この話はフィクションである。
この話は、フィクションである。
この話はフィクションだ。フィクションといえば、ほとんどの人は異世界転生モノだったり、非現実的な物語を思い浮かべることだろう。だが、この話はそうではない。
スマホのアラームが鳴り響く部屋の中で、主人公は目を覚ました。現在時刻は7:13。どうやら7:00から一分ごとに目覚ましをかけており、14回目でやっと目を覚ましたようだ。主人公は布団から出てはおもむろにスマホを持ち上げてはSNSを開く。どうやらルーティーンのようだ。8:00には家を出なければならない。主人公は重い体を持ち上げ、朝食、歯磨き、着替えを済ませる。最後に弁当を用意し、家を出る。
もう一度言おう。この話はフィクションだ。君たちはこの生活にどんな印象を抱いただろうか。
私はここで、主人公についての情報はほとんど与えていない。主人公は学生なのか、社会人なのか、もしかしたら働いてすらいない人間なのかもしれない。性別だって言っていない。性格も、だらしないように見えて、実は昨日夜遅くまで仕事に没頭しており、睡眠時間を削った結果起きられなかっただけで、根は真面目な性格だとも考えられる。
君たち読者が見ていたのは君たちの理想、つまりフィクションだ。この話を他の読者たちと話し合ってみてもらいたいものだ。きっと解釈がかみ合うことはないだろう。
私たちはフィクションの世界を生きている。自分が見たもの、それ以外は自分には分からない。想像するしかない。つまりフィクションだ。いや、自分が見たものすらフィクションなのかもしれない。
人間が分かり合えないのも、私たちがフィクションを作り上げるからだ。
この人はあの時、あんな酷いことをした。きっと性格も乱暴で、いろんな人に酷いことをしてきたのだろう。実際がどうかなんて、知る由もない。
この話はフィクションだ。この世界も、フィクションだ。