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レベル1の俺が死んだらレベル999の最強チート美少女も死ぬらしい~異世界スローライフしたい俺と、帰りたい彼女の命がけバディ生活~  作者: 古池ケロ太
第1章

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第26話 ギルド長の微笑み(優)

 そのとき、鉄格子の外の廊下から、騒がしい声が聞こえてきた。


「……っ、なんだ、き……ら……!」

「侵入……応援をっ………!」


 声はやがてこちらに近づいてきて、金属のぶつかるような音も混じり出した。

 そして、


「クリムゾン・スクィーズ!」


 ドォン!

 と、派手な爆発音がして、廊下で何人かが「ほぎゃー!」とか叫んで吹き飛んでいった。

 さっきの看守っぽい人たちだった、ような気がする。

 

 顔を向けると、廊下の角からとんがり帽子の女の子が駆け込んできた。


「見つけた! ジュン!」

「ロキシィ………」


 続けて、銀甲冑の騎士・アイギスさんと、ローブ姿の男の人・ヤンさんが姿を現す。


「主君! よくぞご無事で!」

「待ってください。今そこを開けますので」


 ヤンさんが、倒れた看守から鍵を回収して、手際よく錠前に差し込む。

 鉄格子が軋む音を立てて開くと、三人が一斉に駆け寄ってきた。


「みんな、何しにここへ………?」

「ハァ? 寝ボケてんの!? ジュンを助けに来たに決まってるでしょーが! ここまで来んのにどんだけ苦労したと思ってんのよ!」

「このアイギスも獅子奮迅の活躍でしたぞ! 迫りくる敵を斬って落とし、ちぎっては投げ……」

「アイギスさんは入り口の番犬倒しただけじゃん! それも30分もかけて!」

「な、何を言うか! 犬だって強いのだぞ!」

「知らないわよ!」

「二人ともお静かに」


 ヤンさんが私の手を縛る鎖の鍵を外してくれた。

 2日ぶりくらいに、両腕を下ろせた。


「さて、急ぎましょう。ここは王家の管轄の牢獄です。警備兵は無力化しましたが、すぐに援軍が来ます。長居は無用です」

「あーもう、これでわたしもめでたくお尋ね者だわ! 誰か、ちゃんとうちのお母さんの面倒見てよね!」

「私も……実家には戻れなくなったかもしれませぬ……」

「ま、そのあたりは何とかなるでしょう」

「ヤンさんって変なとこで楽観的よねー」

「……あの。ごめんなさい」


 アタシの声に、みんながぴたりと動きを止めて振り向く。 

 息を吸って言った。


「アタシ、行けません」

「……は?」

「アタシには助かる資格、ないから」


 時間が止まったかと思うような間が流れた。


「な……な……」


 たちまちロキシィのこめかみに青筋が浮いた。


「何言ってんのよあんた! こっちの苦労、全部パァにする気⁈ この地下牢に潜入して、魔法陣もバリアも罠もかいくぐって、アイギスさんが三回くらい死にかけて、ヤンさんが後ろでボーッと見てるだけの中、やっとこさココまで来たのに! 助かる資格がないとか何それ誰情報⁈ どこ経由なの⁈ 少なくともわたしは聞いてませんけど⁈ もう知らん!」


 興奮しすぎて最後はちょっと何言ってるのか分からなかったけれど、とにかくすごく怒っているのは伝わった。


 そうだよね。……ごめん。

 でも、どうしても行けないんだ。


「ジュンちゃん」


 そこへ、落ち着いた声とともに、腰まである銀髪を揺らす薄緑のローブの女の人――ラウラさんがやってきた。


「どうしてか、理由を聞かせてくれる?」


 ラウラさんは、壁の前に座りこんだままのアタシの前に膝をついた。

 湿った床でスカートが汚れるのも気にせず、目線を合わせて、まっすぐ見つめてくる。

 アタシは少し迷ったけれど、口を開いた。


「アタシ……言われたんです。星野君を守るのは、ただ自分が死にたくないからだろうって」

「……そう」

「アタシ、すぐに否定できなかった」


 ラウラさんは何も言わず、ただ静かに聞いてくれていた。

 だから、アタシは続けることができた。


「きっと、それがアタシの本心なんです。……本当に星野君が大切なら、あのとき迷わず『違う』って言えたはずなのに……」


 手をぎゅっと握りしめる。指先が少し震えていた。


「こんな、自分のことしか考えられない冷たい人間が……助けてもらっちゃいけない。アタシみたいな人間、守られる価値なんてないんです」


 言葉にするたびに、胸の奥がひりひりと痛んだ。

 喋れば喋るほど、心が切り裂かれていく気がした。


 ふと、手の甲に優しい温もりが触れた。

 ラウラさんがアタシの手をそっと包み、微笑んでいた。


「ねぇ、ジュンちゃん。よく聞いて」


 柔らかくて、優しい声だった。


「人の心ってね、そんなに単純じゃないの。白か黒かで割り切れるなら、誰も悩まないわ。死ぬのが怖い。タクミ君を守りたい。それは矛盾じゃない。どちらも、あなたの本当の気持ちなの」

「どちらも………?」


 そうよ、とラウラさんは頷く。


「誰かを大切に思えば思うほど、自分の弱さや醜さが怖くなる。でもそれは、自分の弱さごと、その人に向き合いたいと思った証なの」


 きゅっと喉が詰まった。


「ジュンちゃん。あなたは今、自分のことを冷たい人間だって言った。でも、本当に冷たい人はね、自分のことを冷たいなんて思わないのよ。後悔しないし、苦しまない」

「………」

「あなたは、自分の心にちゃんと傷ついている。それって、すごく人間らしいことよ。だから、あなたには助かる資格があるわ。だって今のあなたは、もう自分だけのために生きてる人じゃないから」


 涙が出そうだった。


 ラウラさんはゆっくりと立ち上がると、まだ座り込んだままのアタシに、そっと手を差し伸べてくれた。


「さぁ、貴方の大切な人を迎えに行きましょう」


 どうしてこの人は、こんなに優しくて強い顔ができるんだろう。まるで魔法みたいに。

 

 アタシは――その魔法の手を借りて立ち上がった。


「――で、ギルド長。肝心のタクミさんの居場所は分かるんですか?」


 ヤンさんが冷静にそう言うと、ラウラさんはあっさりと頭を抱えた。


「あ、そうだった。わ〜、どうしよ!」

「いいセリフ言うなら、そこは押さえといてくださいよ……」


 ヤンさんは呆れたように肩をすくめた。


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