35.再始動
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リースとレイアが3年ぶりに家に来た。
久しぶりに飯でも食っていくかと尋ねたら、食べると言ったので、二人の分も用意してやると、喜んでくれたようだった。
食事の後、皆で談笑していると、リースとレイアは何かを言い出したそうにモジモジしていたが、リースの方が、決意を固めたような顔をして話し始めた。
「私達、3年前に、フィン君がこのまま一緒にパーティーをと言ってくれたのに、あの頃の私達には自信がなくて、ここから去ったけど、もう一度チャンスを貰えないかな。私達をまた、フィン君のパーティーに入れてもらえないかしら。」
「え?うちのパーティーに入りたいんですか?二人とも?」
「「うん!」」
「お断りします。」
「「えっ!?」」
「そっか、そうだよね、ゴメンね、変なこと言って、何を今さらって感じだよね……。」
「えぇ~。そこは食い下がりましょうよ。そんなあっさり諦められたら、話が膨らまないじゃないですか!そこはそこを何とかとか食い下がってもらったうえで、それじゃあ条件がある!とか俺が言って、そしたらリースさんとレイアさんが見つめあって、タイミングばっちりな感じで頷いたりなんかして、俺が言う無理難題を達成してくる決意を見せて、そして条件を何とかクリアしてきて、そこで最後に俺が二人の決意が本物だということが分かった、今日から君達は、俺達のメンバーだ!とか、そういう感じで話がまとまって、なんかいい感じで友情的な何かが芽生えるものでしょうよ!」
「えぇ……。そういう感じだったの今の……。」
「そうでしょうよ、ねぇ、シャクヤクさん……。って寝てるよ……。メリルもプルも、俺がここであっさり認めるとか面白くないよね?なんか試練的なものがあった方が、話盛り上がるよね?」
「いえ、別に……。」
「勿体ぶってないで仲間にすれば良いニャ。」
「えぇ……。そこは、何かイベント的なものが発生する流れでしょうが!退屈な毎日に久しぶりに訪れた刺激的イベントはもっと大事にしようよ!」
「えぇ、フィン的には、退屈な毎日だったのかニャ……。」
「私達的には、なかなか刺激の多い毎日でしたけどね……。」
「zzz……。」
「いや、一人寝っぱなしかい!」
「あの、私達、どの辺からやり直せば良い感じなんだろうか?」
「そうですね、まぁ、しいて言うなら、3年前に自信がないからって言って、ここを出て行った辺りじゃないですかね。部屋もそのままにしてありますよ。何時帰ってきてもいい様にね。」
「「フィン君……。」」
朝、台所に立つフィンの背中を見ながら、リースは湯気の立つマグカップを両手で包んでいた。
レイアは隣で、ぼんやりと窓の外を眺めている。
「……なんか、懐かしいね。」
「うん。フィン君が朝から料理してるの、久しぶりに見た。」
「昔はさ、私達が寝てる間に勝手に朝食作ってて、起きたらもうテーブルに並んでたよね。」
「“朝は戦場だ”とか言って、勝手に張り切ってたよね。」
「でも、あの子の料理って、なんか落ち着くんだよね。もちろん味も美味しいんだけど、なんかほっこりするっていうか……。」
「うん。なんか、わかる気がする……。」
フィンは黙々と鍋をかき混ぜていた。
メリルはその隣で、薬草の仕分けをしている。
プルは床に座って、毛づくろいをしている……。
シャクヤクは、まだ寝ている……。
「フィン君、昨日は、なんか、ゴメンね。」
「何が?」
「その……いきなり戻ってきて、勝手に仲間にしてほしいとか言って……。」
「別にいいよ。」
「……それ、昨日も言ってましたね。」
「うん。昨日も言ったし、今日も言うよ。別にいいよ。」
「……ありがとう。」
レイアが、そっと笑った。
「でも、昨日の“お断りします”は、ちょっと心臓に悪かったかも。」
「演出だよ。大事でしょ語りのテンポってやつ。」
「語りのテンポ……。」
「俺の人生、テンポとバランスで出来てるから。」
「フィン君、それ、ちょっとカッコいいかも。」
「ちょっとかよ!」
「ちょっとだけが、ちょうどいいんだよ。」
朝食は、静かに始まった。
パンとスープと、焼いたキノコと、薬草のサラダ。
どれも素朴で、でも、安心出来る味だった。
「このキノコ、昨日の採取の時のやつ?」
「そうそう。毒抜いてあるから安心して食べていいよ。」
「毒抜いてあるって、どうやって?」
「浄化魔法と、俺の勘。」
「勘かい!」
「でも、フィン君の勘って、だいたい当たるよね。」
「だいたいで済んでるうちは、まだマシだな。」
「それにしても、昔よりずっと落ち着いてる気がする。」
「俺が?」
「うん。なんか、話し方のテンポが安定してる。」
「……そっか。」
食後、皆がそれぞれの時間を過ごし始める。
メリルは本を読み、プルは自分の手をペロペロと舐めって、その手で顔を洗っている。
シャクヤクはようやく起きてきた。
「おはようニャ……。」
「おはようございます、シャクヤクさん。」
「昨日はよく笑ったニャ……。召喚されて、まさか目の前で出てくるとは思わなかったニャ……。」
「私達も、まさかシャクヤクさんが召喚されるとは……。」
「プルちゃん、あれ、狙ってたの?」
「ううん、なんとなく……呼んでみたら出て来たニャ。」
「なんとなくで竜が来るの、怖すぎる。」
「でも、シャクヤクちゃん、召喚されても普通に寝てたよね。」
「寝てたニャ。」
「召喚されても寝てるって、ある意味最強だよね。」
「シャクヤクのメンタルは最強ニャ。」
フィンは、食器を片付けながら、ふと呟いた。
「二人が戻って来るのは、なんかわかってたような気がするな……。」
夕方、リースとレイアは、部屋の掃除を始めた。
三年前のまま残っていた部屋。
少し埃をかぶっていたけど、二人の癖や空気がまだそこにあった。
「ねぇ、レイア。戻ってきてよかったね。」
「うん。なんか、フィン君のパーティーって、メンバーっていうより、家族になれた気がするんだよね、なんとなく。」
「私達、また一緒に生きていけるかな。」
「うん。ご飯食べたし。」
「それ、フィン君の説?」
「うん。“一緒にご飯食べればまた一緒に生きていける説”」
「じゃあ、信じようか。」
「うん、信じよう。」
窓の外、気が付くと、もうそこには夕焼けに染まった、懐かしい城壁があった……。
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