第3話「俺の料理スキル、冷蔵庫に完全否定される!」
「……さて、ついにこの時が来たな」
「何の話?」
「お前の人生初の自炊チャレンジだ!」
「いや、俺そんなこと言ってないけど?」
「買った食材を使わず放置するつもりか? それは俺の尊厳に関わる問題だぞ!!」
「冷蔵庫の尊厳って何!? てか、俺別に自炊するなんて一言も──」
「今、カレーの材料がそろっている」
「……」
「そして、目の前には火が使えるキッチンがある」
「……」
「つまり、これはもうカレーを作るしかないってことだ!!」
「なんでそうなるんだよ!!」
俺は叫んだ。せっかく買い物から帰ってきたのに、今度は料理までさせられるのか? 俺はただ、楽な一人暮らしをしたかっただけなのに!!
「だいたい、料理なんてしたことないし……」
「カレーなんて初心者向けだろ! 具材を切って煮込むだけ! 幼稚園児でも作れるレベルだぞ!!」
「お前、幼稚園児に何を求めてるんだよ」
「いいから作れ!!」
「くっ……!」
こうして、俺の**初めての自炊チャレンジ(強制)**が始まったのだった。
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料理開始! だが、ツッコミが止まらない!
「まず、野菜を切る」
「ふむ……ピーマン、人参、玉ねぎ……。まあ、適当に切ればいいか」
「ちょっと待て」
「今度はなんだよ!」
「その切り方はないだろ……何その不揃いな野菜のサイズ!?」
「知らねえよ! 切り方なんて適当でいいだろ!!」
「いや、ダメだろ!! 玉ねぎが巨大なのに、人参がミジンコサイズってどういうことだ!?」
「うるせぇ! こんなもんだろ!!」
「そんなもんじゃねえよ!! 煮込み時間の概念を学べ!!」
「え、そんなの関係あるの?」
「あるわ!! 人参なんて硬いんだから、こんなに小さく切ったらすぐ溶ける! 逆に玉ねぎは大きすぎて火が通りにくい! このまま作ったら、人参ドロドロ&玉ねぎシャキシャキという地獄のカレーが爆誕するぞ!!」
「地獄のカレーってなんだよ!!」
「俺はこの世に生まれてきた食材が無駄になるのを見たくない!! 食材に敬意を払え!!!」
「お前、冷蔵庫のくせに熱いな!?」
俺は仕方なく、言われた通りに野菜を切り直した。
「ふぅ……これでいいか?」
「うむ、まあ及第点だ」
「偉そうだな、お前」
「では次、肉を炒めろ」
「よし、得意の目分量で油を──」
「待て、今の何滴入れた?」
「え、適当だけど?」
「お前という奴はああああ!!!」
「なんだよ、いちいちうるさいな!!」
「いいか、適当は最も危険な考え方だ!! 油が少なすぎれば焦げるし、多すぎればギトギトになる! 料理というのは、すべてがバランスなんだ!!」
「めんどくせぇ……」
「めんどくさいじゃねぇ!! お前、恋愛でも『適当にやればなんとかなる』とか思って失敗するタイプだろ!!」
「おい、いきなり話を恋愛に持っていくな!!」
「料理も恋愛も、丁寧さが大事なんだよ!! ほら、油は大さじ1杯、ちゃんと計れ!!」
「はいはい……」
俺は渋々計量スプーンを取り出し、大さじ1杯の油をフライパンに入れる。なんだこれ、めっちゃ手間じゃないか。料理ってこんなにめんどくさいものだったのか……?
「さて、ここからは炒める工程だが……」
「もうなんとなく分かった。俺が適当にやろうとするとお前がブチギレるんだろ?」
「お前もようやく理解してきたか」
「面倒なルームメイトだよ、お前……」
⸻
カレー完成! だが……?
「ふぅ……できた……」
長き戦いの末、ようやく俺の人生初カレーが完成した。鍋の中には、ルーがしっかり溶け込んだカレーがグツグツと煮えている。見た目も問題なさそうだ。
「おお……これは……!」
冷蔵庫が唸るような声を出す。
「ようやく、まともな料理が作れたな……!!」
「はは……やればできるんだよ、俺だって」
「さて、食べてみろ」
「よし、いただきます!」
俺はカレーを皿に盛り、一口食べる。
……うん、普通にうまい!!
「これ、意外といけるな!」
「おお! やったじゃねぇか!」
「ちょっと自信ついたかも!」
「よし、ではここで総評に入る」
「なんで評価タイムなんだよ」
「まず、ルーの溶かし方は完璧。野菜のサイズも問題なし」
「おお!」
「しかし」
「え?」
「肉の炒めが甘い!!!」
「またかよ!!」
「ちゃんと焼き目をつけてから煮込め!! それだけでコクが全然違うんだよ!!」
「細けぇ!! もういいだろ!!」
「次回、カレーを作るときはちゃんと焼き色を──」
「次回なんてねぇよ!! 俺はこれからもコンビニ飯を食う!!」
「ダメだ!!!!」
こうして、俺の人生初の自炊は無事(?)に終了した。
だが、この後も冷蔵庫による食生活管理はますます厳しくなっていくのだった……。
──続く。