第24話:にひきよりさんびきのほうがたのしいとおもいます!
ぴょんぴょんと卓の上で跳んでなにやら訴えかけるゴラピーのうち、赤い方を師匠の乾いた指が摘み上げた。
「ピキーピキー!?」
師匠の指に挟まれてじたばたとしていたが、特に危害を加えられる訳でもないと分かったのか、だらーんと力を抜く。
「ピキー……」
「もう一匹仲間が欲しいってことかい?」
「ピー!」
黄色いゴラピーはぴょんと跳ねた。師匠は赤いゴラピーを卓に戻す。そしてじろり、とブリギットを見据えた。
「あんたが焚き付けたのかね、ブリギット?」
「だってー、知らない魔法・知らない生物よ。気になるじゃない」
師匠は、「はぁ」と大きなため息を吐いた。
まあ、それについて非難する気はない。魔女にとって好奇心こそその本質、好奇心無ければ向上もないのだ。
師匠はマメーを見る。
「まあ、マメー。どのみちあんたのこの……見たこともない魔法は調べなきゃならんのは間違いないんだがね。ゴラピーの能力にせよ、マメーの限界にせよね」
「うん!」
マメーは嬉々として肯定に頷いた。師匠はまだ眠いのか目頭を揉む。
「本当はもっと時間をかけてゆっくりやるつもりだったが……」
「ピキー!」
「ピー!」
「なんだって?」
ゴラピーがなにか訴えかけているので師匠はマメーに問う。
「んっとね。もういっぴきならぜんぜんよゆーだよって」
ふうむ、と師匠は考える。
このゴラピーらがマメーの使い魔や眷属的存在であるのは間違いない。魔力的な繋がりがあり、主従関係のような共生関係のようなものがあるように見える。つまり、マメーを害するようなことはあるまい。
また、ゴラピーたちは魔力量などを自然に知覚するような能力がある。しかも非常な高性能だ。であれば彼らがもう一匹いけるというなら問題ないようにも感じるが……。
「きらきら、きれー!」
とマメーが叫んでぴょんと椅子の上で跳ねた。向かいに座るブリギットの弟子、ウニーも興奮したようにこちらを見ている。
「ん? ああ……虹色インクかね」
師匠は考えながら本人も気づかず卓にあった瓶を手にしていたのである。インクは完全に全ての色が均等な虹色になっていた。
「ふふ、グラニッピナおばあちゃんくらいしかこの色は出せないのよ」
全ての魔法の素質を三つ星で有している者など世界中にも片手で数えられる程度しかいないのだ。
「おばあちゃんはやめな。なんだ、ブリギット。あんたが持ってきたのかね?」
「ブリギットししょーとウニーちゃんからプレゼントもらったの!」
マメーが元気よくそう言った。
「そうかい、ありがとうよ。マメー、正直に答えな。魔力欠乏……疲労感、目眩なんか感じるかい?」
「ううん。……あ、でもきのーのよるはちょっと早くねたかも」
マメーはしょぼんと肩を落とした。
「つかれた、ダメ?」
「ピキー……?」
「ピー……?」
じっと三対の瞳が師匠を見上げてきた。師匠は咳払いを一つ。
「ま、魔力を初めて使ったんだそれくらいなら当然さね」
「そうよう、ウニーなんか最初に魔法を使った時なんかぶっ倒れて……」
「わー! 師匠やめてください! わー!」
ウニーはばたばたと手を振った。ブリギットは笑う。
「おばあちゃんは心配症ねぇ」
ブリギットは言う。師匠は顔をしかめた。
「心配なんじゃねえのよ。単に五つ星の素質がどんなもんかあたしにも分からないからさね」
魔法の素質は通常、世の中一般では三つ星が最高と思われている。師匠のように全系統で三つ星なのが最高ということだ。
だが、魔女の世界では単系統、何かに特化していればそれを超えることがあるのは知られている。だがそれだって四までだ。素質の五つ星など伝説じみた存在で、師匠もよもや自分がそんな子を弟子とする日がくるなど当然思ってもいなかった。
師匠は杖を一振り。
「〈騒霊〉」
扉が勝手にばん、と開いた。師匠は尋ねる。
「何色さね?」
「じゃーねー、ウニーちゃんのいろであお!」
ウニーは首を傾げた。ウニーの髪の色は暗い紫である。あるいは紫を帯びた黒と言ってもいい。青ではないのだ。ブリギットから貰ったラピスラズリのネックレスの護符の色だろうか。
ウニーはネックレスに手をやった。
「はいよ」
青い植木鉢が飛んでくる。
土と種が入っただけの鉢植えだ。師匠はそれを一度自分の手元に置くと、状態を確認するように見てからマメーに手渡した。
「やってみるね!」
「ピキー!」
「ピー!」
赤と黄色のゴラピーが、頑張って! というように小さい手をぶんぶん振りながら鳴いた。
マメーはうんうんと唸りながら鉢植えに魔力を注ぐ。ぽん、と芽が出た。
根っこの方は青かった。
「うえぇっ!?」
「はやっ!」
ウニーとブリギットが叫んだ。師匠は芽の色を見てやっぱりな、という顔をした。
鉢植えの土がぷるぷると揺れて地中から何かが飛び出してきた!
それは赤いのや黄色いのにそっくりで、色だけ異なる青い人型だった。くりっとした目をマメーに向けて、両手をうーんと広げて伸びをするような動きを取った。
「ピュー!」
それは妙に高い鳴き声を上げる。
マメーは叫んだ。
「かわいい!」
ゴラピーたちは仲間が増えた喜びを示すかのようにぴょんとジャンプして鳴いた。
「ピキー!」
「ピー!」








