3.青空教室
数ある作品の中から、私の作品を見つけてくださり、ありがとうございます。
読んでいただける方に楽しんでもらえるよう頑張りますので、よろしくお願いします。
エルフィンの美女(この世界ではエルフじゃなくてエルフィンというらしい。)は、ついてきなさいと言って走り出したが、その速さは尋常ではなく、というか、最初の一歩目から、跳躍して木の枝に飛び乗り、枝と枝を飛びながら移動するという、最早漫画やアニメでしか見ることの出来ない移動手段を取られたことで、秒で見失ったが、俺も負けじと地上を走って(普通に歩くよりもやや早い程度。)移動していると、突然背後から声を掛けられた。
「あなたふざけていらっしゃいますの?何をちんたらと陸の上を歩いているのですか?私についてこいと言ったのに、ついてくる気がサラサラないように見受けられますが。」
「いや、普通、飛んで木の枝に飛び乗るとか、ありえなくないですか?」
「あなた、それだけの魔力をお持ちで、何をおっしゃっているのか理解に苦しみますわ。常時身体強化をしてらっしゃらないの?」
「いや、だから、この世界の人間じゃないって言ってるじゃないですか。ていうか、そもそも魔法なんてない世界で生きてきたのに、この世界の当たり前とか常識を押し付けられても、こっちこそ理解できませんよ。」
俺の反論を聞いて、美女エルフィンが顎に手をやり、小首をかしげる。
いちいち腹立つくらいに可愛いから、こっちの感情は怒れば良いのか、デレれば良いのか、なかなかに難しい選択を迫られている。ような気がしないでもない。
「あなた、神様とお話したんですわよね?」
「はい。」
「そこでこの世界のあらましを聞いてはおりませんの?」
「はい、まったく、1ミリも聞いておりません。」
「あの方は本当に……。」
「わかりましたわ、では移動の前に、まずあなたのステータスを開いてごらんなさい。そして、それを元にある程度は教えて差し上げます。ステータスの開き方はご存じ?」
「あ、はい、それはわかります。ライブラ、ステータス開いて。」
「ライブラ?」
「え?」
「いえ、何でもございませんわ。 では失礼して、拝見させていただきますわね。ふむふむ、なるほど、あなた、ファクトチェンジで何をお願いなさったの?」
「最強の魔法が使える魔法使いになりたいと……。」
「なるほど、それでですわね。確かに最強と言える魔法をギリギリ使うことが出来るステータスではありますが、それ以外は、子供とさして変わらないステータスですわね。次にファクトチェンジを使えるのは何時になるんですの?」
「あ、神様がおまけでもう一度使えるようにしておいてくれると言ってました。だから、今すぐにでも使えます。」
「それは好都合ですわね。では、これから私が言うことを、一字一句違えずに願ってごらんなさい。」
そう言うと、美女エルフィンのお姉さんは、俺に耳打ちをして、願うべき内容を教えてくれた。
そして、俺は忘れないうちにお姉さんが言った内容をそのままファクトチェンジで叶えてもらったのだった。
「では、もう一度ステータスを見せてごらんなさい。」
「はい、ライブラステータスを。」
[告:種族名:人族【♂】
個体名:フィン
レベル:99
HP:79850
MP:368550
攻撃力:125000
守備力:218000
素早さ:85000
賢さ:550000
運:100050
スキル:制限付き全能 鑑定 全属性魔法 魔法創作
称号:エンシェントノーブルセージの弟子]
「ふむ、大分マシになりましたわね。ではこれから、魔法の原理から使用に至るまで、順を追って説明して差し上げますわ。まず、魔法と一言で言っても、その現象の発現に至る……。」
それから約2時間の間、名前も知らない謎の美女による、魔法についての青空教室が繰り広げられた。(その間にも、数体の魔物が襲って来たが、謎の美女は話を止めることも無く、簡単に撃破を繰り返していた。)
魔法にはガッツリ精霊と契約していつでもどこでも簡単に扱えるものと、その都度一時の契約をして行使するものとに分けられるらしく、前者はいわゆるサブスク契約みたいなもので、後者は小売販売みたいなイメージらしい。
とはいえ、サブスクがお得パックかというと、そうでもなくて、そもそもサブスク契約を結ぶためには、それなりの財力(魔力)が必要とされ、現代では魔法を使える人の大半は、このサブスクを一本持っておいて、その他は小売でカバーするという手法が多く取られているらしい。
サブスクのメリットは詠唱と呼ばれる、所謂呪文的なものが必要ないらしく、イメージしたものをその通りに出せるらしいが、小売には呪文が必要ということで、現在の主流といわれる利用方法に落ち着いたらしい。
ちなみに俺はというと、最初のファクトチェンジによって、全てのサブスクを契約できるギリギリのラインまでは魔力が上昇したらしい。
その理由としては、最強の魔法とやらは、全ての魔法的要素が集約されたものらしく、それを全て詠唱でとなると、口が7つ必要になるらしい。
つまり、最強の魔法を使える人間自体が、ほぼ存在しないということらしい。
