1.転生
数ある作品の中から、私の作品を見つけてくださり、ありがとうございます。
読んでいただける方に楽しんでもらえるよう精一杯頑張りますので、今後ともよろしくお願いします。
前作は今回の作品のエピソード0的な位置づけで書きましたが、今作からいよいよ本編がスタートということになります。
初めてご覧になる方も、前作をお読みいただいてる方も、楽しんでいただけるような作品にしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
-聖典-パトラム福音書
第一章
遠い昔、この世に神が舞い降りた
神は人の世の闇を照らした
神は愚かなる者を導き、正しき者を称えたもうた
神はこの世に巣くう邪なる者に神罰を与えたもうた
この世を慈しみ深き愛で包み、やがて神は天に帰りたもうた
………………………
「次の方どうぞ。」
「あの、ここはいったい何なんですか?」
「そうですよね、大変混乱なさっていると思います。まず、あなたは残念ながら亡くなってしまいました。ですので、これから魂のクリーニングをして、来世に転生することになります。ご質問のお答えですが、ここは天界の一般死亡者受付カウンターです。こちらに手を置いていただけますか。この聖晶の変色具合によってあなたの魂クリーニングコースが決まりますので。」
「はぁ、俺やっぱり死んだんだ……。」
俺はつい先日30歳の誕生日を迎えたばかりの、しがないサラリーマンだ。
あまり社交的な性格とは言えず、当然コミュニケーション能力だって高くはないので、営業は苦痛でしかなかった。
だが、今年の春から、念願かなってというか、見切りをつけられてという方が正しいとは思うが、営業から総務部に配置換えとなり、やっと会社に行くのも悪くないと思えた矢先ではあるが、道端で、車に轢かれそうになっている子供を見たら、考えるより先に体が動いていた。
まぁ、普通車に轢かれたら死ぬよな。
あの子供助かったんだろうか……。
「まぁ、仕方がないか。あ、ここですね。」
「はい、そうです。……え?故障した?え?」
「え?」
「噓でしょ……。ちょっとこっちに来てください!」
受付のお姉さんが慌てた顔で俺の手を引いた。
しかし、カウンターには、しっかりと[ただいま席を外しております、別のカウンターをご利用ください。]と書かれた立札を出していくのを忘れていない辺り、仕事の出来る受付のお姉さんなんだろう、ていうか、たぶんあれが天使ってやつなのかもな、羽生えてるし……。
俺の手を引くお姉さんがたぶん何かをしたのだろう。
俺の視界が一瞬ぶれたように感じたが、元居た場所も、今来た場所も、全部白いので、その違いがよくわからない。
すると、突然目の前に絶世の美女が現れた。
「神様、こちらの方です。」
「そう、この人が……。」
何かを連絡しているそぶりは見えなかったが、でも天使なり神様なりのやることなので、俺にはわからないうちに何らかの方法で情報は伝わっているのだろう。
神様と呼ばれた絶世の美女は、俺を値踏みするように見ている。
最初は頭から足元、そして背後に回ってさらにじっくりと。
「わかりました。では、あなた、へぇ、晶っていうのね。熊谷 晶。あなたは魂のクリーニングが必要ないようね。私が神様始めてから、こんなのあなたが初めてよ。あなたはそのまま、今ある記憶を持ったまま転生することを認めます。さらに、あなたの願いを一つだけ叶えましょう。ただし、私が与えても良いと認めた願いに限るけれど。好きな願いを言ってごらんなさい。」
神様って始めるものなんだな……。
って、考えるのそこじゃないか……。
「いきなりそんなこと言われても……。 あっ!そうだ、それじゃあ、一年に一度だけ、どんな願いも叶えてくれる、魔法の指輪的な物ってもらえたりしますか?しかも、使えるのは俺限定の。」
「ふふっ、あはははははっ、そう、そうよね。良いわ、その願い叶えてあげましょう。 これからあなたが向かう世界は、あなたの知っている世界ではありません。そうね、ゲームやアニメ、ラノベの世界感とでも言えばわかりやすいかしら。 剣と魔法のファンタジー世界よ、そこであなたは第二の人生を、今までの記憶と共に生きていくのよ。」
「神様もラノベやアニメなんて知ってるんですね。」
「うふふふ。 あなたはとある街の商家の長男、名前はフィン、両親との旅先で魔物に襲われ、両親を失った。でも、命からがら逃げおおせ、一人で街に戻る途中の森からのスタートよ。これまでの記憶も、ちゃんとわかるようにしておいてあげる。もちろん言語もね。年齢は16歳、性別は、どっちが良い?」
「このままでいいです。」
転生するにも設定は細かいんだな、もうちょっとおおざっぱなのかと思ってた。
それにしても、急に若い女の子とかにされても、色々と困るだろ、普通……。
「まぁ、そうよね、その気持ちはわかるわ。わかった、それでは、良き第二の人生を。幸運を祈るわ。あ、それともう一つ、これはサービスよ、第二の人生が始まったら、ライブラと言ってみなさい。きっとあなたの力になるわ。」
俺の視界は急に暗転した。
と、思ったら、突然辺り一面緑の世界。
木々の間からのぞく太陽の光がこんなに美しいと感じたのはいつ以来だろう。
「森だ、電線が無い、日本の山って、山の中にまで電線があって、なんとなく興ざめするんだよな……。しかし、ここはとことん森だな。でっかい虫とかいたら嫌だな……。」
辺りを注意深く探りながら、俺はゆっくりと進んだ。
途中で折れた木の枝を拾い、用心深く進んでゆく。
気を抜いたら一瞬でからめとられる、ヤツはそういう存在だ……。
「来るなら来い、蜘蛛の巣!」
いや、今蜘蛛の巣かよって思った人、挙手!
