18.エンチャントメント
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屋敷に戻ると、特に出かける前との変化はなく、4人とも目を覚ます気配はなかった。
ライブラさんによると、迷宮核を使って封印をする場合は、対象物を四方から取り囲む何かがあった方が良いらしく、それなら一部屋丸ごと使っても良いのかなとも思ったが、そうなると、何かと不便だし、よく考えてみれば、ミシャの体の大きさを考えても、一部屋丸ごとはやりすぎのような気がしてきたし、棺というのもなんとなく可哀そうだし、どうしようか悩んでいたのだが、商店街で果物なんかを入れている箱、あれならサイズ的にも雰囲気的にも、死んだ人が入っているというよりは、子供が遊びでかくれんぼしてる感が出て良いのではと思い、街にもらいに行くことにした。
ついでだし、ギルドで依頼の品を納品してこようか、などと考えながら、屋敷を出て街に向かっていると、なんとも言えない違和感を感じた。
時間にしてみると、ちょうど午後の3時くらいだろうか、夕飯の買い出しで賑わっている時間帯のはずの街なので、本来なら喧騒に包まれていてもおかしくない頃合いだというのに、まったくもって静か。
街の防衛を担う門衛の兵士が倒れている。
半開きになった門の先の、街のメインストリートにつながる道にも疎らに人が倒れている。
ライブラさん、これって……。
[告:ミシャの精神干渉の暴走による影響と推察します。]
早くミシャを封印しないと、街の人全員の命に係わるってことか……。
一日の猶予もないってことだな、人によっては、数時間で褥瘡や脱水、感染症のおそれもあるだろうな。
マズいぞ、急がなければ、あ!アリサさんは。
俺は急いでギルドに行くと、そこでも数人の冒険者が床に倒れて眠っているように見えた。
受付カウンターの中には誰も見えない、が、誰もいないわけではないだろう。
カウンターの奥で倒れているに違いない。
って、嘘だろ!?
あ、いや、アリサさんは無事に倒れていてくれたが、別の女の子が血まみれになって倒れている……。
俺はアリサさんを床に仰向きに寝かせると、血まみれの女の子の治療に入った。
ライブラさんに、内臓を透過した画像を撮影してもらい、損傷個所を確認したが、どうやら、頭部をどこかに打ち付けた際に出来た、裂創からの出血のみで、出血量もそれほど深刻なものではなさそうだったので、ヒールをかけて仰向けに寝かせるにとどめた。
念のため、アリサさんも透過画像を撮影してもらったが、内部で出血を伴うようなけがをしてはいなかったようで、安心することが出来た。
俺は急いで商店街に行き、3個で2ミルと書いてあるリンゴを木箱ごともらい、代金は多少多めに50ミルほど置いてきた。
しかし、このリンゴ、3個で2ミルと書いてあるのに、箱の中に残ったリンゴの数が16個というのが何とも言い難い気分になるが、今はそんなことはどうでも良いので気にしないことにする。
俺は屋敷に戻るとすぐに、ミシャを木箱の中に体育座りをする様に座らせて、と思ったが、木箱の表面が、全く処理されていないので、このままでは、封印を解いた時に、木箱のササクレで怪我をしてしまうかもしれないと思い、時間はかかるが、木箱の内側だけでも表面処理をし、体が当たる部分なので、クッションと毛布を敷いてやり、出来たと思ったが、今度は表面の汚れや節穴が気になり、そちらも、クリエイトで段差がない様に綺麗に整え、どうせならとエングレービング風に装飾し、だったら塗装もだよなと、木目を生かしてオーク調に塗装した後に、ニスを塗って、魔法で強制乾燥させた後、魔法による研磨を施してやっと完成となったが、これなら最初からクリエイトで作った方が、断然早かったのではないかと、自己嫌悪に陥ってしまった……。
とりあえず箱は出来たので、中にミシャを入れてみたが、今度は箱を床に直置きというのが気になったので、台座を作ったが、今度はちゃんとクリエイトで作成した。
台座は大理石とかで出来てた方がかっこいいかなと思ったが、絶対重さで床が抜けるとも思ったので、ほぼ中空の木製の台座を作り、表面に大理石風シートを張ったような感じの、極薄大理石を作って貼り付けた。
ミシャの部屋の隅に台座と箱を設置し、そこにミシャを寝かせると、俺は迷宮核を使った。
ライブラさんによると、ダンジョンを作る時は、周囲の魔物の魔素を吸収してダンジョンを作るらしいのだが、ダンジョン作成と封印とで何が違うかというと、呪文というか掛け声というか、発する言葉によって、何をするかが変わるらしい。
ダンジョンを作る場合はクリエイトダンジョンで、封印をする時はエンチャントメントだそうだ。
ちなみに封印を解除したい場合は、封印者が、迷宮核に手を置いて、魔力を流し込みながらリヴェレーションと唱えるらしい。
俺はミシャに迷宮核をかざしながら、呪文を唱えた。
「エンチャントメント」
すると、ミシャを入れた木箱が青白い光を放ち、ミシャごと箱の中をクリスタルのような鉱物が埋め尽くした。
