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第75話:おーひでんかとおあいします!

 赤いゴラピーが持っていたのは、白に茶色のすじが入った大きな羽根である。


「ピキー!」


 赤いのはそれを剣のように構えるとぶんぶんと振り回し、再び構え直してから肩に担いだ。

 ぶんぶんと振っているように見えるが、実際には羽根なのでふわふわしているのだが。


「まあ、ゴラピーちゃん勇ましいですわ!」


 だがルナ王女はぱちぱちと拍手をして称賛した。


「すごーい。ゴラピーかっこいいね! ゴラピーもおしゃれしたの?」

「ピキ〜」


 マメーもゴラピーを讃えて尋ねれば、ゴラピーはどことなく自慢げに肯定した。

 師匠やマメーがその身を飾ったので、自分もということだろうか。


「ピー!」

「ピュー!」


 黄色いのと青いのはマメーの肩の上でぴょんと跳んで、赤いのに対してすごーいと鳴いた。


「ひひひ、そいつはグリフィンの羽根かい?」

「ピキー」


 師匠の問いにゴラピーは頷いた。


「オースチンからもらったんだって」


 オースチンはルイスの騎獣のグリフィンである。マメーとゴラピーはオースチンに乗せてもらって、ここサポロニアンの城にやってきた。その時に得たのは間違いない。

 オースチンがゴラピーに怒ったり、あるいは痛がっているような様子はなかったので、少なくとも無理やり引っこ抜いたということはないだろう。


「ピキー」

「ええっ」


 ゴラピーの鳴き声にマメーは驚いた様子を見せた。


「どうしたのかしら?」

「はねはマメーのフードのなかにかくしてたんだって!」


 師匠と王女は笑った。確かに王城に来てからもう数日経っているのだ。

 マメーがフードをひっくり返すと、中から色のついた小石やどんぐりがパラパラと落ちた。


「ゴラピー!」

「ピー……?」

「ピュー……?」


 ゴラピーたちは知らないよ? と鳴きながら目を逸らしたのだった。

 ハンナがスカートのポケットから懐中時計を取り出して時間を見た。


「さあ、お時間です。皆様は王妃殿下のもとへ」

「ええ、マメー行きましょう」


 マメーは床に落ちた石やどんぐりを拾う。


「それはこちらで保管しておきましょう」


 マメーはそう言うハンナに手にしたものを渡すと、ルナ王女たちと共に部屋を出たのだった。

 本来であれば家族でのお茶会とはいえ、王妃殿下のそれとあらば、広間や庭園、サンルームなどを利用して、花に絵画、音楽家などしっかりと準備を行うものである。

 ただ、今回は王妃殿下は心労で寝込んでの病み上がり、ルナ殿下は呪いが解けたかどうかもわからないと不安要素が大きく、王妃の部屋のそばの小部屋で二人っきりの茶会である。

 音楽家を招くこともしなかったが、部屋は暖かく快適である。いくつも花は飾られているが、小さく落ち着いた色と香りで、部屋の配色も淡く優しい色で整えられていた。


「ルナ!」


 女性の声がかけられた。座っていた女性がおもむろに立ち上がり、王女の名を呼んで立ち上がったのだ。


「お母さま!」


 王妃である。ルナ王女とよく似た色の金髪に、優しげな笑みをたたえていた。

 ルナ王女はドレスを着ているので走れないが、それでも速足で女性に近づくと抱きついた。


「お身体は大丈夫ですか!?」

「ええ、大丈夫よ。心配かけたわね」


 そう言って王妃は王女の頭を撫でた。角のなくなった頭を。


「御免なさいね、弱い母で」

「そんなことありませんわ! お母さまがわたくしのために薬など取り寄せてくれたのは知っております!」


 王妃はルナ王女の角を治すために色々と動いていたのだ。それが不首尾に終わったために倒れてしまったのである。だが、最終的に魔女を招くことができ、それが角を治したと聞いたのだ。

 寝ている場合ではなかった。

 抱き合い、言葉を交わしていた二人であったが、王妃は娘から離れると、入り口のあたりでそれを見守っていた師匠とマメーの方に向き直り、深く頭を下げた。


「偉大なる万象の魔女グラニッピナ様。此度は我が娘、ルナの呪いを治していただき、感謝に絶えません。サポロニアン王国王妃であるわたくしから心からの感謝を」


 師匠は渋面をつくる。


「一国の王妃にそんな畏まられるようなもんじゃあないさね。ばばあで十分さ。それにね、まだ完治した訳じゃあないんだ。聞いているんだろう?」


 王妃は頷いた。


「ええ、今朝の話は聞いておます。でも今までは何の進展もなかったのですもの。それを魔女様は来てすぐに治癒してくださり、また今朝もすぐに治して下さったと」


 王妃の言葉は事実である。実際、師匠がいればすぐに治せるという考えでのこの茶会であるのだから。


「まあね、一応何かあった時のために控えてるからさ。気にせず茶でも食事でもしなさいな」

「ありがとうございます、魔女様」


 王妃はルナ王女の頭に手をやった。王女ははにかんだ笑みを浮かべる。


「ルナでんかよかったね!」


 マメーがそう言えば、ルナ王女はゆっくりと頷いた。

 王妃は笑みを浮かべる。


「まあ、あなたがマメーさんね!」

「こんにちは、おーひでんか。マメーをしってるの?」

「ええ、話は聞いているわ。魔女様のお弟子さんなのでしょう?」

「うん、マメーはししょーのでし!」

「可愛らしいお連れさんもいると聞いているわ」

「おつれさん?」


 マメーが首を傾げると、マメーの足元に隠れていたゴラピーたちがひょいと顔を出した。


「ピキ?」



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― 新着の感想 ―
[一言] マメーのフードがゴラピーの巣にwww
[一言] オースチン萌え 何てイケ鳥
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