23.神様が非を認めて種を明かしてくれたので、俺の決意も固まりました。
数ある作品の中から、私の作品を見つけてくださり、ありがとうございます。
読んでいただける方に楽しんでもらえるよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。
「元気にやっているようで、なによりだわ、フィン。」
「はぁ、あの、転生して僅か1か月足らずで、なんか怒涛の毎日なんですけど、異世界転生者ってこんなもんなんですか?」
「そうね、そういう意味では、私、貴方の先輩ということになるけど、私は異世界転生して1週間で、ただの旅人から侯爵になっていたわね。転生してものの5分で黒竜倒して、その後、カーミオ大森林制圧、魔王領制圧、ミヤビ建造、遊園地建造、ムーシルト改築、ヘミエミルを中心とした連合軍との戦闘、からの三国壊滅、バミア改築、ハーコッテ改築、などなど、1年足らずでまぁまぁ仕事したと思うわよ。その後も色々あったしね。」
「あ、なんか、すいません。もっと頑張って働くようにします……。」
「まぁ、そこら辺は人それぞれで良いと思うから。それに、私はあなたと違って、どうしても達成したい目的があったのよ。だから頑張れたし、頑張らないといけなかった、ただそれだけよ。」
「あの、神様……。キラ様?に、聞きたいことが山ほどあるんですけど、まずは、コレを聞いておかないと、どうも釈然としないというか……。 そもそもの話なんですが、俺って事故で死んだじゃないですか。確かに子供を助けたいと思って飛び込んだことが善行として判定されたとか、そういうのが理由ならわからないでもないんですが、そんなの、あの地球上で、数え切れないほど起きることじゃないですか。なのに、なんで俺はチャンスを貰えたのか、しかも、大好きな異世界ファンタジーの世界で、考えられる最高のスキルを手に入れて、どう考えても過剰すぎるんですよ、待遇が。」
「ははは、まぁ、君ならそう考えても不思議じゃないだろうね。でもね、私は君が善人であることを知っているのよ。無意識のうちに善行と呼ばれるような行動をとれる人間であるということをね。君は異世界ファンタジーが大好きで、お酒と女の子はちょっと苦手で、職場の上司に無理難題を突き付けられても、腐ることなく前を向いて努力の出来る人間で、周りの同僚が困っていると、自分が忙しくて死にそうなのに、それでも首を突っ込んであげられる人間で、わからない事、無理な事は、素直に先輩や上司の教えを乞うことの出来る、かわいい後輩だということもね。」
「え?」
「私が異世界転生する前は、城元 憲という名前だったのよ。熊谷君。」
「え? 城元さん? なんですか……?」
気付くと、俺の頬に一筋の涙が零れ落ちる感覚が伝わる。
「こんな格好しているから、わからないのは無理もないけどね。」
「でも、この間会った時は、そんなこと一言も……。」
「それはほら、熊谷君よく言ってたじゃない。いきなり種明かしするなんてありえないって。」
「それは、確かにラノベの中の話ではそうですけど、ひどいですよ、でも、良かった……。」
「こんなおっさんの事を、死んで結構時間が経っているだろうに、そんな風に感じてくれる、君はやはり、私の知る限り、最高の善人だよ。」
俺は、神様、いや城元さんと懐かしい話で盛り上がり、しばらくの間、時間を忘れて話し込んでしまった。
その間、シャクヤクさんはあまりに退屈だったのか、地べたに座り込んだと思っていたら、そのまま眠ってしまったらしい……。
「それじゃあそろそろ本題に行きましょうか。」
「ミシャの件ですね。」
「えぇ、まず最初に言っておくことが一つ。ミシャは厳密にいうなら転生者ではない。そうだ、この話の前に、転生について話しておかないと、わからないわね。転生は全員するものなの。ただ、前世の記憶を継承したまま転生することはほとんどない。つまり、私や熊谷君のようなケースはレアケースということになる。初めに天界に来た時に、魂クリーニングの話聞いたでしょ?死ぬと大体皆アレをやることになるのよ。で、アレを食らうと前世の事は全て忘れちゃうということなの。ちなみに、星によって生物の魂数は厳格に調整されていて、その星の中で魂がローテーションして、人間だったり、犬だったり猫だったり、昆虫もそうだし、植物もそう。なので、本来別の星への転生はさせないのが通例。ただ、私や熊谷君のような例外もある。その例外がどうやって生まれるかというと、神様のしくじりね。」
「え?」
「まぁ、そうなるわよね。私はこれでも結構頑張ってる方だと思うのよ。今まで700年ほど神様やってきてるけど、私が原因のミスはまだ起こしてないわ。今起きてるエラーの原因は、前任の神がやらかしたしくじりの穴埋めね。何を隠そう、私がそもそも前の世界で死ななきゃならなかった原因が、今あなたが直面してる問題でもあるミシャなのよ。」
「えぇ~~~~~~~???」
「ちょっと長くなるけど、大丈夫?」
「は、はい……。 大丈夫だと思います。」
「ふふふ、あぁ~やっぱり熊谷君だ、懐かしい。 っとゴメン、ゴメン。ミシャの話ね。彼女は、そもそもが転生をするはずの魂ではなかった。そのまま魂クリーニングを受けるはずの魂だったの。でも、前任の神が、ミシャの魂を見落としてしまった。ここで一つ目の問題が発生ね。そして、ミシャの魂が本来のルートをたどらなかったことで、地球では魂が一つ不足している状態になる。だから、魂を補充しなければならないんだけど、そもそもが見落としから始まったエラーなので、魂の過不足が幾つなのかを把握しきれていなかったので、地球の魂を全て数えなおしたの。ここで、二つ目の問題発生。数え間違いね。ミシャの魂一つ分を補充すれば良かったのに、足りないのが二つだと思って、とりあえずミシャの転生先の魂で、穴を埋めようと思ったら、余計に補充してしまったので、私の魂が、突然身体から引き抜かれてしまったの。」
