第30話:ウニーちゃんたちがきてすうじつたちました!
ξ˚⊿˚)ξ連載再開ですわ! またよろしくお願いしますー。
ぱちり、とマメーは目を開いた。窓の板の隙間がぼうっと白く光っている。
「……あさ」
むくりとマメーは起き上がり、くしくしと片手で顔の目のあたりをこする。
ベッドから降りると、ぺたぺたと歩いて窓の方へ。
「よいしょ」
跳ね上げ式の、窓の木板をがたんと上げる。部屋に朝の爽やかな陽射しと空気が入ってきた。
つっかえ棒で窓の木板を固定して、いつも通りに明るくなった部屋を見る。
「……えへへ」
部屋を見渡せばベッド脇の机の上に師匠から貰った見習い魔女のメダルと、ゴラピーが師匠から貰ったオパールと、ブリギットとウニーがくれたガラスペンと虹色インクが朝日を浴びてきらきらと輝いている。マメーの宝物たちだ。
そしてその横には赤と黄色と青色の三つの植木鉢が置かれている。それらの土からは緑の双葉がぴょんぴょんぴょん、と元気よく天に伸びていた。
とてて、と鉢植えの方にかけよる。
マメーはそれらを抱えると、窓の方に持っていって葉っぱに光を当てた。
「よし」
マメーが覗き込んでいると、葉っぱがぷるぷると震え出した。
そしてぐっと土が盛り上がり、ぽこんと赤、黄色、青の上半身が順にでてくる。
「ピキー!」
「ピー!」
「ピュー!」
ゴラピーたちだ。彼らは身体をぶるりと振るわせて土を落とし、うーんとちっちゃい両手を上げて伸びをする。
「おはよ、ゴラピー」
「ピキー!」
「ピー!」
「ピュー!」
マメーと挨拶を交わし、げんき? と尋ねられればうんうんと頷く。この一人と三匹は朝に強い。
「さてー」
マメーは振り返る。
マメーが起きてきたベッドの脇にはもう一つのベッドが置かれていた。布団がこんもりと盛り上がっている。
マメーはゴラピーたちを抱えてそちらに近づいた。
「ウニーちゃんおはよー!」
そう挨拶するが返事はない。布団が芋虫のように身を捻り、光や音から遠ざかろうとした。
マメーはゴラピーたちをベッドの上におろした。
「おはよー!」
ゆさゆさ。
開いた手でマメーが布団を揺する。
「ピキーピキー!」
べちべち。
赤いゴラピーがてちてちと布団の塊に近づき、頭上の葉っぱでべちべちと布団を叩いた。
「ピーピー!」
べちべちべちべち。
黄色いゴラピーもてちてちと近づき、葉っぱで布団を叩いた。
「ピューピュー!」
べちべちべちべちべちべち。
青いゴラピーも葉っぱをぶんぶん振って布団を叩いた。
もちろん布団の上からであるし、ゆさゆさべちべちしているのは小さな手と葉っぱである、痛くなどはない。だが寝続けていられるような衝撃でもない。
布団の塊は身を丸くして耐えていたが、やがて諦めたのか紫がかった黒髪が布団の端からぴょこんと出てきた。
「……おはマメー」
オレンジの瞳はまだとろんとしている。
「おはウニー!」
「ピキー!」
「ピー!」
「ピュー!」
マメーたちは元気に挨拶を返した。
特定の属性の素質を強く有する魔女は、その肉体も属性の性質の影響を受ける。例えば炎の素質を強く有していると体温が高い傾向にあるなど。
植物系のマメーはお日様を浴びると元気だし、夜はすぐ眠くなる。闇属性のウニーは夜は遅くても大丈夫だが朝は弱いのだ。
ウニーも子供だから早寝早起きをさせられているが、大人になれば昼夜逆転生活をするだろう。魔女らしいといえば魔女らしい性質ではあるのだが。
「あさごはんたべよー!」
「うにぃ……」
元気いっぱいなマメーはウニーの手を引いてベッドから起こす。
二人は朝の支度をして部屋を出るのだった。
マメーの住居でもある師匠の庵に、ウニーとその師匠のブリギットが逗留するようになって5日が経った。
「ししょーおはよー! ブリギットししょーおはよー!」
「ピキー!」
「ピー!」
「ピュー!」
「おぁよごあいます……」
二人と三匹が部屋に入って挨拶すれば、二人の師匠も挨拶を返す。
「ああ、おはよう……」
「あら、おっはよー!」
今日はちょっと師匠が疲れているな、ブリギット師匠はなんかご機嫌で元気いっぱいだな、とマメーは思った。そして気づく。
「きらきらしてる!」
マメーはブリギットを見上げてそう言った。
ブリギットは身をくねらせながら艶やかな長い黒髪をかきあげて、ふふんと笑みを浮かべた。
「分かる? 分かっちゃう?」
「わかるよ、ブリギットししょー!」
ブリギットは「いぇーい」とハイタッチを求めてきたので、マメーは「いぇーい」とハイタッチを返した。
ピキピーピューとゴラピーたちも鳴くのでマメーが持ち上げ、ちっちゃい手でブリギットとハイタッチを交わした。
「ブリギットししょー、つやつやしてきれーよ」
マメーはブリギットを賞賛した。彼女の肌は昨日までよりも、もちもちとして輝いているように見えた。
「まあ、おチビちゃんったら、なんて素直でいい子なのかしら!」
ブリギットはマメーを持ち上げてくるくると回転した。
「あははー!」
マメーは笑い、ゴラピーたちは僕も僕もと言わんばかりにぴょんぴょんと跳んで鳴いた。
ウニーはグラニッピナ、マメーの師匠に声をかけた。
「……調薬、お疲れ様でした。うちの師匠がすいません」
「ふん、全くずいぶんと急かしおって。まあこれでやっとゆっくりできるさね」
マメーはぴたりと動きを止めた。薬ができたということは……。
「ウニーちゃん、ブリギットししょー、帰っちゃうの?」