あれほど害はなくとも不快感はマックスな物体はないでしょ。
なめちゃいけませんよ、蜘蛛の巣を!
「あ、ちゃんと服着てる。俺の顔、どんな顔なんだろう。街にもどる途中って言ってたけど、どっちが街なんだ?いや、待て待て、それよりもまず、剣と魔法のファンタジー世界って言ってたよ、あの神様。ということは、当然魔物とか出て来たりするんだろ。ていうか、俺の両親魔物に襲われて死んだ設定になってるんだし、出るだろきっと。やばいな、どうしよう……。 そういえば、あの神様ライブラって言えば助かる的なことも言ってたな。 ライブラ!」
[告:ご用件をどうぞ。]
「うわっ!何コレ?」
[回:対話型鑑定解析スキルです。]
「あぁ、そうなんだ……。で、なんで頭の中で声だけが聞こえるのか、教えてもらっても良い?」
[回:仕様です。]
「そうなんだ……。で、君は何をしてくれるの?」
[回:マスターのご要望に応じて、あらゆる情報の提供が可能です。
詳しい使用方法をご希望の場合は、ライブラ使用マニュアルの参照を推奨します。]
「そのマニュアルはどこにあるの?」
[回:マニュアルオープンと発声若しくはイメージすることで、マスターにのみ見える仮想エアリアルモニターが起動し、マニュアルが表示されます。操作は起動時同様、発声若しくはイメージで操作可能です。
他にもマップ機能や、あらゆる情報のストレージとしても活用することが可能です。]
「すげぇな……。 あ、今マップって言った?マップ見たい!」
[告:仮想エアリアルモニターを起動します。
続いて周辺のマップを投影します。]
「おぉ!すげぇ‼マップが見えるし、透過率低めだから周囲の状況も確認出来るし、太陽でまぶしいくらいなのに、ちゃんと画像が見える!高性能だ!!!」
「よし!わかったぞ、街はあっちだな。」
俺はマップを読み解き、進むべき方向を確認して、歩き出した。
[告:街は逆方向です。]
「おふ……。」
俺は対人スキルも低めだが、自慢じゃないが空間認知能力もめっぽう低かったんだった。
「 あのさ、悪いんだけど、ナビゲートしてもらえたりする?」
[告:了解しました。街へのナビゲートを開始します。
体の向きを反転させてください。
歩行を開始してください。
このペースでの歩行では、街への到着予想時間は約40分後と推察します。]
「あのさ、この森って魔物とかでたりするの?」
[回:この森には概ね200種類の魔物の存在が確認されています。]
「うぅわぁ……。それじゃあさ、俺の今のステータス的なものってわかったりする?」
[告;ステータスを表示しますか?]
「おぉ!出来るんだ!ステータス見せて!!!」
[回:種族:人族(♂)
個体名:フィン
レベル:7
年齢:16
HP:77
MP:52
攻撃力:35
守備力:22
すばやさ:68
賢さ:85
運:15
スキル:制限付き全能 鑑定
称号:なし]
「おぉ、ねぇライブラ、この数値ってどんな感じ?」
[回;同年代の人族の平均的数値をやや下回っています。
この数値で倒せる魔物は存在しません。]
「マジか……。」
「仕方ない、いきなりだけど、今後の事も考えて、ここで使ってみるか。この指輪を!」
俺は指はを掲げて願いを念じた。
『魔法を、最強の魔法を使える魔法使いにしてください!』
うん、きっと、マンガとかアニメなら、確実に「しーん…………。」って感じだろうな。
「おかしいな……。」
[告:事象変化を生ずる全能スキルを使用する場合、ファクトチェンジと発声若しくは念じる必要があると推察します。]
「え!そうだったんだ。あの神様いじわるだな、そうならそうと教えてくれてもいいのに……。」
一通り神様への悪態をついたところで、俺は気を取り直して願い事を声に出した。
「よし、それじゃあ改めて、最強の魔法を使える魔法使いにしてください!ファクトチェンジ!!!」
俺が願い事を口にすると、左手につけていた指輪がほんのりと暖かくなった気がしたので、左手に視線を落とすと、指輪の中央に嵌っている赤い宝石がまばゆい光を放っているた。
「お?おぉ?何コレ!?」
[告:ファクトチェンジの発動を確認しました。
マスターの願いの現実化を確認しました。
ステータスの確認をしますか?]
「するする!」
すると、突然目の前に絶世の美女(二人目)が現れた。
彼女はその美しい顔をゆがめて、俺を睨みつけたまま、何かを叫んだと思ったら。
『なんか、胸の辺りが熱い?
え?何が起きた?
痛い?
あれ……。』
先ほどとは違い、憎しみというよりは、驚愕といった感じの表情を見せる絶世の美女。
その耳が長いことに気が付いた。
エルフってやつなのかな……。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
感謝の言葉しかありません。
よければ次のお話も読んでいただけるとありがたいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
もしよろしければでかまわないのですが、この作品を気に入っていただけたなら、評価をしていただけると幸いです。