20.黄竜剣と眠れる金の竜
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俺は今、断崖絶壁の崖の上に立っている……。(火サス的には種明かしの時間ということになる。
見下ろすと、谷底は、太陽の光が届かないほど下にあるようで、めちゃくちゃ怖い……。
これ、普通の人には最早近寄るなと言っているようなもので、空を飛ぶことの出来ない我々人間にとっては、足を踏み入れることの出来ない領域なのだろう……。
まぁ、俺は飛べるけどね。
「シャクヤクさん、これ実家に帰る時ってどうやって帰るの?」
「竜の姿に戻れば飛んで帰れるし、まぁ、飛び降りたとて、何の問題もなく帰れるのう。」
「そうなんだ、流石は竜とでも言いますか、頑丈で良いですね。じゃあ、行きましょうか。」
「ふむ。」
俺たちは二人そろって谷底へと飛び降りた。
普通の感覚の人が見たら、無理心中にしか見えないだろうけど、俺もシャクヤクさんも普通じゃないので問題ない。
よくある話ではあるが、自分の力量を過小評価して、とんでもない偉業を達成しているにも関わらず、本人はその凄さに気づいてない設定とかあるけど、ありえないからね。
そういうのって気づいてないフリならありえるんだろうけど、素で気づかないとかはありえないと断言できる。
気づけないほどの頭しかない人には、そもそもそんな偉業を達成することなど出来ないし、達成出来る実力があるのであれば、気づかないのはありえない。
つまり、俺は自分がどの程度異常な存在なのかはしっかりと把握している。
そのうえで、とぼけたり、気づかないフリをすることはあっても、素で気づいていないとかはない。
でだ、飛び降りて、着地の衝撃を魔法を駆使して相殺するとか、これだって十分異常な力だと言っていいだろう。
しかしだ、着地の衝撃を相殺することもなく、なんなら若干地面に埋まりながらも、何の問題もないというか、かすり傷一つないシャクヤクさんってどうなの?って話ですよ。
まぁ、竜だから、人とは違うから、仕方ないっちゃあ仕方ないのかもしれないけれども、頑丈って言ったって、物には限度というものがあるじゃないですか、頭おかしいよこの人……。
「痛てっ!」
おぉ、シャクヤクさん、元に戻ってる!
「ところで、シャクヤクさん、この竜谷ってね、聞いていた話だと、竜がいる谷なのよ。」
「いるぞよ。」
「いや、いるんだろうけども、俺には谷底深くにある集合住宅にしか見えないんですよ。」
「なんじゃそれは?」
「いや、なんで皆人の姿でね、こんなマンションみたいなのに住んでるんですか?」
「わらわが生まれたころからこんな感じだぞ?昔からそうなのであろう?」
「んなわけあるかい!」
「貴様ら、ここを何処だとこころえって、なんだシャクヤクじゃないか。」
「おぉ、イソメではないか。ご苦労じゃのう。」
「お前まだその喋り方なのか、今回は随分長いな。」
「え?シャクヤクさんそれ地の喋り方なんじゃないの?っていうか、竜特有の喋り方なのかとすら思ってたのに。あっちの人めっちゃ普通に喋ってんじゃん。」
「お前は誰だ?」
「あ、、申し遅れましたが、俺はシャクヤクさんを養っているフィンという者です。今日はちょっと金竜さんにお話を伺いたくて来ました。」
「ババ様に?シャクヤク、お前ババ様の事話してないのか?」
「何をじゃ?」
「あれ、お前が出て行ってからだったかな?ババ様いつからかは忘れたが、もう何年間も眠ったまま起きないんだよ。」
「え?それは知らなかったぞえ、死んでいるわけではないのかえ?」
「お前、母様の前でそんなこと絶対言うなよ。それこそ殺されるぞ。」
「あ、うん……。」
「困りましたね、ていうか、シャクヤクさん、今いつもの口調を忘れてましたね。」
「うるさい!」
「それより、ここまで来ておいて、金竜様からお話が聞けないというのは痛いですね。」
「ならば仕方あるまい、母様から話を聞くしかないじゃろうて。」
俺達は谷底に開いている横穴の奥に進んだ。
