第3話(閑話):師匠、魔女協会に手紙を書く。
ξ˚⊿˚)ξ閑話でちょい短め。
本編は2000字程度にしますが閑話は特に縛りなしの予定。
今回は短いから一日2話更新にしたぞ的な。
魔女協会本部宛
大同盟歴250年、春の雷が遠方にて鳴る頃
大達人階梯魔女、グラニッピナ
緊急対応要請
前略。
本日、我が魔術の庵にて預かっている幼な子、通名マメーが魔女としての長き道のりの一歩目を歩み始めたことをここに報告いたします。
彼女に新参者の証たるメダルを渡し、まずは師たる私の前での魔力の使用を許可いたしました。
彼女の魔術の才能は準特化型植物系五つ星であり、その才は極めて危険な領域にあるのは協会もご存じの通りかと思います。今回、それの制御が師たる私自身に可能かということを試す意もあり、植物に魔力を与えて育成を促すという試行をいたしました。
対象は魔力吸収性が高く、収穫時に抜く時以外の危険性は少ないマンドラゴラを選択しました。
この際、一切の呪文の詠唱や魔術的動作、魔法陣や呪具の使用はなかったと誓います。そもそもそれらの内容を指導したり与えたことはありません。
ですが彼女は(ここで彼女の筆跡は大きく乱れ、幾度も書き直した跡がある)
ですが彼女は念じるだけで一瞬で植物を成長させ、しかも明らかな新種のマンドラゴラを作り出したのです!
それらは人間のように手足を動かすことが可能で、知覚・思考能力を有し、さらにそれらはマメーとある程度の意思疎通が可能であるようでした。
マメーの性質が善であることなどから考えて、即座の危険度は低いと考えます。しかしこれは大達人の身でありますが植物系を専門としていない私には対処しきれぬ事態となる可能性が極めて高いと考えます。
対応要員、植物系を専門とする魔女の派遣など即座の対処をお願いいたします。
草々。
追伸
先述のマメーの育成……創造したマンドラゴラですが、大達人たる私自身の見識において、また〈鑑定〉術式にてそれを新種と確認しています。
発見者命名の法則によりマメーに新種の命名を行わせたところゴラピーと名付けました。与えた種子は一般的なもの、マンドラゴラ・オフィシナルムであるため、ゴラピーの学名はM・オフィシナルム・ゴラピーとなります。
後日その性質等判明したらレポートなどお送りします。
魔女協会にて職員の会話
「なにへんな顔して手紙読んでいるの?」
「いや、大達人グラニッピナ師からの緊急ふくろう便が届いたんだけど変な内容でさ」
「ふーん、見せてよ……ええっ、緊急対応要請じゃない!」
「そうなんだけど。そうなんだけどー、続き読んでみてよ」
「ふんふん、うん、うーん? ぷっ、何よゴラピーって」
「わからん」
「グラニッピナ師のお弟子さんって何歳だったっけ? 幼な子ってあるけど」
「えーと、8歳だね。ちゃんと新参者の階級を与えた弟子としては組合で一番若いかも」
「それがマンドラゴラの新種を、たぶんこの表記だと一瞬で創造したってこと?」
「そう書いてあるね」
「ありえなくない?」
「うん、グラニッピナ師の一足早い愚か者の日かなと思ってるところだ」
「どれどれ、みせてごらん?」
「あ、神殿長お疲れ様です」
「お疲れ様です、こちらグラニッピナ師の書簡です」
「どれどれ……ふふ」
「いかがいたしますか?」
「いいよ、対処しないで」
「ええっ!」
「だってこれ弟子自慢でしょうよ」
「そう……でしょうか」
「見て見て弟子の魔力すごい。性格もいい。新種まで作っちゃった。って言いたいのさ、あの婆はね」
「あー、そう読めなくもない……かな?」
「可愛い弟子を見せたくて仕方ないのさ。大丈夫、あの婆はあれで大達人"万象の魔女"グラニッピナさ。万事上手くやるとも」
そして手紙には『申請不受理』の魔術印が捺されたのであった。