4.冒険者デビュー
数ある作品の中から、私の作品を見つけてくださり、ありがとうございます。
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俺が最初にこの世界に来た時に出た森は、ミドガル領のレバカンという名の街近くの森だったそうで、普通なら、そのレバカンという街に移動してから、レバカン外周に設置されている転移魔法陣に乗って移動するらしいが、今回は謎の美女の転移魔法で、直通でここにきたということになる。
ここは、大陸を跨いだウェザリア大陸というところの、パラディオール領、ムーシルトという名の街の北に位置する丘だそうで、ここは共同墓地ではなく、このケイラ・パラディオールという名の人物の為に建てられた墓所だそうだ。
そして、このケイラという人は、マイマスターの義理の妹にあたる人物だそうで、数百年前に亡くなっているそうだが、数百年を普通に語るマイマスターの感覚に、最早ついて行けてない自分がいる……。
そして、ついに我がマスターのお名前を知る時が来た。
マイマスターであり、世間では“エンシェントノーブルセージ”と呼ばれる、古の偉大なる大賢者様、その名を“シェラ・パラディオール・パトラム“というらしい。
今まで色々な呼び方をしてきたが、これからはマスターシェラとお呼びしようと思う。
マスターシェラ曰く、俺はまず、すぐ近くのムーシルトという街に行って、冒険者登録をするべきだという。
俺が冒険者に登録すべき理由はいくつかあって、まずは単純に冒険者登録証はどの街に出入りする際にも有効な証明書であるということ。
次に、冒険者に登録している人間は、冒険者用の宿泊施設に格安で泊まれるので、世界中どこに行っても困らないらしい。
そして、ここが最も大きなポイントで、今俺はこの世界の通貨を全く持っていないので、所謂無一文状態なのだが、冒険者登録は無料で出来るし、登録さえ済めば、その場で依頼を受注することが出来るので、“ひと狩り行こうぜ”が可能になり、依頼を達成できれば、今晩からご飯にありつけるという寸法らしい。
まぁ、早い話が、金がないなら冒険者でもやって日銭を稼げと、そういうことらしいが、異世界初心者の今のこの俺が、はたして冒険者など務まるのだろうか。
そもそも、異世界に転生してまで必死に働いて、日々かつかつの生活を送らねばならないなど、悲劇以外の何物でもないような気もしないでもないが、まぁ、仕方がない、たしかに金は必要だ。
ということで、残念ながら、マスターシェラの言う通り、ムーシルトの冒険者ギルドにやってきた。
マスターシェラは街に入るなり、どこかに行ってしまわれた。
俺には、あとは自分の力で頑張りなさいと言い残して……。
マイマスター、せめて昼飯くらい奢ってくれても……。
俺はギルドに入ると、受付カウンターにいる可愛らしい女の子に声をかけた。
「あの、すいません、冒険者登録をしたいのですが。」
「はい、冒険者登録をご希望ですね。ではこちらの書類に必要事項の記入をお願いします。記入にはそちらのテーブルをご利用ください。わからないことがありましたら、お気軽にお声がけください。」
「ありがとうございます。」
俺は受け取った書類に目を通すが、問題なく読めるようだし、なんか書けそうな気もする。
神様、言語もわかるようにしてくれるって言っていたから、読めるし書けるんだろう。
名前はフィンで、職業はたぶん魔法使いで良いんだろうな、年齢は16歳と、性別は男、住所は不定、不定ってなんか、ニュースなんかでよく聞いた住所不定無職の男みたいで嫌だな……。
で、おぉ、冒険者用の宿の利用希望!1泊10ミルって安いのか高いのかわからないな。ミルって通貨は、日本円だとどのくらいなんだろう。
まぁ、お金はないけど、希望はしておこう、で、得意な戦闘スキルって、戦闘したことないのにわからないから、空欄にしておこう。
よし、こんなもんでいいか。
俺は書いた書類を持って、再度受付カウンターに行き、提出しようとすると、受付のお姉さんがとても素敵な笑顔で「空欄のないよう全て埋めてください。」というが、得意なスキルというものはわからないと答えると、それではと、ステータスを見せることになった。
ステータスを見たお姉さんがとった行動は、悲鳴をあげる→逃げるようにカウンターの奥に消える→堅気には到底見えない厳ついおじさんを連れてくる→俺も首根っこを掴まれて、奥に連れ込まれる(今ココ)
あぁ、また死ぬのかな、俺……。
奥でボコボコにされて路地裏に捨てられて、身ぐるみはがされたりするんだろうか……。
と思っていたが、奥は以外にも普通に事務室っぽい雰囲気で、応接セット的なソファとかではなく、普通の事務机と椅子の空席に座るよう指示された。
