表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に転生したらものの5分で最強セージにエンカウントした俺のその後の話  作者: すずき 虎々


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/61

51.フューリー・コードはレイアの鮮血

数ある作品の中から、私の作品を見つけてくださり、ありがとうございます。

読んでいただける方に楽しんでもらえるよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。

 煉獄カリン塔21階


 呼吸することを忘れる程の緊張感。


 何かがいることは理解できても、全く気配を感じることが出来ない。


 それなのに、全員が、確実に“何か”が近づいていることを察していた。


「この、感じ……。」


 リースは言いたいことを言いきれぬ程に、喉が喉に張り付いていた。

 誰も言葉を発しない、いや、発することが出来ない……。


 プルは耳をペタンと伏せ、メリルは杖を握る手に汗が滲んでいる。

 シャクヤクは、大きな盾と、先程受け取ったばかりの大剣を構えている。

 全員が全員、自分達に、現実の死が迫っていることを感じ取っていた。



 煉獄カリン塔20階ラウンジ


「これからは、今までとは雰囲気が全然違うから、まずはそこをしっかりと覚えておいてくれ。多分今までの各フロアだって、簡単にクリア出来ていたとは思わない。だが、ここから上については、今迄のフロアが遊びだったと思える程に、難易度が跳ね上がる。まさしく段違いにな。」


「でもまぁ、フィン君がいるし、大丈夫でしょ。みんな、そんなに緊張しないで。」


 場の空気感に堪え切れず、リースが楽観的な言葉で、皆を緊張から解き放とうとするが、それを俺が即座に台無しにする。


「俺がここから上の階層をクリアした時は、魔物からしても、敵は俺だけだった。しかし、パーティーで挑むとなると、魔物にしてみれば、取り崩しやすいポイントが出来るということだ。魔物がどの程度の思考があるかは不明だが、敵の弱点を突くことで、動揺を誘い、ミスを誘い、連携を崩しに来る可能性だって捨てきれない。自分がもし敵の立場だったら、どうやってもかなわないと思う敵よりも、なんとかなるけど、周りをワチャワチャしてる弱いのを先に始末したくならないか?つまりはそういうことだ。」


 ラウンジが再び沈黙に包まれる。


「だが、作戦も勝算もないわけじゃない。前にも言ったが、パーティーは各自が与えられた役割を確実にこなせるなら、間違いなくソロよりも強いし、得られるるリターンも大きいんだ。これから向かう21階のボス、バルグルは、空中での糸を使った立体起動が特徴的で、とにかく速いが、攻撃手段は近接戦闘が中心だ、そういう敵には自分達のエリアに誘い込むのが鉄則だ。魔法も矢も、当てようと追ったところで当たりはしないが、自分たちの攻撃に当たりに来てもらうように誘い込むことが重要なんだ。プルの召喚獣で炎や氷を張り巡らせ、シャクヤクさんが壁となって誘い込みたい場所へ誘導し、再度プルの召喚獣で動きを止め、レイアがとどめを刺す。メリルはダメージが原因でこの連携が崩れないように、常に傷の回復に努める。この役割さえ全う出来れば、きっと勝算はある。」


 俺は皆を見回しながら言った。

 皆の表情は柔らかくはならない、しかし、先程までとは違って、只々死地へ赴く恐怖というよりは、戦う覚悟を持った顔になったようにも見えた。



 煉獄カリン塔21階ボス部屋


 俺は、皆から少し引いた位置でパーティーの全体を見る。


「来るぞ。」


 その一言と同時に、空間が裂けた。

 いや、裂けたように見えただけだった。

 特別な事は、何も起きていない。

 視界の端で、魔物が移動した、ただ、それだけだった。

 たったそれだけの事ではあるが、その速度が尋常ではない。


「今の、見えました?」


 メリルが言う。


「いや、見えたけど……見えなかった。」


 リースが答える。


 その“何か”は、壁を蹴り、天井を走り、柱を使って軌道を変えながら、空間を縦横無尽に走り回っていた。

 だが、誰もその“軌道”を追うことが出来ずにいた。

 その原因は、空中で方向が変わるという、物理法則を無視した動きだった。


「……空中で、曲がった?」


 レイアが呟く。

 その声には、焦りと、理解不能への恐怖が混ざっていた。


「さっき言ったことを思い出せ!」


 俺が大声を出すと、皆がそれぞれハッとした顔になると同時に、落ち着きを取り戻したかのように見えた。


 バルグル……。


 黒く艶の無い身体に、千手観音のように無数に生えている手足、関節の数も多く、それぞれがフレキシブルに可動しているように見える。

 顔のようなものは見当たらないが、各腕の先端に爪状のものがあり、その根元には、糸を吐き出す器官などがあるようだった。


「構えろ!」


 俺の声と同時に、全員が武器を構える。

 だが、バルグルは止まらない。

 壁を蹴り、天井を滑り、柱を使って軌道を変えながら、レイアに向かって一直線に突っ込んだ。


「レイア、下がれ──!」


 だが、声が届く前に、バルグルの身体が空中で“曲がった”。

 その瞬間、レイアの目が見開かれた。

 避けたはずの軌道が、変わった。

 そして──

 一閃。

 赤が舞った。

 レイアの身体が、弾き飛ばされ、血飛沫が舞う。


「レイアァァァァァァァァァッ!!」


 俺の叫びが、室内に響き渡る……。


 バルグルは、すでに次の軌道に乗っていた。

 だが、俺はそれを見ていなかった。

 ただ、宙を舞うレイアの姿だけを目で追っていた。


「おぉぉぉぉまぁぁぁぁぁえぇぇぇぇぇぇはぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」


 俺が握りしめた拳からは、血が滲んでいた。

 次の獲物を捕らえようと、細かく軌道を変えながら高速で移動するバルグルを、俺は更に上回る速度で追いかけ、後ろからバルグルの体を鷲掴みにして、地面に叩きつけると、固く握りしめた拳で何度も何度も殴りつけていた。

 ただ怒りに任せて振り下ろされる拳に、理性はなかった。

 俺は止まらなかった、バルグルが黒い霧となって大気中に霧散してなお、俺は叫び声をあげながら、地面を殴り続けていた。


 明らかに取り乱す俺を、誰も止められずにいた。


 幸いレイアは、一命をとりとめた。

 メリルが即座に回復魔法で傷をふさいでいてくれたことで、出血を抑えることが出来ていたので、冷静さを取り戻した俺のクリエイトが間に合ったのだ。


 俺達は一度20階のラウンジに戻ることにした……。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

感謝の言葉しかありません。

よければ次のお話も読んでいただけるとありがたいです。

どうぞよろしくお願いいたします。

このお話が面白いと思っていただけたなら、評価やコメントなどいただけるとありがたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