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レベル1の俺が死んだらレベル999の最強チート美少女も死ぬらしい~異世界スローライフしたい俺と、帰りたい彼女の命がけバディ生活~  作者: 古池ケロ太
第1章

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第17話 キンダーガルテン

 三つの月が土の地面にぼんやりとした光を落としている。

 その下に立つ男――クラボスクの体には、継ぎ目一つ見えなかった。さっきアイギスさんに真っ二つにされたはずなのに。


泥人間(マッドマン)』。


 つまり、全身が泥でできた人間ってことか。

 斬っても斬ってもスライムみたいに再生するってタイプ――やべぇじゃねーか。


「あ………!」


 横に立つロキシィが、不意に声を上げた。

 琥珀色の目が、驚愕に見開かれていた。


「どうした?」

「チューリップの、タトゥー……」

「あん?」


 彼女の視線の先、クラボスクの体を見る。

 たしかに、左肩のあたりに、手の平ほどのチューリップのタトゥーが彫り込まれていた。

 花びらと茎、それから左右に広がる葉っぱ。

 子供の落書きみたいな素朴なデザインで、このイカれ野郎にはやけにアンマッチだ――けど。


「それがどうした?」


 ロキシィの顔は、恐怖で強張っていた。


「キ………キンダーガルテン……!」

 

 クラボスクが青黒い唇をにいっと歪めた。


「へぇ……知ってんのかよぉぉ?」


 おーい、置いてきぼりにしないでくれ。


「なんだよ? その、キンダーなんとかって」


 ロキシィはひとつ唾を飲み込んで答える。


「ウラの世界じゃ知らないヤツがいない犯罪集団よ。窃盗、殺人、なんでもあり。利益のためなら人の命を何とも思わないクズ野郎の集まりで……全員がSクラスの化け物」

「なにぃ?」

「メンバーは、体のどこかにチューリップのタトゥーを入れてるの。わたし、スラムにいたときにそっちの世界の連中ともつながりがあったから、話は聞いてた。みんな口をそろえて言ってたわ。そのタトゥーを入れたヤツとは、絶対にコトを構えるな、って」


 おいおい、いきなりベタな少年マンガみたいな設定ぶっこんでくるんじゃねーよ。


「その忠告は正しいなぁぁ……。今からでも聞いといたほうがいいんじゃあねぇかぁ?」

「く……」

 

 ロキシィの額には脂汗が浮かび、全身が微かに震えていた。

 こいつ、マジでビビってんじゃねぇか。


 いや、無理もない。

 この泥男のヤバさはド素人の俺にだって分かる。

 出会って10秒で人の頭を刺そうとはしねーよ、フツー。


「ってことは、コイツ、やっぱ黒の書を奪って金に換えるつもりなのか?」


 俺の問いに、クラボスクは鼻で笑った。


「心外だよなぁぁ………そんなケチな連中と思われてるなんてよぉぉ………」

「じゃ、何だよ?」

「さっき言ったろ、知る必要はねぇってなぁ……お前らは大人しく殺されてりゃいいんだよぉぉ」


 そう言うと、倒れたアイギスさんのそばに歩み寄り、


「ムダな抵抗しねぇように教えといてやるか………俺たちがどんな人間かをよぉぉ……」


 気を失い無抵抗な彼女の肩を、ぐい、と足で踏みつける。

 ミシッと骨の鳴る音がした。


「おい、何するつもりだ!」

「そのガキが言ってたろぉ? 俺たちは人の命なんて何とも思わないってなぁ。今から実演してやるよぉ……くくっ……」


 クラボスクは残忍な笑みを浮かべて、アイギスさんの頭にぴたりと指先を突きつけた。

 泥の指先がぐにゃりと変形し、鋭利な刃のように伸びていく。


 ヤバい――!


「やめろ!」


 もちろんクラボスクは止まらない。止める力が俺にはない。

 一歩すら踏み込めず、ベタな叫び声を上げるしかできない自分が、情けなくて仕方ない。


 だが、こいつは違った。


「――ふざけないで」


 低く静かな声。

 振り向いたときには、もう黒髪のポニーテールは俺の横から消えていた。

 目で追えたのは、太刀川が地を蹴った瞬間だけだ。


「なに⁉」


 一瞬で目の前に現れた太刀川に、クラボスクが驚愕の声をあげる。


 その顔面に、音速の右拳が迷いなく叩き込まれた。


「せやあああっ!!」


 ヴォゴアアアアアアッッッ!!!!


 破壊的な爆裂音。

 クラボスクの体は一瞬で風船のように弾け、無数の泥の滴となって散った。

 拳圧が衝撃波となり、轟然と地面を削りながら駆け抜ける。

 巻き上げられた土煙と砕け散った石片が空へと舞い上がる。


「きゃああっ⁉」「どわぁぁ!」


 あまりの衝撃に、後方にいた俺とロキシィまでもが吹っ飛ばされた。


 ――やがて。


 すさまじい破壊の余韻を残しながら、静寂が戻ってきた。


「はあっ……はあっ……!」


 太刀川が拳を振り抜いた姿勢のまま、肩で息をする。


 風がゆっくりと土煙を払った後、俺たちの前に現れたのは、数十メートルにもわたって通りを貫く巨大な溝。

 いや、溝なんて生やさしいもんじゃない。

 人知を超えた力で刻まれた、大地の裂け目だ。


「すっ……ご……」


 呆然とつぶやくロキシィ。

 俺も信じられず、ただ目を見開いているしかなかった。


 もちろん太刀川の拳は、今までだって十分デタラメだった。

 でも、これは――次元が違いすぎる。


 まさかこいつ……今までは全然本気じゃなかったのか?


「こ、これからはあんまり怒らせないようにしよっと……」


 冷や汗まじりにロキシィがつぶやく。

 同感だわ………。

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