横穴の先には中層マンションとでも言えば良いのだろうか、タワーじゃないけど、4~5階程度でもない、上の方は崖に埋まっていて見えないけど、おそらく10~12階建てくらいの、マンションにしか見えない建物のエントランスに入り、魔力で動くエレベーターに乗って、9階で降りた。
このエレベーターはバッテリー式ではなく、自らの魔力で起動させる方式のようだ。
「シャクヤクさんこのエレベーター起動させられないですよね?普段は歩いて上ってたんですか?」
「起動できるくらいの魔力はあるわい。」
「そうなんですか。あ、つきましたね。」
俺はエレベーターを降りると、ドアが2枚見えたので、どちらかを尋ねようかと思ったが、尋ねるのを止めた。
「右のドアで良いんですね?」
「フィン、そなた何故わらわの実家が分かったのじゃ?」
「これだけ盛大にドアを赤く塗っていたら、誰でもわかるのではないかと思います。向かいは紫に塗ってありますし……。」
「なるほど、そういう見分け方もあるのじゃな。」
ピンポーン
いや、俺今異世界にいるんだよな……。
普通にピンポン言ってるし、ドアが赤と紫であること以外、異世界要素が1ミリもないんだけど……。
「はい。あら、シャクヤクじゃないの。お帰り。」
「母上、ただいまなのじゃ。」
「また、あんたはそんな話し方して。本当に影響されやすいんだから。あら、そちらの方は?お友達?」
「あ、はじめまして、俺はフィンと言います。」
「よく来たわね、どうぞ、上がってちょうだい。ん?それ、もしかして。」
「あ、これでしょうか。」
俺は黄竜剣をベルトから外して、シャクヤクさんのお母さんに差し出した。
「ていうか、シャクヤクさんから想像していたのとは大分違うようで、サイズ感も普通の女性というか、むしろ小柄な感じですし、話し方も普通だし、お顔はシャクヤクさんと似ている部分もありますが、シャクヤクさんのお母さんからどうやったらシャクヤクさんが生まれるのかがいまいち理解できませんね。痛って……。」
「母様はわらわよりも強いのじゃ、口を慎め。」
「いや、むしろ、シャクヤクさんのことはディスれど、お母さまには誉め言葉を並べたつもりだったんですが……。」
「そうじゃったのか?」
「えぇ……。ところで、シャクヤクさんのお母様、今日お伺いしたのは、ここ最近、人間の街で起きている事と、金竜様、古竜様と言った方が良いのでしょうか。その、古竜様の身に起きている事に何か関連性があるのではと思って、手がかりを探しに来たのですが。」
俺は、ミシャの騒動について、ミシャとの出会いも含めて、全てを母赤竜に話した。
「うん、話は大体わかった。ところで、私をいちいちシャクヤクの母と呼ぶのも面倒だろうから、カオウと名前で呼んでくれていいわよ。」
「あ、はい、ありがとうございます。ちなみに、カオウさんは、この件について、何か思い当たることなんかはありませんか?」
「うん、そのミシャって人間の子だけど、本当に人間の子供なのかという疑問が残るわね。そして、その子が貴方たちの所に来たとたんに、急激にスキルを成長させたという点についても、あなたやシャクヤクに原因があるとは思えない。あるとすればこれよ。」
カオウさんは先ほど預けた黄竜剣を翳し、10センチほど鞘からだすと、そこに嵌められている宝石のような物を指さした。
「この剣、知っての通り、刃の部分は、母様の鱗をアダマンタイト鉱に練り込んで鍛えた、高い硬度と靭性を併せ持つという、なかなかレアな剣だけど、そこで、さらに実用性を高めるためとして、母様の血液が結晶化した鉱物を仕込んであるんだけど、その結晶が持つ効果に呼応したと考えるのが、一番可能性が高いと思うわ。」
「その効果というのは、一体どんなものなのでしょうか。」
「持ち主のポテンシャルを底上げし続ける効果よ。これを持っているだけで、経験値がひたすらたまり続けるような感じと言えばいいのかしら。」
「そんな効果があったんですか。」
「あと、そのミシャって子、年はいくつなの?」
「5歳になったばかりのようです。」
「なるほどね、母様が眠りから覚めなくなったのも、ちょうど5年前のことよ……。」
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