プロローグ
オカルト話を信じるヤツなんて馬鹿だ。
だいたいそんなものは全てフィクションで、実際に経験したというのも幻覚に過ぎない。
そんな考えを持っていた俺は、幼少期から「面白くないヤツ」と孤立していた。
「いい子にしているとサンタクロースがプレゼントをくれる」だとか「イタズラをする子供は悪い鬼に連れて行かれる」だとかの噂を、いつも冷めた感情で見ていた。
まぁそのおかげで、肝試しなんかも平気だったし怖い話を聞いて眠れなくなるなんてことも無かったのだけれども。
ともかく、オカルト話は信じるに値しない。
そう思っていた。
松下千恵と出会うまでは。
ともかく、俺と松下千恵(通称チエ)との出会いは、俺史上最も最悪な出会い方だったと思う。
まぁ、著しく冷めた目で周りを見ていたことを置いておけば、俺はごく普通の生活を送っていた。
なんとなく地元の小中を卒業し、自分の行けそうな高校を適当に選び入学した。
偶然にもうちの高校は遠い遠い昔からの歴史があるらしく、面接でその歴史に惹かれて、等とその場しのぎの言葉を紡いだ記憶が思い出される。
「藤本のクラスの松下ってヤツ、頭いいよな」
高校1年の時、俺は小学校からの友人である藤本と廊下に張り出された試験の順位を見ていた。
チエは学級委員長になるほど優秀で、毎回学年1位をキープしていた。
「見た目も可愛いし性格もクールビューティーな感じで頭もいいのに…なんで松本はモテないんだ?あ〜、彼女欲しいし松下と付き合ってみても良いかもな」
その時、藤本の顔が俺に対して明らかに引いたような表情になったのを今でも思い出す。
「お前正気かよ…自称オカルト係の変人学級委員長だぞ?」
そう言われた瞬間、俺は地の底に叩きつけられた感覚になった。
「やっぱ前言撤回で」と力なく言いながら、俺は今後学校生活でチエとの関わりが無いことを切に願った。
そして来る高校2年の4月。
クラス分けの表を見た俺は、絶望のどん底に押し付けられていた。
「2ーB 松本 千恵」
絶望したこと1つ目。チエの名前が、俺の名前と同じ紙にあったこと。
絶望したこと2つ目…
チエと席が、隣であったこと。