10.エクストラヒールにクリエイトを少々
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ギルドに現れた血まみれの男は、息も絶え絶えで、最後の力を振り絞ってここまで来たようで、支部長を呼んだはいいが、状況の説明が出来るような状態ではなさそうだった。
数名の職員が駆け寄り、備蓄の回復薬を飲ませたが、腹部の傷がひどく、おそらく内臓を損傷しているようで、回復薬では埒が明かないらしく、治癒師を呼べだの、間に合わないだの、とても混乱した状態に見えた。
「あのぉ……。 俺が治しましょうか?」
ギルド職員の一人が、君はヒーラーかと尋ねるので、違うと答えると、今は冗談を言ってる場合じゃないだろと、すごい剣幕で怒られたが、集まっていたヤジ馬に、治しても問題ないかを尋ねると、出来たらやってるだろと、キレ気味に言われたので、俺は瀕死の男の前に歩み出て、エクストラヒールをかけた。
ヒールにも、何段階かのレベルがあって、回復薬や低級のヒールで治せるのは、せいぜい切り傷くらいだが、内臓などの損傷がある場合だと、ヒールの他にも細胞から欠損箇所を再生する魔法や、感染症などの合併症状を抑える魔法など、いくつかの魔法を組み合わせた魔法を唱える必要があるらしく、それが出来る人間は、かなり重宝されるらしく、治療院などで、かなりの高額な報酬を貰っているらしい、という話を以前ライブラさんから聞いたことがあったので、俺にも使えるかと尋ねたところ、使えるとの回答を得ていたので、やったことはなかったが、俺はぶっつけ本番でかけてみたのだった。
でだ、この血まみれだった人は、損傷個所は回復というか再生した。
しかし、普通はこのまま亡くなるのがセオリーらしく、それがなぜかというと、この人の損傷した臓器や筋肉、皮膚については再生出来ているが、失ってしまった血が足りていない状態なので、身体は回復してても、所謂失血性ショック状態に陥り、そのまま死亡するということらしい。
なので、俺はそれをなんと、“クリエイト”でカバーするという方法を思いついたのだ。
というと、なんか俺、凄い人に見えてこないですか?
まぁ、タネを明かすと、確かに閃いたのは俺ですよ、でもね、ライブラさんの補助があっての話なんだけどね。
ようは、以前に確認していたのですよ、クリエイトで作れる物は無機物に限られるのかと。
不思議だったんですよね、材質が木の物って、有機物じゃないですか。
であれば、血とか内臓だって有機物なわけだから、作れるんじゃね?と考えて、確認した結果、作れるよと言われたので、じゃあこの人の出血した血をライブラさんに分析してもらって、型を確認したら、後はもう、作るだけですよ。
この人に必要な血液の量についても、ライブラさんの分析にかかればちょちょいのちょいというわけです。
つまり、俺の回復系統の魔法にかかれば、細胞が死滅してさえいなければ、一般的には死亡として扱われそうなご遺体でも、生き返っちゃうんですよ。
これ凄くないですか?これだけで俺飯くっていけるんじゃないかと思うんですけどね。
というわけで、色々な事態を想定して組み上げられた“エクストラヒール”という、いわば究極の回復魔法プラス俺のクリエイトで、この瀕死の人は助かったどころか、たぶんムクっと起き上がって、何事もなかったかのように、ギルド支部長に伝えたいことを伝えられることでしょう。
と、考えてる傍から“元瀕死だった人”が起き上がり、多少の驚きはあったようだけど、自分が生き残ったことなど些末な事とでも言わんばかりに、ギルド支部長に事の顛末を話し始めた。(ちなみに、さっき俺が怒られた人が、ギルドの支部長だったらしい。)
元瀕死だった人の話によれば、Aランクパーティー指定のオーガ討伐依頼に参加していた際に、突如として、オーガよりも一回りも大きい、頭部が牛の顔をした魔物が現れ、パーティーが全滅したらしいのだが、その所謂ミノタウロスは、ただのミノタウロスではなく、魔法で身体強化をし、更に、持っていた武器に属性を纏わせて攻撃してきたという話だった。
ギルド支部長をはじめ、職員も周りの冒険者も、そんな魔物は聞いたことが無いと、対策に窮しているようだった。
さらに、間の悪い事に、現在Sランクのパーティーはどこも出払っていて、直ちに対処できる者がいないと、頭を抱えていたので、俺は再度歩み出た。
「あの~。 その魔物、ギルド依頼になるのでしょうか?」
「もちろんだ、だが、Sランクの冒険者は今は一人もこの街にいないんだ……。」
「俺、まだ冒険者証が出来上がってないので、Aランクのままですが、もうじきSになる予定なので、俺が倒してきてもいいですか?俺ともう一人Aランクの冒険者が行きますが、その人も、竜なみに強いので、大丈夫だと思います。」
「たった二人で大丈夫か?だいたい君はヒーラーなんだろ?」
「だから、違うって言ってるじゃないですか。俺はヒーラーじゃなくて、魔法使いです。今、もう一人のメンバーを連れてくるので、少し待っててください。その間に依頼書の準備でもお願いします。あ、あと、その回復した人に、どの辺りか聞いておいてくださいね。では。」