見たままを言葉にするなら、ミシャを入れた木箱がクリスタルで埋め尽くされ、その中にミシャが横たわっていて、クリスタルの表面に迷宮核が張り付いていると言った感じだ。
俺は、封印が完了したとたん、立っていられずに、その場に膝をついてしまった。
俺の魔力が相当量使われたようで、体感では半分以上の魔力を一気に吸い取られた感覚を覚えたのだった。
俺はふらつきながらも、リースとレイアが眠っている部屋に向かった。
シャクヤクさんは、まぁ、大丈夫でしょう。
二人が眠る部屋に入ると、二人ともまだ眠っているようだったが、声をかけて二人を揺すっていると、リースが先に目覚め、続いてレイアも目を覚ました。
二人に何か体の異常はないかと尋ねると、二人とも問題ない様子だったが、どうも口調に違和感があったので、会話を続けてみると。
「何やら夢を見ていたような気がするの。ワシとレイア、それ以外にも大勢の人間が、北にある谷を目指して歩いている夢じゃったな。シャクヤクが必死になってそれを止めようともしていたの。それでも歩みを止めようとしないものじゃから、シャクヤクは怒りのあまり竜の姿になって、灼熱の炎を吐き散らしていたが、皆もワシも、体を焼かれながらも谷を目指して歩き続けておったの……。」
「ワシも同じ夢を見たぞ。周囲の人間や、自分達の行動に気味の悪さを感じながらも、歩みを止められぬことに、恐れを感じたが、それと同時に歩かねばならぬという義務感のようなものも感じたんじゃ。」
「うん、なるほど、完全に口調がミシャになってるね。二人とも、ミシャに浸食されまくっちゃってるね……。」
「そういえば、そのミシャとシャクヤクはどうしたんじゃ。」
「今回の騒動の原因は、どうやらミシャの無差別精神干渉らしく、ミシャが持ってる固有の特殊なスキルが、暴走状態になったのが原因らしくてね。ミシャを殺すか脳を切り離すか、もしくは封印するかしか方法がなかったので、とりあえず封印して時間を作り、解決策を探していくことにしたんだよ。」
「「そうじゃったか……。」」
「で、シャクヤクは?」
「あぁ、シャクヤクさんは、放っておいても勝手に起きると思ったから、放置してるよ、どうせそろそろ腹が減ったと言って起きてくるだろうし。」
と、俺が言ったとたんに、部屋の外からシャクヤクさんの声が聞こえてきた。
「フィ~~ン、ど~こじゃ~~?腹が減ったぞぉ~~!め~~~~しぃ~~~~~!!!」
「ほらねw」
「「www」」
「そうだ、この精神干渉、街の方にも影響していたんだった。俺、街の様子を見に行ってくるから、リースはシャクヤクさんに何か食べさせておいてくれないか。ミシャの部屋にリンゴが沢山あるから、それでも食べさせておいて。」
「わかった。」
俺は、それじゃと言い残すと、そのまま転移魔法で街のギルドに飛んだ。
ギルドの中にいた数人の冒険者達は既に起きて、どこかに移動したらしく、ギルド内には怪我をした女の子とアリサさんだけだった。
「アリサさん大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫じゃ。」
「アリサさんもか……。そちらのあなたは、どこか痛むところはありませんか?」
「痛みはないんじゃが、服が血まみれで……。」
「あぁ、そこまでは……。あなたは意識を失った際に、どこかに頭を打ち付けたようで、血まみれになっていたんですが、傷は治して回復させておいたので大丈夫だと思います。ただ、服は申し訳ないですが、ご自分で着替えてください。」
「そんなことになっておったのか……。」
「しかし、あの夢はなんじゃったんだろうかの。」
「北の谷に向かうヤツですか?」
「そうじゃ、そうじゃ、お前さんなんでそれを。」
「今まで倒れてた人は、全員同じ夢を見ていたようですからね。そうだ、アリサさん、ガーランドさんはいますか?」
「あぁ、奥の支部長室におったと思うが……。」
「わかりました、ありがとうございます。ちょっとおじゃましますね。」
俺は、ガーランドの部屋に入ると、今回の件について、ことの顛末を話すことにした。
「そうか、そういうことじゃったか。」
「ちなみに、今、精神干渉を受けたおそらく全員がミシャ口調になってるのは、時間の経過で治るらしいです。」
「となると、ミシャがスキルを暴走させた原因と、その対処についてをどうするかという話になるが、検討はついとるのか?」
「いえ、まったく。なので、今後手がかりを探すつもりです。皆が見た夢に何か手がかりがあるのかもしれないとは思っているので、まずは、その線から当たってみようかと思っています。」
「なるほどな、今回の件、何かと謎が多いという点と、影響が多き過ぎるという点からも、ギルドとしても放ってはおけんからの。正式に依頼として処理してやる。あと、領主様への報告もせんとならんじゃろうの。」
「わかりました。領主様への報告って、俺必要ですか?」
「あたりまえじゃ!」
こうして俺はムーシルトの領主に会う羽目になってしまった……。
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