19.養女を封印した後に再会した師匠の後姿があまりに天使だった件
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「この度は、拝謁の栄を賜り、深く御礼申し上げます。」
「そう畏まらずともかまいません。お二人ともお顔を上げてください。」
「はっ、畏れながら、失礼させていただきます。」
「それで、ガーランドさん、お話というのは、今回の騒動の件ですね?」
「はっ、その件につきまして、詳しいお話が出来る者を連れてまいりましたので、この者の話を聞いていただけると幸いです。」
俺の目の前には、絶世の美女が、これまた威容を湛えた椅子に鎮座していた。
この椅子は、只々華美な装飾が施されているといった、見掛け倒しの椅子ではない。
椅子自体はむしろ、一見簡素な物に見えなくもないが、俺にはわかる、これは非常に良い仕事で仕上げられた椅子に違いない。
そして、その本物の椅子に座っているのは、このパラディオールの現領主である、ナナミ・パラディオール公爵殿下。
パラディオールの歴代領主は、仁政を敷く賢人として有名と聞く。
しかも、歴代領主は全て女性で、なおかつ、絶世の美女と噂されているが、今確認した。
絶世の美女というのはデマだ、いや、デマというのは少し違う、そう、表現として、全く足りていないのだ。
俺はこの世界に転生してからというもの、やたらと美人に出会ってきたが。その中でも最上位に君臨するのが我が師シェラ様であることは言うまでもない。(あ、神様も美人だったけど、神様なので除外ね。)
しかし、俺のその序列が今揺らぎを見せているではないか、この方は、それほどの美人様であらせられる……。(ていうか、どことなく、神様にも、シェラ様にも似ている気がするが、もう美人とは、行きつくところまで行くと、皆同じような顔立ちになるのだろう。)
「どうかなさいましたか?」
「あ、いえ、失礼いたしました。公爵殿下のご尊顔を拝し、あまりのご麗容に、しばし言葉を失ってしまいました。申し訳ございません。」
「あら、嬉しいことを言ってくださるのね。ですが、美しさとは、見る者の心に映るもの。あなたの澄んだ眼差しが、そう映したのでしょうね。」
「過分なお言葉、誠に恐れ入ります。さて、早速ではありますが、今回の件について、少々お耳に入れておきたいことがございましたので、かように参上仕った次第にございます。」
「聞かせていただけますか?」
「はっ。実は、今回の騒動を引き起こしたのは、先日私が養女として引き取った娘が持つ、特別なスキルの暴走が原因と考えております。そのスキルとは、最初は、対象に意識を集中すれば、相手の思考が読めるというものでしたが、次第に顔を見ただけで何を考えているのかがわかるようになり、ここからは私の想像となりますが、最終的には、相手の精神に干渉して、操れるくらいにはなっていたのではないかと考えております。そして、そこに至るまでの期間が非常に短かった。つまり、私が養女として迎え入れてから、今回のような事態を引き起こすに至るまでに、僅か数日しか経過していないのです。これらをまとめると、もともと娘、ミシャと申します。そのミシャが持っていた力が、私の周囲の何かに呼応するかのように、加速度的に発達した。そして、その何かとは、まだ判然としておりませんが、今回の騒動で、昏睡に至った者が口を揃えて言うのが、北の谷に向かったということと、シャクヤクが竜の姿になって、辺りを焼き尽くしたという2点から察するに。竜に何か秘密が隠されているのではないかと考えております。」
俺が今回の件の推論を話し終えると、公爵殿下の奥から、突然、特徴的な耳をした美女が現れ、俺を見据えて言い放った。
「そのシャクヤクという者とミシャについて、もっと詳しく話を聞かせていただこうかしら。」
「し、師匠!?」
「少し見ない間に、随分と様になってきたようですこと。」
「師匠がどうしてここに?」
「あら、ここは私の実家のようなものでしてよ。」
「え?そうなんですか?」
「そんな話はどうでも良いですわ。それよりも、ミシャという少女をどうしたんですの?あと、シャクヤクとは竜ですの?」
「はい、あぁ、えぇと、まず、ミシャについては、今の段階では俺にはどうすることも出来なかったので、とりあえず封印して、先延ばしにすることにしました。」
「ふむ、妥当な判断ですわね。」
「シャクヤクさんは、赤竜だそうです。金竜という竜の子供の赤竜の、さらに子供だそうで、金竜をババ様と呼んでいます。」
「あの時の……。で、金竜はまだ生きていらっしゃいますの?」
「あぁと、確か生きているような話をしていた気がします。」
「でしたら、それを持って竜谷にお行きなさい。シャクヤクの親の方の赤竜か紫竜、もしくは金竜に会えさえすれば、きっと話を聞いてくれるはずですわ。」
俺の腰にある剣を顎で指してシェラが言った。
俺の師匠は、いったいどこまで顔が広いのだろう……。
「え?師匠って、竜とも知り合いなんですか?」
「私ではなくて、かつて私のお姉さまが、懇意にしてらっしゃいましたわ。私は面識がある程度ですけど。ただ、竜とは、実力至上主義のような側面をお持ちでらっしゃいますから、ある程度の力があれば、受け入れてくれるはずですわ。」
「あ、それ、なんかわかる気がします……。 ところで師匠、今までどこに行ってたんですか? まぁ、行先なんて皆目見当もつかなかったので、探してもいませんけど、放置プレイなんだろうなというのは薄々察してましたし……。」
「それだけの力があれば、別に私などいなくても生きて行けるでしょうから、あとはご自分でなんとかなさい。」
「うわ、スペシャル放置フェイズですか……。 わかりました、とりあえずその竜谷というところを目指してみます。」
「目指すも何も、あなたのご自宅から北に15キロも歩けば、もうそこは竜谷でしてよ。」
「え?そうなんですか?じゃあ、後で行ってきます。」
「そうなさい。 で、ナナミ。」
「はい。」
「今回の件、ファーの方でも何かしらのトラブルがあったはずだから、メモリ同期は細目にしておきなさい。」
「パトラム領まででございますか?」
「えぇ、竜が絡んでいるのであれば、そのミシャという子供、ただの子供でもないでしょうに。」
「あ、師匠、ちなみになんですが、シャクヤクさんとミシャは面識ないと思います。初対面の時から、そんな雰囲気は感じられなかったので。」
「でしょうね。ミシャという子供については、十中八九この世界にいて良い存在ではないと考えていますので、逆の立場の竜と面識があるなどとは考えておりませんわ。」
「逆の立場といいますと?」
「この世界の象徴ということですわ。」
「なるほど、よくわかりませんが、わかったふりをしておきます。」
「あなたのそういうところ、意外と嫌いではありませんわ。 では、私は少し行くところがありますので、これで失礼しますわ。ナナミ、くれぐれも、手抜かりのない様にしてくださいね。」
「畏まりました。念のため、全機関との同期をしておきます。」
「その方が良いでしょうね。 いよいよ動き出しそうですわね。冥界の扉……。」
シェラは開け放たれた窓から飛び出すと、空を見上げ、遠い目をして言った。
「 どうするおつもりですの?お姉さま……。」
その後ろ姿は、物語の挿絵に出てくる天使のように美しかった。
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