といって、俺は転移で自宅に戻ると、シャクヤクさんを起こして事情を説明した。
最初シャクヤクさんは、牛風情がわらわと戦うなど100年早いとかなんとか言って、駄々をこねていたが、ご飯を沢山食べられると言ったら、二つ返事で了承してくれた。
シャクヤクさんは、寝ている時も、起きて活動(主に食事)する時も、いつも同じ格好をしているので、着替えは必要ない。
ていうか、常にちょっと地味目の女子プロレスラーのコスチュームみたいな恰好なので、寝るにも、食べるにも困りはしないのだと思うが、そのコスチュームを着替えているところや、洗濯しているところなどは見たことが無いので、多分臭いと思う。
「痛っ!」
なぜか、シャクヤクさんが俺の後頭部を拳骨で殴った……。
ということで、俺達は、初のパーティーとしての討伐依頼を受けることになったのだった。
再度、転移でハーコッテのギルドに戻ると、皆がなぜか、転移で現れた俺達の方を凝視していた。
ギルド支部長が、驚いた表情を隠そうともせず、俺達に近づいてきて、言った。
「今、まさか転移を使ったのか?魔法の?」
「えぇ、そうですが。」
「他にどんな魔法を使えるんだ?」
「言ってくれれば、大体の魔法は使えると思いますけど。」
「属性に関係なくってことか?」
「えぇ、まあ。」
「君、ちょっとこっちに来てくれ!」
俺は、ギルドの支部長に呼ばれて受付カウンターに行くと、登録の時のようにステータスの確認をされた。
俺のステータスを見た支部長は、さらに驚いた様子で、しかし、決意を固めたような表情で言った。
「君なら何とかしてくれるかもしれない、さっきはすまなかった。普通はヒーラーでもない限り、あの状態の人間を回復させることなど出来ないからな。」
と言うと、俺に依頼書を渡して頼むと一言だけ言った。
俺達は、大凡の場所を確認すると、そのままハーコッテから出て、東のカーミオ大森林へと向かった。
ライブラさんがナビゲートしてくれたおかげで、迷わず進むことが出来たが、途中で何体かの冒険者の遺体を発見した。
おそらく逃げようとして、途中で力尽きたのだろうが、既に細胞も死滅していたので、回復することが出来なかった遺体を回収し、次元収納に入れる。
次元収納は、生命体を収納することはできないが、遺体なら問題なく収納することが出来たので、損傷している箇所を修復し、血や泥で汚れた体も綺麗にしたうえで、クリエイトで白い布を作り、身体に巻いてやった。
シャクヤクさんは終始不思議そうな顔をしていたが、人間は死ぬとその死を悼む文化があるのだと教えてやると、竜は骨になるか魔素にやられてゾンビになるかの二択だと言うので、頼むからゾンビにはしないように対処してほしいと伝えた。
その後も俺達は、遺体を回収しながら進んで行くと、遠くで獣の咆哮のような声や、何かが激突したり破裂したような音が聞こえてきたので、そろそろ近いなと思って進むと、前方で、何かが木々をへし折りながら飛来して来たので、確認すると、そこには元は女性だったであろう遺体があった。
遺体の状況は非常に惨たらしいもので、足は骨が見えているもなんとか繋がっていたが、左の肩から先は抉れて無くなっており、残った手足もあらぬ方向を向いているという状態だったが、俺が確認した瞬間に口から血を吐き出したのだった。
俺は即座にエクストラヒールとクリエイトをかけると、その女性は息を吹き返した。
「え?私死んだんじゃ……。」
「俺が回復魔法で治したから、傷はもちろん、ダメージも残ってないはずだよ。」
「え?でも、左腕はあのバケモノに食いちぎられて……。 ある、左腕が……。」
「左腕は再生させた、内臓の損傷も治しておいた。足りない血は作ったから、大丈夫なはずだ、ここは危ないだろうから、先に街に戻れ。一人で戻れるな?」
「はい、大丈夫です。」
「君が飛ばされてきた方向に魔物はいるんだよな?」
「はい、アイツは、あのバケモノは凄く強いのに、さらに身体強化をかけて、目で追えないくらいの速さで突進してきて、属性を纏わせた二本槍で攻撃してきます。しかも、それぞれが苦手な属性を理解しているみたいに……。 あのバケモノは強いだけじゃなくて、知能も高い恐ろしい魔物です。」
「わかった、情報ありがとう。でも、心配するな、君は逃げるんだ。俺達二人は多分そのバケモノよりも、ずっと強い。あ、そうそう、他に生存者はいるか?」
「ハルイとケリーがまだ生きてるはず、タンクと魔法使いです、お願いします、仲間を助けて。」
「わかった、まだ生きているなら、必ず無事に連れ帰るよ。来る途中で見つけた遺体も、終わったら街に届けるから、急いで逃げろ。魔物がでてもかまわず逃げるんだ。」
「わかりました。二人をお願いします。」
俺達が、彼女が飛ばされてきた先へ進もうとした、その瞬間、森の奥で、物凄い爆音が鳴り響き、周囲の鳥達が、一斉に飛び立った。
逃がした女冒険者に、ああは言ったものの、このレベルの魔法を使う魔物だとすると、少々面倒なことになりそうだと思った。
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