第82話:ほめられちゃった!
ξ˚⊿˚)ξ私事(家庭のトラブル)で更新開いてしまいました。申し訳ない。
去年と違って病気とかではないので大丈夫です。
連載再開しますが、また中断したらすまぬー。
お茶会はそこでお開きとなった。王妃は王へと先触れの使者を送り、ルナ王女を伴って部屋から退出した。急ぎ、情報を共有せねばならないためだ。
師匠とマメー、それにゴラピーたちも部屋へと戻される。
ピキピーピューとゴラピーたちが鳴きながらてちてち廊下を歩く。
「ピー」
黄色いのが鳴いた。「ねー」とマメーも肯定する。
「ピキー!」
赤いのが手にしたグリフィンの羽根をゆらゆらと揺らすように振った。
「ピュー?」
青いのがマメーを見上げて鳴く。
「うーん、聞いてみるね」
「なにさね?」
マメーの言葉に師匠はすぐに尋ねた。何を話しているのかは分からないが、声は聞こえているのだ。
「あのね、グリフィンのおはね、いいなあってはなししてたのね」
「ふむ」
赤いゴラピーは、ルイスのグリフィンであるオースチンの羽根を一枚持っていたのである。
「なにかぼくもいいのひろいたいなあ。おそとでたいなあって」
青いゴラピーが尋ねたのはそういうことであるようだ。
師匠が返事をする前に、話を聞いていた先導であり護衛でもある騎士が声をかける。
「申し訳ありませんが、本日はお部屋にてお待ちいただけるようお願いします」
「そりゃあそうさね。今日のところは我慢して今度にしな」
当然と言えば当然であろう。この状況で客人をふらふらと自由にさせるはずもない。
「きょーはだめだって」
「ピュー」
ゴラピーはざぁんねん、と鳴いた。
「こんどさがしにいこーねー」
「ピー!」
「ピュー!」
こうして彼らはピキピーピューと騒ぎながら部屋へと戻る。
部屋に入って、護衛が外に出ていくなり、師匠はどっこらしょとソファーに腰を下ろした。マメーはゴラピーたちを抱え上げて卓の上にのせると、師匠の向かいのソファーに座ってぽよぽよと揺れる。
「ルナでんか、だいじょーぶかな?」
「まー、少なくとも縁談の話は一旦止まるんじゃないかね。その間、姫さんの角は生えちゃあこないはずだね」
「うん」
心因的なものが影響を及ぼしているなら、心のうちを明らかにしたために呪いは安定するはずである。
師匠はやれやれとため息をついた。
「まあ、ここからは王様たちの仕事さね。どのみちあたしたちにゃ待つしかできんのさ」
「うん」
「マメー」
師匠が手を伸ばした。マメーはぱあっと顔を輝かせると、ぴょんとソファーから降りて、とことこ卓を回り込むと師匠の隣に座った。
「お手柄だったねぇ」
師匠がマメーの頭を撫でた。乾いた手が緑色の髪の上を往復する。
「えへへー」
マメーは満足げに笑みを浮かべた。
今回のルナ王女の角の件、気づいたのは彼女とその魔法の力のためであり、解決できたのは明らかにマメーの手柄であると言えた。
「マメーおてがらだって」
彼女がそう言うと、卓上でゴラピーたちは飛び跳ねながらピキピーピューと鳴いてマメーを讃えた。
「そーいえば、ルナでんかはまじょになるの?」
マメーは尋ねる。
ルナ王女は自分に呪いをかけることができたのだ。もちろんそれは師匠の薬による助けがあってのことであるが、それができるということは魔法の素質があることは明らかであった。
だが師匠は言う。
「ふうむ……仮にも一国の王女だからねえ。そいつは難しいんじゃないかね」
実のところ、各国の王族や上位貴族には魔法の才能を有するものは多い。だがその才能を発揮できるかといえば中々難しいのが実情である。
「そっかー」
マメーはちょっと残念そうだ。同年代の魔女ができるかもと期待したのだろう。
「ま、姫さんの魔力を安定させるためにちょっとは手解きくらいしてやるかもしれんがね」
「うん!」
「さて、時間があるうちにちょいと魔法の勉強でもするかね」
「はーい!」
マメーが魔法の勉強をしていると、そう時間も経たないうちに扉が叩かれる。やってきたのはルイスであった。
「失礼します、魔女殿、マメー、ゴラピー」
「あ、ルイス。それと、へーか?」
ルイスと共に入ってきたのは国王陛下その人であった。
「なんだい、王様。そっちの話し合いは済んでるのかい?」
ドーネット9世陛下は首を横に振る。
「いや、話し合いはまだまだこれからよ。ちょっと外の空気が吸いたくて一度出てきたのだ。それと尋ねたいことがあってな」
彼の表情には疲労が滲んでいた。彼は師匠とマメーの向かいに座る。ルイスはその背後に控えた。
「なんだい?」
「魔女殿、トゥ・ガルー国の噂や情報などを知るすべはないだろうか」
師匠は、はんと鼻で笑った。
「あるわきゃないだろう。あたしが万象の魔女なんぞと呼ばれてようが、そもそも魔法ってのは万能じゃないんだ。あらかじめトゥ・ガルーで準備をしてりゃ、やれることもあるだろうがね」
あちらに精神感応が使える魔女がいれば連絡を取ることが可能だ。そうでなくとも使い魔や魔道具を置いておくなどすれば王の言うようなこともできるだろう。だが、師匠は深い森に数十年という単位で引きこもっていたのである。そのような伝手などあるはずもなかった。
「うむ、そうであろうな」
師匠がその旨を伝えれば、国王はさして残念そうでもなく頷いた。そう言われると思っても尋ねてみたというところなのだろう。
師匠はふと、窓の外に目を向けた。今日は一日中慌しく、今はもう日没が近い。視線の先にはきれいな夕焼けが広がっていた。
「だが王様よ、あんたは運が良い」
師匠は笑みを浮かべてそう言ったのだった。
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