55.父親って、最初から父親なんじゃないんです、いつか父になるんです……。
数ある作品の中から、私の作品を見つけてくださり、ありがとうございます。
読んでいただける方に楽しんでもらえるよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。
「ミシャ、頑張って!上手、上手、もう少しだよ、はい上手、凄い、凄ぉ~い、ミシャ上手だねぇ~。」
この小さな天使は、その小さな両手でもって、俺の手を必死に握り、立ち上がろうとしている。
顔を真っ赤にして、彼女は今、自分のこれまでの限界を越えようとしている。
膝が震えている。
いつもなら、ここで尻もちをついてしまう。
でも──今日の彼女は違った。
震える足、その右足を右に半歩ずらしてバランスを取る。
すると、足の震えが止まり、両足をしっかりと踏ん張って、自分の二本足で立っている。
その姿は、まるで「もう、パパの手なんていらないよ」と、言っているようだった。
「ミシャ凄いね、ちゃんと一人立っち出来そうだね。よ~し、じゃあ、パパ手を離すよ。いいかい、いくよ~。おぉ~~~~~!!! 上手、上手!ママ、ママ、ミシャが一人で立っち出来たよ!ほら、見てみて!!!」
「あら~。ミシャ上手だね~。偉い、偉ぁ~い。」
俺は今、幸せというものをかみしめている。
この世界に転生して、色々な力を得て、色々な戦いを越えてきた。
でも、全てはこの瞬間のために、あったんじゃないかって思えるくらいに、今が満ちている。
金?ある。
家?ある。
仲間?いる。
愛する人?いる。
そして今、俺の目の前で、俺の娘が、自分の足で立ち上がった。
泣いていいか?
いや、ダメだ。
レイアは、まぁ良いとして、リースが見ている。
シャクヤクさんに至っては、絶対あとで茶化してくる。
だから、俺は泣かない、泣かないけど、心の中では、もう号泣してる。
「ミシャ、すごいな。パパ、ちょっと感動してるぞ。」
「ふふ、ちょっと、フィン、顔がゆるみすぎ。」
「いや、緩むだろう、むしろこの天使を目の前に、表情が緩まないヤツがいたなら、それは最早人間とは呼べない!」
「あはははは、そうだよね、可愛いもんね。」
「うん、しかし、惜しむらくは、この我が家のエンジェルの可愛さを世界中の人に伝える術がないということ……。もういっそのこと、テレビ開発してしまおうか……。」
「……? テレビって何???」
「うん、失言だった、忘れてくれ。」
ミシャは、まだ不安定ながらも、しっかりと自分の足で立っている。
その姿は、まるで小さな羅漢像の様だった、いや、違う、やっぱりどこをどう切り取っても天使以外の何物でもないと思えるくらいに、うちのミシャちゃんは、可愛さのポテンシャルが度を越しすぎていると思う。
この子は、俺たちの“希望”だ。
俺は、そっと手を差し伸べる。
ミシャは、俺の指をぎゅっと握る。
その小さな手の温もりが、俺の胸の奥まで届いてくる。
「ミシャ、パパのこと、信じてくれてるんだな。」
レイアが隣で微笑んでいる。
その笑顔は、あの剣戟の夜を越えて、母としての誇りに満ちていた。
「フィン、あなたも、ちゃんと“立った”のよ。」
「え?ここにきて、まさかの下ネタ?」
「アホ!父としてってことよ。」
俺は、優しく微笑んで、ミシャの手を握り返す。
この世界に転生して、力を得て、仲間を得て、愛を得て、そして今、命を授かった。
それは、どんな魔法よりも、どんな富よりも、尊くて、強くて、素晴らしいものだった。
「ミシャ、これからも、いっぱい立って、いっぱい転んで、いっぱい笑ってくれよな。」
ミシャは、何かを言いたげに俺を見上げる。
「ぱぁ……ぱ!」
「……!」
「パパ、って言った!?」
「言ったわね、フィン!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ミシャは、俺の腕の中で満足げに笑っている。
さっきまで立っていたのが嘘みたいに、今はもう甘えん坊モード全開だ。
なんて可愛いんだ!
この子は、まぎれもなく、俺たちの娘だ。
可愛くて、優しくて、そして、俺たちの世界に彩りを与えてくれる存在だ。
「レイア、ミシャが“パパ”って言ったよ。」
「ええ、聞いたわ。フィン、あなた、ほら、ちょっと、これで涙をふきなさい。」
「……泣いてない。汗だよ、汗。」
「うふふ、ほんとにもう……。」
リースがキッチンから顔を出す。
「お祝いに、ケーキでも焼こうか?ミシャの“初立ち記念”!」
「いいね!俺も手伝うよ!」
「フィンはミシャと遊んでて。レイアと一緒に、ママチームで作るから。」
「おぉ……ママチーム心強い……。」
ミシャが俺の胸に顔をうずめて、くすくす笑っている。
その笑い声が、部屋の空気を柔らかくする。
この世界に転生して、戦って、守って、築いてきたもの──
全部、この笑い声のためだったんだな。
「ミシャ、今日はいっぱい頑張ったね。パパ、すっごく嬉しかったよ。」
ミシャは、俺の顔を見上げて、にこっと笑った。
その笑顔は、どんな魔法よりも、どんな勝利よりも、
俺の心を満たしてくれる。
「レイア、ありがとうな。ミシャを産んでくれて、育ててくれて、俺に“父親”って大役を与えてくれて。」
「……こちらこそ。フィンがいてくれて、本当に良かった。」
「よ~し!今日の晩御飯は、俺が腕を振るうぞ!ミシャのために、最高の離乳食を作る!」
「パパ、かっこいい~!」
「パパ、がんばれ~!」
「パパ、がんばる~!」
ミシャが、ケタケタと笑う。
その声が、俺の胸の奥に響く。
この世界で、俺は“父”になった。
それは、どんな冒険よりも、どんな戦いよりも、誇らしいことだった。
ていうか、剣と魔法のファンタジーが、本の中の物語だったころは、凄い魔法を使う魔法使いや、俺TUEEEEの無双主人公達が、ものすごくかっこよく見えたけど、今この瞬間、そんなものはどうでも良い、この可愛い娘の父であれることが、最高に素晴らしいことだと理解できる。
この娘の成長を見守ることの出来る幸せに感謝だ。
そして、全ての子を愛する父親と、母親に敬意を表すると同時に、お前らの気持ち“わかる”と伝えたいw
「もう少し大きくなったら、特別にわらわの背に乗せて、大空を飛び回ってやろうぞ。」
シャクヤクさんが、恐ろしいけど、嬉しい申し出をしてくれたけど、絶対に俺も一緒に行かないと、不安しかない気がする……。
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