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レベル1の俺が死んだらレベル999の最強チート美少女も死ぬらしい~異世界スローライフしたい俺と、帰りたい彼女の命がけバディ生活~  作者: 古池ケロ太
第1章

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第12話 開かない書と開かれた道

【悲報】俺のバディがまともに口きいてくれない(3日目突入)


 俺と太刀川は、執務室へ続く長い廊下を並んで歩いていた。

 肩ふたつ分の距離が土星よりも遠く感じられ、流れる沈黙は身を斬るかのようだった。(文学的表現)


「な、なあ……。ラウラさん、今回は何の用で呼んだんだろうな?」

「さぁ」


 意を決して沈黙を破ったのに、能面みたいな顔で会話終了された。

 あの衝撃のキスから3日、ずっとこの調子だ。


 太刀川さんよ、言っとくけど、あれは事故だからな?

 俺にとっても人生初キスだったんだけど、振り返って感慨に浸る余裕もありゃしねぇ。地獄かな?


「失礼しまーす………」


 執務室のドアを開けると、ギルド長のラウラさんとその秘書ヤンさん、そして――見知らぬ小太りのおっさんがいた。


「ラウラ君! いつまであの小娘たちを野放しにしておくつもりかね!」


 おっさんはバーン! と机を叩いてラウラさんに詰め寄っていた。

 なんだなんだ?


「黒の書がどれだけ危険な代物か、分かっておるのか! 中央は怒り心頭だぞ!」

「ええ、ええ。仰ることはごもっともでございますわ~」


 ラウラさんは紅茶をすすりながら、のらりくらりと受け流している。


 ヤンさんが俺たちに気づき、小さく咳払いをした。

 おっさんは、俺たちを見てあからさまに舌打ちし、


「……また来るからな」


 そして俺たちの横を通り過ぎざま、「化け物どもが」と吐き捨てて去っていった。


 なんだ今の、オークになりそこなった人間みたいなおっさんは。

 いや、人間になりそこなったオークか?


「ごめんね、2人とも。イヤな思いさせちゃって」

「いえ……あの、さっきの方は?」

「王都のお偉いさん。時々やってきて、ありがた〜いお説教をくださるのよ」

「ギルドの監査役の役人ってとこスか?」

「タクミ君って、他の世界から来たっていうわりに、やけに詳しいわね」

「ども」


 わりとよくある設定ですから。


「なんか、アタシたち、あんまり良く思われてないみたいでしたけど」

「世の中、いろんな考え方の人がいるってことよ。あー、お茶がおいしい」


 俺たちを気遣ってか、ラウラさんはそれ以上話さなかったが、だいたいは察しがついた。


 ようするにあのおっさんは、俺たちを危険視して拘束しろだの何だのと騒ぎ立てていたわけだ。

 まぁ、実際俺たちは歩く大量破壊兵器みたいなもんだから仕方ないけど。


「さて、本題に入りましょう」


 ヤンさんは、見覚えのある焦げた布を見せてきた。


「あれ? それって……」

「はい。先日ロキシィさんが古代遺跡から持ち帰った布です。念のため分析したところ、たいへん興味深いことが分かりました」


 続けて机に置いたのは、預かってもらっていた黒表紙の本――黒の書だ。


「この布と黒の書の表紙は、同じ素材で作られていたのです」

「え………?」


 古代遺跡から出てきた布が、黒の書の表紙と同じ?


「見ていてください」


 ヤンさんは、焦げた布を黒の書の表紙に添えた。

 すると布はぴったりと表紙に張り付いた。

 逆さにしても落ちない。


「この布はラピダス()といって、魔力を加えると、布同士が引き合う性質を持っています」

「磁石みたいなもんスか?」

「そうです。古代文明ではこの性質を利用して、箱や壺のフタとして用いられていたようです。この布も同様でしょう。もっとも、今では蓄積した魔力がほぼ失われているため――」


 布を手に取り、黒の書からベリッと剥がしてみせる。


「この通り、力づくで剥がすことができます」

「じゃあ、黒の書が開かない理由って……」

「ええ。表表紙と裏表紙がいまだに魔力を有しており、強い力で引かれ合っているためですね」


 ヤンさんは黒の書を手に取り、表紙を開こうとするがピクリとも動かない。

 超強力な磁石でサンドイッチされているようなものか。


「盲点ね〜。表紙の素材のことまで気がつかなかったわ」

「私もうかつでした。ただ、これで希望が見えてきました。表紙のラピダス()に込められた魔力を抜き取ることができれば、書は開きます。そして中身を読めば、呪いを解く方法や、元の世界に帰る手がかりが得られるかもしれません」


 太刀川はたちまち目を輝かせた。


「そ、それで抜き取る方法って?」

「それは分かりません。何しろラピダス()は、何百年も前に作られなくなっていますから」

「……そ、そうですか………」


 一転、肩を落とす。

 感情がジェットコースターしとる……。


「だからね、ジュンちゃん。それを貴方たちに調べてきてほしいの」

「え?」

「かつてこの布を生産していた場所――ラピダス村に行ってちょうだい。今は作っていなくても、その村にだけ残る文献や言い伝えから、方法が分かるかもしれないわ」


 なるほど。


「あと、今回は彼女たちに同行してもらうから」

「彼女たち?」


 俺が聞き返すと当時に、執務室の扉が開く。


 げ、と思わず声が出た。


 とんがり帽子に深緑の魔法衣。

 ピンク髪の三つ編みを垂らした魔法使いが、そこにいた。


「タクミぃ〜、会いたかったぁ!」


 ロキシィは俺の姿を見つけると、跳ねるように駆け寄り、抱きついてきた。


「な、なんでお前が……!」

「ええ〜っ? ひどぉい、せっかく超絶美少女魔法使い・ロキシィちゃんが村まで護衛してあげようっていうのにぃ〜」

「何ぃ?」


 振り向くと、ラウラさんは明らかに楽しんでいる様子でニッコニコ。


「彼女の希望でね。古代遺跡のときみたいに、物理の効かない敵が出てきたら大変でしょ?」

「や、しかしですね」

「なぁにぃ、一緒にいるとドキドキしちゃう? あのキスが忘れられないんでしょ? かわいい〜♪」

「バ、バカやめろ!」

 

 地雷原でブレイクダンスを踊りまくるロキシィ。

 案の定、隣の最強チート様がすんごいジト目を向けてきてる。人を殺れる目線。


「主君!」

「わっ?」


 突然の声にジト目女が飛び跳ねた。

 金髪の女騎士が目の前に来ていた。


「ア、アイギスさん」

「ご無沙汰しております! この旅の任務、主君の護衛ができ光栄の極み! 一命をかけてお守りします!」

「は、はぁ………」

「あの〜、ラウラさん。ロキシィはともかく、なんでアイギスさんが?」


 この人、太刀川に護衛されちゃった前科があるんですよ?


「彼女はラピダス村に縁があってね。ね、アイギスちゃん」

「うむ。あの村は、かつて我が家の管轄地でな。幼少の頃に何度か父について行ったことがあり、旧知の者もいる」

「そういうわけで、案内役をしてもらうことにしたの」


 結構顔の広い人なんだな……にしても。


「ねぇねぇ、タクミぃ♪ 村は遠いから今度の旅はお泊まりになるんだって♪ 一緒に寝ようねぇ♪」

「主君! ならば私も主君を寝所を共にしてお守りします!」

「………(ジト目)」


 ……この旅、いやな予感しかしねぇ。

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