「その神様、ミスした方の神様ですけど、かなりヤバいヤツじゃないですか?とりあえず、経理系の仕事させちゃダメな人ですよね……。」
「うん、まぁ、神様の中の偉い神様にもそういう風に判断されて、私が神になった途端に左遷のように異動させられたわ。今、とある世界の風の神様やってる……。」
「竜巻が起きないことを祈ります……。」
「というわけで、私はミシャのエラーが原因で地球からはじかれてしまったの。で、そのエラーが何なのかという話になるんだけど、ミシャの魂を拾えなかったことで、ミシャの魂は自分で何となく進んでしまったの。冥界の中をね。三途の川を自分で渡り、そして、渡った先では本来魂クリーニングカウンターに行くはずが、そことはまったく違う方向に進んでしまって、そこで見つけた“竜の封印結界”。ここでも実はもう一つ問題があって、結界が正しく張られていれば、そもそも“竜の封印結界”は見えないはずなのよ。でも、“竜の封印結界”を保護する為の結界を構成するお札がちゃんと貼られていなくて、“竜の封印結界”が見えていた。見えたから、気になって触れちゃった。そしたら、“竜の封印結界”として冥界にいたリーフ、あぁ、金竜のことね。彼女の思念体に触れたミシャは、彼女の思念体を依り代として、今あなたがいる世界に顕現してしまったということなのよ。そして、彼女のスキルの暴走については、まさしくあなたのその剣、黄竜剣が原因よ。それは金竜の鱗を材料に私が作った剣なんだけど、所持者のステータスを何倍にもする効果が付与してあるの。あくまで所持者なんだけど、今回は依り代とした竜の、本体の一部である鱗に近づいたことで、力が増幅して暴走状態になったんだと思う。」
「今までの話を聞いている分では、時系列に歪みを感じるのですが、これは“そういう物”でスルーすべきなんでしょうか。」
「そうね、そこを説明するとなると、神の領域の知識が必要になってくるから、とりあえず、今は次元の差から生まれる不思議現象とでも思っておいて。ちなみに、私はミシャが原因で死ぬことになったって言ったけど、ミシャの元の人格は、江戸時代の人物よ。で、私が、今熊谷君が生活している世界に行ったのは、熊谷君のいる時間軸を0とするなら、さっきも言った通り、700年前。でも、私、あぁ、日本の私ね、その城元憲が死んでから、熊谷君が亡くなるまでって、3年半くらいだったでしょ?つまり、そういうこと。」
「はい、考えても無駄ということがわかりました。」
「お、いいね、懐かしいね、その受け答え。」
「よく城元さんに言われてましたからね。考えて解決出来ることなら、好きなだけ考えろ、でも、考えてもどうにもならないことに時間を使うのは無駄だと。」
「あぁ、なんか言ってたわね。なんだか偉そうに語っちゃってたんだよね。それも懐かしいわ。」
「あ、で、結局、ミシャの件はどうすれば解決になるんでしょうか。」
「うん、ここからは、熊谷君にはとうてい受け入れられない話になるわ。まず、大前提として、ミシャはあの世界で生きていて良い存在ではないの。彼女が生きていることによって、冥界と天界を隔てる結界が崩れかけている。なので、彼女の死はマスト。冥界と天界を隔てる結界が崩壊すれば、死者と生者の境界が崩れ、世界が保てなくなる。命を多い少ないで語りたくはないけど、でも、ミシャ一人のせいで、世界が滅ぶのは誰の得にもならない。」
「なんとなく、こういう結末が来る予感はありました。でも、やっぱり納得は出来ません。」
「そうよね。熊谷君には辛い仕事を任せることになるけど、ただ、私もこのままミシャを蔑ろにするような結果のままで終わらせるつもりはない。彼女の魂は、私が責任をもって、再びあなたの元に送るわ。魂クリーニングはされるから、今までの事を覚えたままというのは不可能だけど、でも、必ずあなたの元に送り届けるわ。あなたが何れ誰かを愛し、結婚したら、そこに生まれてくるのはミシャよ。」
俺は堪える努力もしなかった。
両の瞳から溢れ出る涙をそのままに、揺れる声を隠そうともしなかった。
「えぇ……。俺、誰かと、結婚する、、、んですか……。 折角異世界に転生したんだから、俺つえぇぇぇぇぇからの美少女ハーレム形成展開が待ってると思ってたのにな……。」
「君は誠実だから、そんな風にはならないでしょ。」
神となった、元憧れの上司は、どこまでも美しい声と表情で、俺の押しつぶされそうな心を優しく包んでくれているかのように感じた。
俺は決意を固め、上着の袖で、涙に濡れた顔を拭うと、真直ぐに神を見据えて言った。
「俺は、何をすれば良いんですか。」
一瞬、神は慈愛に満ち溢れた表情になったかに見えた。が、すぐに口元を真一文字に引き締める。
「ミシャにかけた封印を解いてほしい。その後のことは、私がやるから。」
「わかりました、今も昔も、俺は城元さんを信じています。」
「いい顔するようになったな、熊谷……。」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
感謝の言葉しかありません。
よければ次のお話も読んでいただけるとありがたいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
このお話が面白いと思っていただけたなら、評価やコメントなどいただけるとありがたいです。




