40.アルカエリが動く時は今?
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-聖典-パトラム福音書-
第三章
神は天界の門を開きたもうた
迷える者は神が灯す光へと集い
集いし者は神を称えた
神の御国へと至れりし船を与えたもうた
俺達は、神界と地上をつなぐ唯一の船“アルカエリ”を手に入れてしまった。
それは、福音書に記された“神の御国へと至れりし船”そのもの。
だが、問題はここからだった。
「ライブラ、この船って、どうやって動かすの?」
[回:起動には“神の言葉”が必要です。]
「神の言葉って、何?」
[回:神に至った者“キラ”が残した言葉です。]
「キラ……。」
その名を聞いて、皆が一瞬黙った。
キラとはこの世界の構造を変え、神界の門を開いたとされる伝説の存在。
そして、今では“神”として信仰の対象になっている。
「その言葉って、誰か知ってるの?」
[回:現在、その言葉を知っているのは、エンシェント・ノーブル・セージでありエヴァンジェリストの、シェラのみです。]
「……マジか。」
俺は、皆の顔を見渡した。
誰もが沈黙していた。
シェラ、俺の師匠であり、キラ神様のエヴァンジェリストでもある女性。
今は別行動中で、どこにいるのかも定かではない。
「ライブラ、シェラの現在位置なんてわからないよな?」
[回:現在、位置情報は取得できません。
魔力遮断領域にいる、あるいは自ら魔力隠蔽をしている可能性があります。]
「だよな……。」
「フィン君、シェラって、あなたの師匠の?何か心当たりはあるの?」
「まったく……。ていうか、師匠と言っても、一緒に過ごした時間なんて、ほんの少しだしな……。」
「でも、アルカエリを動かすには、その“神の言葉”が必要なんでしょ?
だったら、シェラを探すしかないじゃない。」
「……いや、待て。」
俺は、船の巨大な船体を見上げた。
その構造は、神殿のように荘厳で、どこか静かだった。
「今、俺たちがこの船を動かす理由って、あるか?」
「え?」
「神界に行く目的があるか?誰かに呼ばれたわけでもないし、この船が手に入ったのは偶然だ。それを、いきなり動かす必要性がないし、もはや動かして何かをなすのではなくて、動かすこと自体が目的のようになってないか?」
「……確かに。」
「それに、キラの言葉ってのは、神界に至るための鍵だろ?だったら、それを使うってことは、神界に踏み込むってことだ。そんな大事なこと、勢いでやるもんじゃないし、行ってどうする?」
「それはそうだけど、じゃあ、この船どうするの?」
「今は、保留でいいんじゃないか?アルカエリが何なのかわかったし、起動条件もわかった。でも、現状動かす理由がないのであれば、このままで良いだろ。」
「……それって、もったいなくない?」
「もったいないとは思わないな、必要な時に必要な人の手にあれば、それで良いんじゃないか?別にそれが、俺達でなくても問題ないだろう。」
「それは…まぁ…そうかもね。」
「シェラの居場所もわからないし、船を動かす理由もない。つまり、今じゃないってことだろう。」
「じゃあ、この船どうするの?」
「この船を保管する。必要が生まれた時に、動かせるようにしておく。それまでは、情報を整理して、状況を見守る。」
「……了解。」
俺は、アルカエリの周囲に、さらに隠蔽結界を張り、船体を外からは見えないようにし、風や重力の影響を受けないように、土台を更に強化し、魔法で保護する。
「ライブラ、この船の記録、保存できるか?」
[回:はい。アルカエリの構造、起動条件、関連する神話記録を保存しました。]
「よし。これで、いつでも確認できるな。」
「フィン、でもさ……」
「ん?」
「この船、ほんとに神界に行けるのかな?」
「わからない。でも、福音書に書かれてる以上、可能性はある。それに、ライブラが言うなら、信じるしかないだろ。」
「……そっか。」
「ただ、今はその時じゃないってだけだ。俺たちには、まだ地上でやることがある。神界に行くとすれば、たぶんその先だ。」
「了解。じゃあ、今日はこれで終わり?」
「そうだな。アルカエリのことは、しばらく忘れて良いんじゃないか。」
「その時、シェラが戻ってきてくれるといいね。」
「……ああ。ていうか、その時が来たら、マスターシェラの方からアプローチがある気がするよ。」
俺たちは、船を囲むようにして立ち尽くした。
空は静かで、風は止み、アルカエリはまるで眠っているかのような、巨大な絵画でもあるかのような、荘厳なたたずまいで、ただそこにあった。
それは、神の船。
だが、今はまだ、動かす時ではない。
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