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マメーとおりょーり:前

ξ˚⊿˚)ξマメーとちっこいの、第1巻発売記念SSよ!


後編は20日の午前8時に予約投稿します。

「とんとこすーてんとん」

「ピキー!」


 マメーが何か妙なことを言いだし、赤いのがばんざいした。


「とんとこすーてんとん」

「ピー!」


 黄色いのがばんざいした。


「とこすってんすってんてんてんてんてん」

「ピュー?」


 青いのはなんだかよくわからないが両手をあげた。


「なんじゃいそりゃあ」


 師匠があきれたような声で尋ねる。


「おりょーりのうただよ!」


 マメーはどやあと胸を張った。ここは森のおうちの台所である。

 師匠とマメーがかまどの前に立ち、ゴラピーたちは流し台の上に置かれた籠の上に座らされてそれを見ているのだ。


「まあなんだって構いはしないがね」


 師匠はマメーの歌が下手というかリズム感がおかしいと思いはするが、特にそれをどうこうする気はない。単に肩をすくめるのみであった。

 それよりも料理である。マメーに今日から料理を教えていくよと言ったら、マメーはご機嫌で歌い出したのだった。


「んじゃ始めるよ」

「あい!」


 マメーは元気よく返事をする。

 マメーはしばしば台所に立つことがある。ただ今までのそれは、すでに師匠によって作られたものを温めたり、お茶を淹れることくらいまでしかやらせてもらえていないのだ。料理ははじめてである。


「料理も菓子作りも薬作りに通じるところがあるからね。ま、ぼちぼちやっていくといいさ」

「あい! それできょーはなにつくりますか!」


 マメーはやる気まんまんで尋ねた。師匠は肩をすくめる。


「ま、最初は定番の目玉焼きからかね」


 料理初心者がしばしば最初に教えられる料理であり、極めて単純な料理であるが、奥深い料理でもある。


「めっだまっやきっ! マメー、ししょーのめだまやき、だいすきよ!」

「そうかい、そいつは良かった」


 マメーはぴょんとばんざいする。マメーは師匠の料理なら何でも好きだが、実際ここの料理は美味いとブリギットら他の魔女たちも口を揃えて言うのだ。


「まずは手をよく洗う」

「はーい」


 マメーはばちゃばちゃと手を洗って、布巾で手を拭いた。

 師匠は製薬を仕事にしているのもあり、清潔にはうるさいのだ。だからマメーも綺麗好きである。


「味付けはなんでもいいが、基本は塩さね。用意してみな」

「はーい」


 マメーは岩塩の端っこを小さなノミとハンマーでちょこっと削って、それをすりこぎでごりごりする。


「できたよ!」

「はいよ。これに胡椒なんかを足してもいいが、今日はやらん」

「あい」

「んで卵を割る」


 マメーは台の上に置かれた卵を持つと、慎重な手つきでそれをボウルのへりにぶつける。

 コン。

 じっと見る。割れていない。


「ピフー……」


 黄色いのも緊張しているのか、ため息のような鳴き声を発した。


 コン。

 もういちどじっと見る。割れていない。


「……慎重だね」


 コン。

 ひびが入ったようだ。

 マメーは両手で卵を持って、ゆっくりとボウルにそれを割り入れた。透明な白身の中にぷるんと真ん丸の黄身が浮いている。


「できたよ!」


 ピキピーピューとゴラピーたちが鳴きながらぺちぺち手を叩いて拍手した。

 えへへとマメーが笑うが、まだ卵を割っただけである。


「はいはい、次行くよ。フライパンに油をひいて温める」

「なんのあぶらー?」

「何だって構いはしないが、その壺に入っているのは菜種だね」


 マメーは壺から油をフライパンにてろりと垂らすと竈のコンロ上に置く。


「温まったら、火から少し遠ざけて卵を入れな。低い位置からそっとだよ」


 マメーはそおっとボウルの卵をフライパンの中に入れた。

 ぱちぱちと油の跳ねる音がする。


「わ、わ」


 マメーはちょっと慌てたそぶりを見せるも、竈の火自体は普段から扱っているのである。じっと油が落ち着くのを待った。

 師匠は言う。


「塩はここでいれてもいいし、出来上がってから振ってもいいんだが、今日はここで振りな」

「ぱらぱらー」


 マメーはそう言いながら先ほど削った岩塩をぱらぱらとかけた。白身が透明から白に固まってきたころに師匠が言う。


「んで、それをへらでひっくり返す」

「ひっくり返すの?」


 師匠は頷いた。

 マメーはへらを白身の下に差し込み、えいやっとひっくり返した。


「ピキー!」


 赤いのがすごーいと鳴いた。

 端っこの方だけ少し折り重なってしまったが、綺麗に卵をひっくり返すことができたのだ。

 師匠は〈虚空庫〉からベーコンの塊を取り出して置いた。


「焼けたらそれを皿にうつしな。んで、ベーコンを切ってカリカリに焼いたのを添えるといい」

「わーい!」


 目玉焼きはベーコンエッグになった。マメーは出来上がったそれを食卓に持っていく。師匠は〈騒霊〉の術でゴラピーたちをのっている籠ごと食卓に連れて行った。

 さて、目玉焼きである。焼き色がつき、ほかほかと湯気が上がっている。マメーはじいっとそれを観察していた。


「見ていても仕方ないだろう。ほれ、食べてみな」


 マメーは師匠からナイフとフォークを渡された。


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― 新着の感想 ―
ターンオーバー!まあ、最初だしね。 次は目から怪光線を出しながら、サニーサイドアップかな。
ただただひたすらほっこりかわいい・・・(ごいりょく)
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