11.魔法+ミノタウロス=マノタウロス
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俺達が魔物のいる場所へ到着すると、そこには自分の得物に二人の男女の冒険者を串刺しにして、雄たけびを上げながら、上下に振り回しているミノタウロスがいた。
ミノタウロスは、俺達に気が付くと、得物に刺した人間を無造作に捨てると、こちらを見て即座に戦闘態勢をとる。
よほど人間を狩るのが好きな魔物なのだろう。
俺は周囲を見渡し、生存者を探すが、どれも厳しそうな遺体ばかりだったが、まだ可能性はあるので、シャクヤクさんにミノタウロスの相手を頼んだ。
「シャクヤクさん、俺は生存者がいるなら回復させたいので、ちょっと距離をとって戦ってくれますか?」
「ふむ、わらわにかかればあのような牛もどき、瞬殺で仕留められるのじゃが、まぁ、其方が治療をしたいと言うのであれば仕方がない、まわりでバタついてても気が散ろう。まずは遠くに蹴り飛ばし、それから遊んでやるとするか。」
「そうしてもらえると非常に助かるので、なるべく遠くでお願いします。」
「あいわかった!」
そう言うが早いか、シャクヤクさんは、一足飛びにミノタウロスの間合いに入り、ドロップキックのようにして、ミノタウロスを蹴り飛ばした。
俺は、今のうちにと、周囲の遺体を、一度次元収納に入れることにした。
次元収納に入ってしまえば、その遺体は生き返ることはないだろうが、入らないのであれば、まだ息があるということだ。
すると、俺の読み通り、次元収納に収まらなかった遺体が4体あった。
俺は、それらの遺体にエクストラヒールをかけ、続けてクリエイトで血液を輸血した。
4人は皆息を吹き返したが、一人の女性冒険者が、事態を把握できていないようで、若干呆けているような表情を見せる。
俺は、その冒険者が気になったので、声をかけてみたが、その冒険者は「あー」とか「うー」とか、言語を発することが出来ない様子だった。
「ちっ、やっぱりか……。」
俺がこの魔法をライブラさんから聞いた時、実は一つの懸念点があったのだ。
臓器を含めて、どのような欠損部位も再生出来るとは聞いていたが、その欠損部位が、脳だった場合、記憶までも再生することが可能なのかと。
どうやら答えは「否」だったらしい……。
しかも、病的な問題でもないので、一過性ということではなく、全ての記憶がリセットされている状態と考えるのが妥当だろう。
しかし、この場に留まっていては、再び危険に晒される可能性は高い。
「お前ら、すぐこの場から逃げろ、この女の子は、記憶がないから、お前たちで守ってやれ。すぐにハーコッテに戻るんだ。残念ながら再生出来ずに亡くなった冒険者の遺体は、後で俺が持ち帰る。お前らはとにかく街に戻って、支部長に事の顛末を報告しろ。あのデカブツは俺達にまかせるんだ。行けっ!」
俺は生き返った4人にそう声をかけると、シャクヤクさんが向かった方向へと向かった。
シャクヤクさんのところにたどりつくと、予想に反して、シャクヤクさんは大いに苦戦していた。
竜の姿にまでなって戦っているのに、魔法が使えるミノタウロスは、二股の槍に氷属性を付与して戦っているようで、シャクヤクさんは、その氷属性に大いに手こずっているようだった。
「シャクヤクさん、負けそう?」
「負けるわけなかろうが、この牛頭が、生意気にも氷を纏わせてくるものじゃから、少々難儀していただけじゃ。」
「俺手伝った方が良い?」
「手助けなど不要じゃが、其方がどうしても手伝いたいというなら、手伝っても構わぬぞえ。」
「いや、別にどうしても手伝いたいわけではないので、俺は黙って見学してましょうかね。」
「其方もパーティーなんじゃから、仕事せんか!」
「はいはい、わかりましたよ。ほんとにもう、そんなのに手こずっちゃって。動きが早いなら動かさなきゃいいじゃないですか。」
