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■第3話 魔術師の忘れ物

「あ。」


ビチャッビチャビチャッ!!


顔前に飛び散る血、血、血!

大きな鳥の様な怪物の足の下に潰れた"人だったもの。"


「あ、はは……?」


目の前の状況が理解出来ずアズは目を見開き乾いた笑いを零す。

指の先まで血の気が引き、耳に聞こえる音はさらさらと自身の血が流れる音のみで、寒くないはずなのに身体が氷のように冷たくなるのを感じる。



「混乱、不安、恐怖……もう飽き飽きですね、本当に。」


男の刺すような言葉でハッと冷静さを取り戻したアズは、剣を強く握り直しゆっくりと目の前の怪物を見上げた。





__美しい。



一目見て出てきた感情にアズ自身が困惑した。

目の前の怪物は、怪物と呼ぶにはあまりにも神秘的だったからだ。


青く長い光の加減か、まるで透き通る海の底のような光を放つ羽。

大きくもスラリとした見目に、長い睫毛の奥にある深海のような瞳と目が合う。

それはまるで御伽噺や神話なんかで出てくるような、神の姿。


しかしその足元に広がる赤い海。

それは先程まで少女の形をしていたのに。

怪物の青と、エマだったものの赤が合わさりその怪物を更に引き立たせているような……そんな錯覚さえも覚える。


氷の様に冷たい視線を向けられ、アズは思わず目を逸らす。


「なんだよ、あれ……」


「さぁ。私も詳しくは知りません。……ですが、」


めんどくさい。


そう男は呟くとカッと靴音を鳴らし空を舞うと、その美しい怪物の額にそうっと口付けをする。


___一瞬の静寂、そして




ギャアアアアアアアッ!!!!!


劈くような悲鳴が辺りを揺らし、先程まで在った怪物は悶える様に暴れ男を乱暴に振り払い地面に叩きつける。

しかし男は何事も無かったかのように立ち上がると、口元についた血を拭いながら静かに怪物が沈みゆくのを眺めていた。


(何なんだよ、……一体これはなんなんだ……?)


わけも分からず剣を構えて立ち尽くすアズに男は振り返り、妖艶に笑った。




「これは、アズ。……貴方の忘れ物です。」




ぷつり。





意識の糸が切れる音が聞こえた。






_____……







______……


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