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泥だらけの絆  作者: 楽泥
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決意の芽生え

6月中旬、綾子は学校から帰ると、いつも通り白い半袖体操服を着ていた。襟付きのハーフジップを軽く開け、裾はエンジ色のブルマにきちんと入れ、その上にエンジ色のジャージズボンを重ね履きしている。白いリブハイソックスが通学靴の中で少し汗ばむ。あのトイレでの出来事から1週間、浩二からの連絡がぱったり途絶えていた。「用事があってさ」とLINEで来たきり、既読がつくだけ。綾子は部屋でジャージズボンを脱ぎ、ベッドに座ってスマホを握った。あのブリーフの泥シミが、頭から離れない。あの洗っても落ち切らない茶色い汚れ。あの慌てた声。


「お姉ちゃん、浩二君ってさ、最近会ってないね」宏美が部屋のドアから顔を出した。ピンクのスカートが少し揺れてる。「前はよくうちに来てたのにさ」


「うん…忙しいのかもね」綾子は笑顔を作るけど、心の中はモヤモヤしてる。浩二君、私のせいだよね。あの時、見ちゃったから。泥シミが染み込んだブリーフ。あの慌てた顔。あの写真集。小さい子の濡れた体操服、小さい子のシミのついたショーツ。全部、浩二君のものだ。私が知っちゃったから、避けてるんだ。綾子はスマホを握る手に力を込めて、胸が締まるのを感じた。あの泥の匂いが、頭にこびりついてる。


次の日も、その次の日も、浩二からの連絡はなかった。綾子は学校の帰りに、浩二のアパートの前を通ってみた。窓が閉まっていて、カーテンが動かない。誰もいないみたいだ。綾子はジャージズボンのポケットに手を入れて、ぎゅっと握る。嫌われたのかな。あのブリーフ、見なきゃよかった。でも、見ちゃったから…確信したんだ。浩二君、そういうのが好きなの。綾子の頭に、あの冷たい泥の感触が蘇る。胸がざわざわして、足が重い。


週末、綾子は一人で裏庭に出た。雨が降った後で、地面が少しぬかるんでる。ジャージズボンを脱いで、ブルマと体操服だけの姿で立つ。白い生地が、薄い陽光に映える。綾子は通学靴を泥に踏み入れた。靴が沈んで、冷たい泥が靴底にべっとりつく。靴下にじわっと染み込んで、白いリブが茶色に汚れる。綾子はドキッとして、地面の泥を指で触った。冷たくて、べっとりしてる。浩二君、これが好きなの?綾子は指に泥をつけたまま、ブルマの表面にそっと擦り付けた。茶色いシミが広がって、心臓がドキンとする。これ、浩二君が見たら…。


「何だろ、これ、気持ちいいかも」綾子は呟いて、泥を手にすくった。ブルマの裾に塗ると、シミがじわっと広がる。冷たい感触が気持ちよくて、綾子は目を閉じる。浩二君、こんな気持ちなのかな。汚れるのって、こんな感じ?綾子は泥に足を踏み入れて、ブルマに泥を跳ねさせた。靴下がぐちゃっと濡れて、変な気分だ。綾子はしゃがんで、泥を体操服の胸の所に塗った。白い生地が茶色に染まり、胸がドキドキする。変だよ、私。でも、止まらない。


その日から、綾子は裏庭で泥に触れるようになった。少しずつ、シミを増やす。ブルマの表面、体操服の胸の所。浩二君に会えない寂しさを、泥で埋めてるみたいだ。でも、浩二からの連絡は来ない。綾子はベッドに座って、体操服のシミを見つめる。「私のせいだ」と呟く。嫌われたんだ。私が変な目で見ちゃったから。綾子は枕に顔を埋めて、胸が締まるのを感じた。あの泥の感触が、頭から離れない。私、変だよ。


ある日、宏美が「浩二君からLINE来たよ。明日、うちに来るって」と笑った。綾子はドキッとして、「そうなの?」と返すけど、心臓がバクバクする。会える。でも、どうすればいいの?あのブリーフのこと、謝るべき?でも、それじゃ…。綾子はベッドの上で膝を抱えて、あのシミを思い出す。浩二君、私のこと、どう思ってるの?


翌日、浩二が来た。白いTシャツにジーンズで、いつもより少し緊張した顔。「やあ、久しぶり」と笑うけど、綾子と目を合わせない。宏美が「お菓子持ってくるね」とキッチンへ行くと、部屋に二人きりになった。綾子はジャージズボンを履いて、シミを隠すみたいに膝を揃える。浩二が「最近、忙しくてさ」と呟く。


「うん…分かってるよ」綾子は小さく答えるけど、心の中はぐちゃぐちゃだ。浩二君、私のこと、どう思ってるの?嫌いになったの?綾子は勇気を振り絞って、「あのさ、この前…」と言いかけた。


「あ、あれはさ、ごめん。変なとこ見せて」浩二が慌てて遮る。顔が赤い。綾子はドキッとして、「ううん、私が見ちゃって…ごめんね」と返す。気まずい空気が流れる。浩二君、恥ずかしかったんだ。私が悪いんじゃないんだ。綾子の胸が少し軽くなるけど、まだモヤモヤしてる。


そのあと、宏美が戻ってきて、3人でテレビを見た。でも、綾子は上の空だ。浩二の声が優しくて、でも遠い。帰り際、浩二が「また来るよ」と笑うけど、綾子は目を合わせられない。あのブリーフ。あの泥。あの熱っぽい目。頭から離れない。


夜、綾子は裏庭に出た。ジャージズボンを脱いで、ブルマと体操服だけで立つ。泥を手にすくって、ブルマに塗る。シミが広がって、綿の白いショーツに泥水が染み込む。冷たい感触が気持ちいい。浩二君、これが好きなの。私も、好きになってきたよ。綾子は泥に座って、ブルマにべっとり泥をつけた。靴下がぐちゃっと濡れて、ショーツがぐっしょり染みる。体操服の胸の所に泥が跳ねて、気持ちいい。変だよ、私。でも、これでいい。浩二君に会いたい。ちゃんと伝えたい。


次の日、綾子は浩二のアパートへ向かった。体操服に泥のシミが残ったまま、ドキドキしながらドアをノックする。浩二が顔を出して、「綾子?どうしたの?」と驚く。綾子は深呼吸して、「浩二君、私…」と言いかけた。胸がドキドキして、言葉が詰まる。でも、言わなきゃ。浩二君のこと、全部知りたい。私も、こうなりたい。


「私、浩二君が好きだよ。あの泥も…私も好きになっちゃった」綾子は顔を上げて、まっすぐ浩二を見た。浩二の目が丸くなる。綾子の体操服のシミが、薄い陽光に映えた。

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