきてしまい、ギルドの中を通って部屋に戻る際に、カウンターにいたアリサさんに「節操がありませんね。」と言われてしまった……。
違うんですよコレは、強請にあってるだけなんです……。
こうして俺は、シャクヤクのせいで、告白を終える前に振られたギルドの受付嬢に、節操なしの烙印を押されるはめになるのだった……。
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