27.ソフィア・スロノス
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俺達は今、オベロという街に来ている。
ここはパトラム領の街なので、師匠がかつて統治していた街だということになるが、それはまぁ、どうでもいい。
この街は転移魔法陣の位置的な問題で、なかなかに移動が面倒な場所ではあることから、ここで何か用事がある時は、宿泊するのが一般的だが、一度来てしまえば自分で転移の出来る俺にとっては、これまたどうでもいい。
俺は今オープンカフェの一席で、コーヒーのようなものを飲んでいる。
向かいには青い髪のメガネを掛けたヒーラーがニコニコしながらケーキを頬張っている。
だがしかし、デートではない。
メリルはヒーラーではあるが、正直俺より回復できないし、魔力も特別多くもない。
基本的に、一般の魔法職は、クリエイトを使えない時点で、俺の様に回復させることは出来ないので、この娘が特別ダメなヒーラーというわけではなく、まぁ、所謂普通のヒーラーだ。
「プルちゃん遅いですね、何かあったのかな?」
「確かに、少しかかりすぎだな。」
プルは主に昆虫系の召喚士で、しかも、獣人だ。
猫の獣人なので、頭に猫耳がついていて、尻には尻尾もついているが、全身毛むくじゃらというわけではなく、肘と膝の先の部分は毛で覆われていて、その他は人間のように肌が露出しているらしい。
らしいと言ったのは、見たことはないけど、話には聞いたからそういう表現としたのだが、これだけは言えるということが一つあって、猫の獣人だからと言って、別に語尾にニャを付けるなんてベタなことはしないだろうと思っていたが、どうやらニャは必須らしい……。
で、今話した二人は誰かというと、この3年で出会った新しいパーティーメンバーということになる。
ではシャクヤクさんとは袂を分かったのかというと、そういう訳ではなく、単純に今日も屋敷で寝ているというだけの話だ。
ではなぜ俺とメリルがこんなデートの様なシチュエーションでオープンカフェでお茶を楽しんでいるのかというと、プルが「依頼主に話を聞いてくるニャ!」と言って出て行ったので、仕方なく二人でお茶を飲みながら待っていたというわけだ。
すると、唐突に頭上からプルが降ってきたかと思ったら、開口一番「フィン、この依頼無理ニャ。」と言って、開いている席にスポっと着席した。
流石は猫獣人、身のこなしが猫過ぎる……。
「無理って、どういうことだ?ただの討伐依頼だろ?」
「違うニャ。ただの討伐依頼じゃなくて、面倒な討伐依頼ニャ。依頼主が何を求めているのかがさっぱりわからないニャ。」
「ん?ん?ん?幻獣を捕縛したいから周りにいる魔物の掃討を願いたいって話だったよな?で、どこの何を捕縛したいのかを聞いてくるだけのはずじゃなかったか?」
「お前みたいな獣人に熟せる依頼じゃない!帰れ‼って言われたニャ。」
「あぁ、なるほど、そういう系の人なのね。んじゃ帰るか。向こうが帰れって言ってるってことは、こっちが契約不履行なわけじゃないしな。途中解約ということで報告すれば、保証金くらいはもらえるだろ。」
俺達は折角遠くまで来たんだからと、まずはカフェでプルにも好きなものを注文させて、その後は買い物でもして帰ろうかと思っていると、背後から怒声がするので後ろを振り返ると、いかにも金にものを言わせて傍若無人に生きてますと、顔に書いてあるようなおばさんが、こっちに向かってわめいているようだったので、何の用かを尋ねると。
「そこの獣人、お前、人が話している最中で突然帰るとか、非常識にもほどがあるだろう!これだから人の恰好をしているとはいえ、獣は獣だと言われるんだよ‼」
と、顔面を真っ赤にして怒っているので、俺もいくつか気になったことを尋ねることにした。
「さっきから獣人獣人と言っているのは、うちのプルの事か?」
「そこの猫獣人だよ!」
「ふむ、あんた、依頼主らしいが、うちのプルには依頼を達成出来るわけないから帰れと言ったと聞いたんだが。」
「確かに言ったが、まだ話は終わってないのに、突然飛び上がって消えたんだよ、非常識にもほどがある。」
「そうか、それは悪かったな。ただ、気になることがもう一つあってな。その依頼ってのはそんなに難しい物なのか?このパーティーは、Sランクの俺がリーダーを務めているパーティーなんだが、それでも達成は不可能だと?」
「いや、そうは言わないが、そこの獣人が……。」
「さっきから、うちのプルの事を獣人獣人と侮蔑的に呼んでるが、あんたも獣人だろ?」
「私のどこが獣人なものか!れっきとしたヒュームだよ。」
「そうだったのか、これは失礼した。てっきり豚の獣人かと思っていたよ。」
「なっ!?何を!!!」
「うん、もう結構だ、必要な言質もいただいたし、キャンセル料はしっかりと請求させてもらうよ。あ、あとな、俺は今じゃそこそこ有名な冒険者で、各地のギルドにもなかなかに顔が利くんだ。当然ここのオベロ支部長とも顔見知りだ。今回はうちのプルは獣人と蔑まれ、メリルはいやらしい目で弄ばれ、依頼は一方的にキャンセルされたと伝えておくよ。あとな、俺のこと、よく知らないみたいだから教えておいてやるよ。俺は既存の魔法全てを操れるだけでなく、自ら魔法を創作することの出来る魔法使いとして、今じゃ“魔導王”とか“ソフィア・スロノス”と呼ばれていたりもするんだ。そうだな、誰にも気づかれず、何の証拠も残さずに、一家丸ごとなかったことにすることも、やろうと思えば別に難しいことじゃないんだ。傲慢な態度をとるのは良いが、それ相応の報いを受ける覚悟を持つことを忘れるなよ。あ、別に俺があんたをどうこうすると脅しているわけじゃないからな。一般論としての忠告だ。あんたの態度があまりにも目に余ったんでな。それじゃあ、失礼するよ。」
俺達は依頼を引き受けるのを止めたので、今日一日が暇になってしまったし、街でショッピングだけして帰ったところで、やはり半日は暇になってしまいそうだったので、どうせなら、依頼主の依頼が永遠に達成されないようにちょっと嫌がらせをしてやろうと思いついた。
今日は情報だけと思っていたので、シャクヤクさんを連れてきてないが、まぁ、別にいなければいないで、二人を守りながら戦えばいいので、大きな問題ではない。
「それじゃあ、行こうか。ペガサス探しに……。」
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