第61話:師匠、魔術協会に手紙を書く2
ξ˚⊿˚)ξ連載再開です!
前回までのまとめ兼、師匠からの手紙回です。
またできるだけ毎日更新していきますので応援よろしくお願いしますー。
魔女協会本部宛
大同盟歴250年、燕が南方より来たる頃
大達人階梯魔女、グラニッピナ
緊急対応要請【再送】
前略。
先日、私がお送りした緊急対応要請は確認されているでしょうか?
いえ、ふくろうが戻ってきているのですから、確認されているのは明らかです。その上で無視されているのでしょう。
神殿長が握りつぶしているのは明らかです。……あんた次会ったらぶち殺すからね、覚えときなよ。
……ともあれ、改めてお伝えしますが、10日ほど前に私が預かる幼な子、通名マメーが魔女としての長い道のりを歩き始めました。
知っての通り、彼女の魔術の才能は準特化型植物系五つ星。その才は極めて危険な領域にあります。
それの制御が師たる私自身に可能かということを試す意もあり、マンドラゴラに魔力を与えて育成を促すという試行をいたしました。しかし彼女は念じるだけで一瞬で植物を成長させ、しかも明らかな新種のマンドラゴラ(命名:ゴラピー、M・オフィシナルム・ゴラピー)を作り出しました。
それらは人間のように手足を動かすことが可能で、知覚・思考能力を有し、さらにそれらはマメーと意思疎通が可能であるようでした。
再度、要請いたしますが、植物系を専門としていない私には対処しきれぬ事態となる可能性が極めて高いと考えます。
対応要員、植物系を専門とする魔女の派遣など即座の対処をくれぐれもお願いいたします。
草々。
追記
くだんのゴラピーですが現在、3体にまで増殖しています。
一時的転居報告
前略。
先日、迷いの森の我が庵をサポロニアン王国のグリフィンライダーである銀翼騎士団の副団長が薬を求めに訪れました。
同国の姫に獣化現象が発症し、典医や宮廷魔術師では対応できずにこちらに頼りたいとのこと。
大同盟法において、魔女は国家間の争いに介入しない等の規約がありますが、本件はそれには該当しない魔術的障害の除去にあたると判断し、依頼を受理いたしました。
獣化の原因の調査等も行うため、解決までサポロニアン王国の王宮かその近辺に滞在することとします。
達人階梯以上は移動時に協会に所在を報告するという義務に従い、報告いたしました。
草々。
追記
私に肌の若返り薬を調合するよう依頼していた蒼天と大海の魔女ブリギットとその弟子ウニーが我が庵を訪れ一週間ほど滞在いたしました。
おそらく協会には未報告でしょう。また彼女たちも現在の仕事を終えたらこちらに来るかもしれません。念のため報告を。
緊急対応要請
サポロニアン王国にて同王国の姫にかかっていた獣化の呪いの解呪を追儺儀式により行使いたしました。一旦は獣化が解消されましたが、同日深夜、獣化の呪いが進行したか完全獣化状態に、全身が獣へと変化いたしました。
解呪に失敗したと判断されます。
解呪を専門とする魔女、あるいは単に儀式のための増員でも構いません。派遣をお願いいたします。
魔女協会にて職員の会話
「また変な顔して手紙読んでるわね」
「いや、大達人グラニッピナ師からのふくろう便なんだけど、三通同時に届いたんだよね」
「えーっと、この前の緊急対応要請の再送と、一時的な移動の報告と、……また緊急対応要請じゃない!」
「そうなんだよ」
「なんだい、どうしたね」
「あ、神殿長お疲れ様です。やっぱりグラニッピナ師、怒ってますって」
「ふふ、まあそりゃそうでしょうよ。気にしない気にしない」
「大丈夫ですか? 殺すとか書かれてますが」
「よくあることよ」
「よくあるんですね……」
「あと移動の報告ですが……この書類が必要なの長距離・長期の場合ですよね? 迷いの森からサポロニアンなら箒で一日ですし、わざわざ報告は不要なものですが」
「グラニッピナは律儀だからね。それに彼女のとこは薬求めてくる魔女が多いから、連絡まわしとけってことなのさ」
「なるほど、承知しました。近隣の魔女に連絡を入れておきます」
「それとあの森には神が眠ってるからね」
「神が!?」
「まあ、悪さするようなのじゃないが、観測はしておきなさい」
「かしこまりました。ブリギット師はどういたしましょう。確かに移動の連絡は来ていませんでしたが」
「ふん、どうせ注意しても箒をぶっ飛ばして『一日で着いたから近距離! セーフ!』とかいうだけだよ、そういう女だあれは」
「あー……」
「あー……言いそう」
「んで?」
「緊急要請です」
「……無視で良くない?」
「え」
「えっ」
「いや、だってさ。万象の魔女が儀式までして失敗する呪い返しよ」
「……やばい」
「やばいですね」
「ええ、やばいわよね。あなたたち、それに手伝いに行きたいの?」
「い、いえ! 決してそのようなことは!」
「はい、絶対行きたくありません!」
「ま、世界の危機とかではないんだし、あの婆に任しておけば万事上手くやるさ。なんてったって万象の魔女だからね」
そして手紙には『申請不受理』の魔術印が捺されたのであった。








