確信への一歩
6月の初め、綾子と宏美はまた浩二のアパートを訪れていた。外は薄曇りで、少し蒸し暑く、綾子は白い半袖体操服を着ていた。襟付きのハーフジップを軽く開け、裾はエンジ色のブルマにきちんと入れ、その上にエンジ色のジャージズボンを重ね履きしている。白いリブハイソックスが通学靴の中で汗ばみ、おさげの髪が首に触れて少し重い。宏美はピンクのスカートに白いTシャツで、軽い足取りで歩いていた。
「お姉ちゃん、浩二君ってさ、最近ちょっと静かじゃない?」宏美が首をかしげた。
「うん…そうかもね」綾子は小さく答えるけど、心の中はざわざわしてる。あのBBQの日から、浩二の熱っぽい目が頭から離れない。小さい子の濡れた体操服、小さい子のシミのついたショーツ。あの写真集を眺める時のような目が、宏美の泥だらけのショーツを見てた。あれ、やっぱり偶然じゃないよね。浩二君って、何なんだろう。
ドアをノックすると、浩二が顔を出した。白いTシャツにジーンズで、髪が少し乱れてる。「やあ、来たんだ。入ってよ」と笑うけど、目がどこか落ち着かない。綾子はドキッとして、目を伏せた。あの目、また見ちゃうのかな。
部屋に入ると、少し湿った空気が綾子を包んだ。窓が閉まっていて、蒸し暑い。「ちょっと暑いね」と呟きながら、綾子は通学靴を脱いで揃え、ジャージズボンを脱いでソファの背に掛けた。ブルマに裾を入れた体操服だけになって、ソファの端に座る。宏美は床に座って、テレビの前に置かれたお菓子の袋に手を伸ばしていた。浩二は「何か飲む?」と言いながら、キッチンへ向かった。
綾子はソファに座ったまま、部屋を見回す。散らかった洗濯物がソファの横に積まれていて、その中に白い体操服らしきものが混じってる。あの写真集を思い出す。胸がドキドキして、指が膝の上で汗ばむ。浩二君って、本当にそういうのが好きなの?宏美のショーツを見てたのも、写真集と同じで…。あの熱っぽい目が頭にちらついて、綾子は膝をぎゅっと握った。
「トイレ行ってくるね」宏美が立ち上がって、廊下へ向かった。綾子は「うん」と頷きつつ、心の中は別のことを考えてる。浩二のあの目。あの手の震え。あれから何日か経つけど、頭から離れない。知りたい。でも、知ったら私、どうなるの?
宏美がトイレに行ってる間に、綾子は立ち上がって、キッチンへ向かった。「浩二君、水もらえる?」と声をかけると、浩二が「うん、すぐ出すよ」と振り返る。その時、綾子の目が浴室のドアに止まった。少し開いていて、隅にプラスチックの蓋付きバケツが置いてある。不自然だ。綾子の胸がドキンとする。あの中に、何かあるの?
「ねえ、あのバケツ、何?」綾子は思わず聞いてしまった。声が少し震える。
「え?あ、あれ?洗濯物だよ。気にしないで」浩二は慌てて笑うけど、目が泳いでる。綾子はドキドキしながら、そっと浴室に近づいた。宏美がトイレから戻る音が聞こえるけど、足が止まらない。蓋をそっと持ち上げると、中には濁った水と泥だらけの体操服が浮かんでいた。白い体操服だ。浩二君のものだろうか。全体に茶色いシミが広がり、水に濁った泥が溶け出してる。綾子は息を飲む。あの写真集と同じだ。浩二君が自分で汚したの?
「何!?や、やめてよ!」浩二が慌てて近づいてくるけど、綾子は目を離せない。泥の匂いが鼻をつく。体操服が水に沈んで、シミが濁った水にじわっと溶け込んでる。綾子の頭がぐちゃぐちゃになる。浩二君、やっぱり…これ、好きなの?写真集だけじゃなくて、自分で汚して楽しんでるの?どこから持ってきたんだろう。この体操服、誰のだったの?綾子はあの写真集のページを思い出す。ボロボロになった、濡れた体操服。あれと同じだ。
「お姉ちゃん、何か見つけたの?」宏美が浴室のドアから顔を出した。綾子は慌てて蓋を閉めて、「なんでもないよ、ちょっと見ちゃって」とごまかす。浩二は「ごめん、汚いよね」と笑うけど、顔が赤い。綾子はソファに戻って、心臓がバクバクしてる。あの体操服、自分で泥つけて、バケツに浸けたの?何でそんなことするの?綾子の指が、膝の上で汗ばむ。あの泥の匂いが、頭にこびりついてる。
そのあと、3人はお菓子を食べたり、テレビを見たりした。でも、綾子は上の空だ。頭の中には、泥だらけの体操服がこびりついてる。浩二が「何か面白い番組ないかな」と言うけど、綾子は返事できない。少しして、綾子は「トイレ借りるね」と立ち上がった。胸がドキドキして、手が汗ばむ。あのバケツを見た後じゃ、落ち着かない。あの泥の感触が、頭の中でぐるぐるしてる。
トイレのドアを開けると、浩二が中から飛び出してきた。「あっ、ご、ごめん!」と慌てて言うけど、綾子は一瞬見た。浩二の白いブリーフに、泥のシミが染み込んでる。洗っても落ち切らない茶色い汚れが広がって、生地にこびりついてる。綾子は「あ…」と声が漏れて、慌ててドアを閉めた。浩二が「見るなよ!」と叫んで、部屋に逃げる。綾子の頭が真っ白になる。あれ、浩二君が自分で汚して履いてるの?泥シミの残るパンツを履いて、楽しんでるの?
トイレに入って、綾子はドアに背をもたれた。心臓がバクバクして、足が震える。あのブリーフ。あの泥。あの写真集。あの熱っぽい目。全部つながった。浩二君、こういうのが好きなの。小さい子の汚れた服、自分で汚れるのも。泥シミが落ち切らないパンツを履いて、楽しんでるんだ。綾子の指が、体操服の襟をぎゅっと握る。変だよ、浩二君。こんなの、普通じゃない。でも、変な気持ちが胸に広がる。私、どうすればいいの?浩二君のこと、もっと知りたい。でも、知ったら私、どうなるんだろう。
帰り道、宏美が「浩二君、慌ててたね」と笑うけど、綾子は黙って歩いた。ジャージズボンのポケットに手を入れて、生地をぎゅっと握る。あの泥の匂い、あのシミが頭から離れない。浩二君のこと、確信した。あの洗濯物の中にも、汚した服が混じってるのかな。でも、それで何?綾子は自分の体操服を見下ろした。白い生地が、薄曇りの光に少し影を落としてる。私も、こんな風に汚れたら…。綾子の足音が、薄曇りの道に小さく響いた。家に着くと、綾子は部屋でジャージズボンを脱ぎ、ベッドに座った。体操服の裾を指でそっと触って、考える。あのブリーフの染み込んだシミが、頭の中でぐるぐる回ってる。浩二君、私、どうしたらいいの?