でだ、俺はそんな魔法を使えるようになったから、これからこの世界で悠々自適に生きていけるのかというと、そうでもないらしく、そもそもの話として、最強の魔法を使った後の問題というか、この星の三分の一程度が抉られて消えてしまうらしいので、そうなると星としての機能を停止してしまうことになり、まぁ、その前に、爆発してしまうだろうということだった。
要するに、俺は初手から間違ったらしい。
あっても使えないのであれば、無いのと一緒。
ただ、そのベースとなる部分については十分な利用価値があるので、全サブスクを持っていることで得られる恩恵もないことはないらしい。
そして、なんと、俺の称号にエンシェントノーブルセージの弟子という一文が追加された。
さらに、謎の美女の話では、俺は、その原理に至るまでのイメージが出来る現象であれば、勝手に自分で魔法の名前を付けて行使することが出来るらしい。
ただ、原理がわからないものについては、本を読むなり、誰かに教わるなり、ライブラに聞くなりしないと使えないらしいが、それだけで、ほぼすべての魔法を使えるというのであれば、それは最早チート以外の何物でもないような気がするのは俺だけなんだろうか……。
あと、この世界には、各都市をつなぐ転移魔法陣なる便利なものが存在し、物流や人の流れに大いなる貢献をしているらしいが、かつてこの世界が、国単位で分かれていた頃は、神の降臨した国のみが使える特別なものだったらしいが、現在では国という概念は存在せず、言ってみれば、世界が一つの国のような状態らしい。
そして、現在はどこにでも一瞬で移動できるようになってはいるが、それはあくまで都市と都市をつないでいるだけなので、魔法の使えない普通の人は、街までを徒歩なり乗り物なりを使って移動する必要があるらしいが、そこについても、この世界には、ガソリンの変わりに魔石という物があるらしく、その魔石を使ってエンジンの変わりのような機械を用いた、車やバイクがあるらしい。
初めてそのエンジンぽい物をつくった人天才だろ!
話がそれたが、要は、俺は今、かなり魔法が使える系男子ということになるらしく、師匠にも、何か魔法をイメージしてみろと言われたので、“火の玉を出す”とかありきたりなものではつまらないので、水を出し、その水の周囲の空気を風魔法で遮断及び空気の排出をすることで、中を真空状態にし、急激に温度を下げるとどうなるか、はい、そこのあなた、御名答!このように氷の塊ができました。
つづいて、この氷を精製する魔法を繰り返すことで、氷を矢のように尖らせますと、はい、御名答!氷の矢が出来ました。
名前はそうですね、アイスランスという程長くもないし、どちらかというと、持って戦うよりは飛ばしたいので、う~ん、フリージングアロー!これでどうでしょう。
といった感じで独り言をブツブツと言いながら魔法を考えていたら、なんと師匠が泣いていた。
なにか変な事を言ったのかと、師匠に確認すると、なんでもないからそのまま続けろと言われ、プイッとそっぽをむかれてしまったので、軽くへこんだが、でも、この魔法の自由研究はとても楽しいということが分かった。
後でライブラさんも交えて、じっくりと研究を重ねることにした。
ということで、実は師匠も転移の魔法を使うことが出来るらしく、先程走って移動しようとしたのは、俺の反応を見るためだったらしいが、まさかあんなにちんたらと歩くとは思ってなかったようだが、それは誤解というものだ、師匠にはちんたら歩いていたように見えたのかもしれないが、俺としては、必死に走っていたと主張したい。
ということで、色々とあったが、無事目的地についた。
ただ、師匠の転移魔法で来たので、どこをどう通るとこの場所にたどり着くかは知らない。
ただ、そこは、小高い丘になっていて、周りに人気があるようには感じられないし、森というよりは、草原といった感じで、生えてる木もまばらだ。
丘を登りきると、辺り一面オーシャンビューで、とても心が癒される感じがする、素敵な場所だった。
丘の一番高い場所には、大理石のような美しい石でできた、全体が丁寧に磨き上げられている石碑のような物があり、その周囲には、自生している草花がかわいらしく咲いていて、白い麦わら帽子をかぶった、白ワンピの女の子なんかが、帽子を飛ばさないように右手を帽子に添えて立っている、なんて絵なり写真なりがあると映えるな、などと漠然と考えていると、師匠がその石碑の前に片膝をつき、神様から預かった剣を、石碑に立てかけた。
「ケイラ、これあなたが子供の頃に、お姉さまからいただいたものじゃなくて?あれから、もう何百年が経ったのかしらね。私ももう、生き過ぎなくらい長く生きたわ。でも、貴女たちの所へ行くのはまだもう少し先になりそうよ。それまでの間、この剣借りるわね。」
先程の俺の感想を訂正しなくてはならない。
丘の上の石碑には、白いワンピースの女の子じゃなくて、エメラルドの髪のエルフィンの美女が石碑に跪いて優しく語り掛けている絵の方が、映えるなと感じた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
感謝の言葉しかありません。
よければ次のお話も読んでいただけるとありがたいです。
どうぞよろしくお願いいたします。