46.新技の名前がクロノセヴァランスだからって廚二病とか言うなよ!
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空間が、裂けた。
俺は、煉獄カリン塔の48階にて、疑似神獣29号と対峙していた。
この魔物は、かつて俺が戦った神獣の戦闘データを取り込み、迷宮核が独自に再構築した進化体。
空間を削り取ってみたり、魔力を逆流させてみたり、次元を歪ませるなどなど、その挙動は、もはや模倣というには、あまりにも斬新過ぎて、気を抜いていると、余裕で死ねる……。
この48階のボスとは、今で4回目の戦闘となるが、俺は既に三度死にかけている。
魔力の流れが逆転し、無詠唱で魔法を放てる俺が、魔法射出の為に出す魔法紋を侵食されて書き換えられ、次元の歪みによって回避行動が遅れ、時間のズレで攻撃のタイミングを外される。
魔物が突進して来たので、俺は、魔法で防御結界を展開するが、俺の目の前で空間ごと削り取られ、ハニカム状に展開していた結界が、跡形もなく消えてしまった……。
「……反則だろ、それ……。」
俺は、身体を浮かせて魔物に最大出力の風魔法を放ち、距離を取ると同時に、以前の神獣との戦闘を思い出していた。
あの時、マスターシェラが使った、あのブラックホールのような魔法。
空間を圧縮することで、周囲にあるすべての物を飲み込むような挙動を見せた魔法……。
俺は、その魔法を見ていたが、全く持って理解は出来ていない。
しかし、視覚的に入ってきたあの状況が、どこかで見た何かにつながるような気配を感じているが、それが何なのか、イマイチ掴み切れない……。
魔物が、空間を歪ませながら、再度突進しようとしてくる。
その光景を見ていてふと閃いた。
「あ!次元収納!!!」
次元収納は生物を収納することはできない、しかし、生物でなければ、つまりは素材となった元生物なんかはいくらでも収納できる。
そして、魔物とは生物ではないが、だからと言って動かずじっとしているものでもない。
次元収納は、ストレージを自分で設定できる、となると、次元収納に魔物を突っ込んでしまえば、最悪永遠にストレージ内を彷徨うとか、そんな感じで落ち着いてくれるかもしれない。
俺は次元収納を展開し、魔物を取り込もうと接近した。
すると、虚空に漂う次元収納の入り口は、先日シェラが見せた魔法のように、ブラックホール状に渦巻いているようにも見える。
そして、俺が魔物に接近すると、その魔物は、次元収納の渦に足を取られると、足を起点にぐるぐると螺旋を描いて次元収納の中へと吸い込まれていった。
「これかよ……。」
今までさんざん魔物と戦ってきて、色々と苦戦することもあったが、その都度対処方法を考えたり、それこそ死にそうな思いをすることだってあった。
しかし、敵が強くなればなる程、その対処法にだって限界が訪れる、と思っていたが、ここにきて、まさかの非戦闘魔法だと思っていた次元収納が、最高の必殺技になるとは……。
しかも、この次元収納に魔物を取り込んだ瞬間に、感じた感覚がどうにも気になる。
「ライブラさん、今さ、次元収納に魔物を取り込んで倒すという、画期的な技に気が付いたんだけど、これってライブラさんは知ってたの?」
[黙]
「黙ってオイ!なんだよそれ、つまりは知ってたってことじゃないかよ……。あと、あの次元収納に魔物を取り込んだ瞬間のあの感覚、あれは何?」
[回:マスターの感じた感覚は、次元収納内で、魔素が分解されたことで起こる、魔元素分解のことを指していると推察します。]
「それって何?どういう現象?」
[回:次元収納とは、現世よりも高次の領域を、魔法による定着によって固定することを指しますが、その際、概念的な存在については、現世と高次元世界とでは、解釈が異なるため、物質に定着しているものを除いて、ほとんどが、魔元素の状態まで分解されるという現象を指します。]
「うん、全くわからない事だということがわかったよ。」
[告:つまり、魔物は、次元収納内に入ると、木端微塵の更に先の状態まで分解されるということです。]
「あぁ、そういうことね。ていうかさ、ライブラさんもマスターもさ、性格悪くない?こんな簡単に魔物を何とか出来るなら、最初から言ってくれれば……。」
[告:それは難しかったと思います。
マスターが今のレベルの能力値になったことと
今回の次元収納への取り込み成功には大きな因果関係が存在します。]
「つまり、俺が強くなったから、ようやくこの技が成立したってことか……。」
俺は、次元収納の“渦”を見つめながら、魔力の流れを再確認した。
この渦は、言ってみれば、タービンのようなものなのかもしれない。
魔力の流れが次の魔力の流入を加速させ、出力を上げ続ける構造は、むしろ機械的なボトルネックのない状態であって、無制限に加速していく様は、夢の内燃機関とでも言えば良いのだろうか。
普通に魔力を出力するイメージよりも、圧倒的に高密度で、なおかつ無駄のない螺旋を描き、その加速度を用いて周囲の空間を引っ張るように歪みを発生させ、時間の流れにすら変化を生じさせている。
これは、シェラが見せた魔法に似ている。
彼女のは少し違う様にも感じるが、ただ、基本的な考え方は同じ方向を向いていると思う。
ただ、これは、俺独自の魔法だ。
「名前、クロノセヴァランスとかどうだろ?次元収納じゃ、なんかね……。」
[告:マスターのお心のままに。]
「あ、なんか、めんどくせぇとか思った?」
[回:そ、ん、な、こ、と、は、あ、り、ま、せ、ん……。]
「おい、棒読みになってんぞ!」
すると、他愛もないやり取りを遮る感覚、塔の空気が、わずかに震えた。
迷宮核が、何かを“記録”していると感じるような気配がある。
俺は、塔が自分を観察しているように感じた。
次元収納の渦は、まだ回っている。
魔物の残滓が、魔素となって空間に染み出している。
それは、塔の構造に影響を与えるかもしれない。
あるいは、次の階層に、何かを残すかもしれない。
俺は、魔力を収束させながら、呟いた。
「次は、収納じゃなく、圧縮してみるか……。吸引力を加速させられればやる意味もあるか。」
ブラックホールのような魔法──
俺にしかできない魔法にしてやる。
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