俺は魔法が使えるミノタウロス、あぁ、面倒くさいから、マノタウロスと呼ぶことにする。
俺はマノタウロスの足元を水属性と土属性の混合魔法で泥沼にし、さらにその泥沼を氷魔法で急速冷凍した。
マノタウロスは膝まで泥沼に埋まった状態で、凍らされたことで、行動が完全に制限されたのにもかかわらず、無理に動こうとしたので、足元の氷が割れて、足を失った状態になったが、流石は魔物というべきか、足が無いのに、それでも俺の方に進もうとして、うつ伏せの状態で腕だけで進もうとしているところへ、シャクヤクさんが好機とばかりに、マノタウロスの背中を自身のツメで一突きし、とどめをさしたのだった。
マノタウロスは絶命すると、黒い霧となって霧散し、地面には、不思議な色の魔石が転がっていた。
俺はその魔石を拾い上げて、よく観察してみたが、その効果や属性についてはまったくわからなかった。
ライブラさんに聞いてみても、ライブラさんも初めて見る魔石で、効果については検証してみないとわからないと言っていたので、逆にライブラさんにもわからないことがあって、若干嬉しくなった。
俺達は、軽く周囲を捜索して、取り残された遺体や遺留品が無いかを確認した後、転移でハーコッテの街に戻った。
ギルドに戻ると、最初に逃がした女性冒険者がギルドの支部長と話をしているところだった。
後から逃がした4人はまだ街には到着していないらしい。
俺は支部長の所に行くと、マノタウロスからドロップした魔石を見せて、他に生存者が4人いて、全員この街に向かっているはずだということと、そのうちの一人は、回復はさせたが、脳に損傷があったため、記憶を失っている状態で、回復する見込みがないことも伝えた。
俺は、ひとまず危機は去ったことを伝えると、街を出て再び森に向かった。
他に3人の生存者がいるので、大丈夫だとは思うが、せっかく助けた生存者に何かあっても嫌なので、迎えに行くことにしたのだ。
道すがら、俺たちは雑談をしながら生存者を探した。
「シャクヤクさん、さっきのマノタウロスに、いい様にやられてましたね。」
「あれはやられていたのではない、其方が来る前に倒してしまっても面白くないだろうから、ちぃとばかし遊んでやっていただけじゃ。」
「そうなんですか?じゃあそういうことにしておいてあげます。」
「ふん。 しかし、其方の戦い方は、面白かったの。 普通、魔法使いというヤツは、とにかくでかい魔法を打ちたがるものだとばかり思っておったのじゃが、地面をぬかるみにして、取られた足をそのまま凍らせるなど、よく思いついたの。」
「あぁ、あれは、俺が昔住んでいたところで、流行っていた物語の主人公が、ああいう戦い方をする魔法使いで、俺もその物語が大好きでよく読んでいたから、思いついたんだよ。」
「そうなのか。なかなか為になる話があるんじゃの。」
「う~ん、為になるかどうかはわからないけど、でも、そんな物語が大好きで、色々とよんだよ。例えば、主人公がスライムだったり、とにかく爆炎魔法を打ちたがるやつがいる話だったり、二本のナイフを極めて、どんどん強くなる主人公の物語だったりね。」
「そうか、其方はそれらを読んで強くなったのじゃな。」
「まぁ、読んだから強くなれるってわけでもないだろうけど、でも参考にはなるし、なにより、そんな物語が大好きだったんだと思うよ。憧れかな。」
「今度わらわにもその物語とやらを聞かせるがよい。」
「わかった。でも、シャクヤクさん、ご飯食べる時以外は殆ど寝てるじゃん。」
「ほとんどとは失敬な。起きてることもあるのじゃ。」
「そんなレアケースの話を……。 あ、いた!」
俺は、治療した生存者が無事に帰ってくるのが見えたので、彼らに合流し、安全策をとって、全員転移で街にもどることにしたのだった。
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