すると、さっきの厳ついおじさんが、自己紹介を始めた。
「おれはこのギルドを預かる、ギルド協会のムーシルト支部長ガーランドだ、冒険者登録をしたいそうだが、さっきアリサに見せたステータスをもう一度見せてくれ。あぁ、アリサってのはさっきの受付カウンターにいたギルド職員のことだ。」
「あ、はぁ、わかりました。ライブラ、ステータスを。」
俺が自分のステータスを開示すると、先ほど悲鳴をあげたギルド職員のアリサさんが、興奮した様子で、ほらほらと、俺のステータスの一部を指さしていた。
「俺のステータスって、なんかまずいこと書いてましたか?」
「お前、このエンシェントノーブルセージの弟子って、これはいったいどういうことだ?」
「あぁ、さっきまで一緒にいたんですけど、あとは自分で頑張れと言い残してどこかに消えてしまった、マイマスターシェラのことだと思います。彼女に色々と教わった後で、この称号が追加されていたので。」
「シェラって、お前シェラ様と一緒にいたのか?さっきまで?」
「はい。」
「全員探しに行けっ!」
「支部長、シェラ様は転移魔法を使える方ですよ!」
「そうだった……。」
「あの、俺、冒険者しないと、今日の昼めしにもありつけないんですが……。」
「そんなもん、後で好きなだけ食わしてやる!それよりも、シェラ様はどんな容姿だった?」
「どんなって、とても綺麗なエルフィンのお姉さんで、髪の毛は緩いウェーブのかかったエメラルドグリーンのロングヘアーで、服装は、女性なんでしょうけど、貴族の領主様っぽい服装で、いや、領主様というのを見たことがないからわかりませんが、とにかく、スカートではなくズボンでした、でもとてもゴージャスな雰囲気でした。え?シェラ様ってお尋ね者?」
「バカヤロウ!シェラ様は最後の大賢者とも、現人神様ともいわれる伝説級のお方だ!人前にはめったに現れず、その御姿を最後に見たと言われてるのは、もう百年以上前のことだ‼」
「あ、なんかすいません。」
「まぁいい、いなくなってしまったのなら仕方がない。冒険者登録だったな。お前自体は何が出来るんだ…………。」
先ほどから開きっぱなしの俺のステータスをマジマジと見るギルドのムーシルト支部長の顔色が、見る見るうちに、青ざめていくのがわかった。
「アリサ、ちょっと来い。これ、全属性魔法って書いてないか?」
「書いてますね。」
「その横に魔法創作とも書いてあるよな。」
「書いてますね。」
「逆隣り二つは文字化けしてるよな。」
「してますね。」
「ということは、どういうことだ?」
「神聖スキルってことじゃないですかね。」
「うんうん、だよな。でだ、こいつのこのステータスの数字の方見たか?」
「今見てます。」
「うんうん、そうだよな。それで、お前はこれを見てどう思う?」
「このステータスの数字だけでも、とんでもないですね。ていうか、これw支部長wwwレベル99って書いてますよwwwww」
「だよなw99だよなwwwww」
「「あ~っはっはっはっは」」
「「こっちもとんでもない!?」」
「おい、お前、このステータスはいったいなんだ!?レベル99もたいがいだが、MP36万以上で、魔法使いのくせに攻撃力12万越えってどうなってんだ!?こんな数値Sランクでもなかなかいないぞ!!!」
「あ、そうなんですか?なんか、色々紆余曲折ありまして、現在はこんな感じになってました。あ、魔法使ってみましょうか?」
「やめろ!あぶねぇ、こんなところで何をぶっ放すつもりだ!!!」
「あ、いや、氷の矢でも出してみようかと思ったんですが、いえ、そうですよね、室内でやるもんじゃないですよね。」
「今、氷って言ったか?」
「はい。」
「よし、わかった、冒険者証出してやれ、ランクはとりあえずAだ。そしてお前、ここから西に行くとミヤビというでかい街がある、さらに西に進むと港町があるから、そこに行け。そこで、スキュラっていう魔物が漁師の船を襲っているらしいから、そいつを討伐してこい、これは通常AランクのPTで挑むクエストだが、お前のそのステータスならソロでも行けるだろう。見事達成したらSランクにしてやる。そうすりゃ豪邸に住んで好きなもの食って、優雅に生きていけるぞ。」
「支部長、Aランクって、とりあえず出すようなランクじゃないんですが…。」
「このステータス持ってるやつにBだのCだのの依頼受けさせる気か?そんなもん宝の持ち腐れじゃねえか。いいからAランクの冒険者証を発行してやれ!」
「わかりました~!」
こうして俺は、晴れて冒険者登録を済ませて、ランクもAランクで、いきなりAランクPTで挑むような依頼を受けることになった。
たぶん、俺また死ぬと思う……。
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