第2話:おししょーからまほーのなえをもらいました2
ξ˚⊿˚)ξ2話です!
今日は夕方にもう一話閑話もあげちゃう予定。
こほん、と師匠は咳払いを一つした。
「まあ待ちな、マメー、そいつはマンドラゴラじゃあない」
「でもマンドラゴラのなえなんでしょ?」
マメーは首を傾げる。人型も同じ方向に首を傾げた。二枚の葉っぱがふわりと揺れる。
師匠はマメーに膝の上にある本物のマンドラゴラをぐいっと突き出した。
茶色の恐ろしげな顔がマメーに迫る。だが、彼女は別にそれをこわがったりはしていない様子である。顔がこわいと思いはするが、ここは魔女の小屋なのだ。見慣れたものでもある。
「これと! それが! 同じに見えるのかい?」
「見えない」
マメーは鉢を机の上に置くと、赤い人型はよいちょと鉢から降りてきて机の上に立った。マメーは人型に向けて首を傾げながら問いかける。
「じゃああなた、しんしゅのマンドラゴラなのね?」
人型はぐいっと親指を立ててマメーに向かって突き出した。
「ピキー!」
「そうだって!」
師匠は大きく溜息を吐いて壁に立てかけていた杖を手にすると、その先端を無造作に赤い人型に向けた。
「〈鑑定〉!」
虹色の魔力の光が人型に向かい飛んでいき、吸い込まれていく。
「ピキュー!?」
赤い人型はびっくりしたように叫び、跳び上がった。しかし別に攻撃や呪いといった魔術ではない。人型は自分の身体が傷ついてないことを確認すると、師匠に向かってぶんぶんと手を振り、ちいさなちいさな指を突きつけて鳴いた。
「ピキーピキー!!」
「人に向かってむきょかでまじゅちゅをつかうのよくない! って言ってるよ」
「あんた人じゃないだろうに。なになに……なんだこの『おししょーの家でおししょーからもらった鉢植えから生まれた新種のマンドラゴラ』ってバカな名前は」
師匠には分かる。〈鑑定〉の魔術で学名が出てこず、明らかにマメーの意識による名前が出てきたということは、これは新種であり発見者がマメーであるという意味だ。
師匠は愚痴のように続ける。
「だいたいなんでこいつは赤いんだい。人参よりも真っ赤じゃないか」
「んー、はちうえが赤いからだと思う」
「そんなバカな話があるもんかい。じゃあこいつだったらどうだっていうんだ」
師匠は土と種の入った黄色い鉢植えを渡した。マメーが失敗した時用に用意していた予備の苗である。
「やってみる」
マメーは鉢植えを受け取ると、うんうんと唸りながら鉢植えに魔力を注ぐ。ぽん、と芽が出た。
根っこの方は黄色かった。
「あー……」
師匠が唸っていると、鉢植えの土がぷるぷると揺れて地中から何かが飛び出してきた!
それは赤いのにそっくりで、色だけ異なる黄色い人型だった。くりっとした目をマメーに向けて、両手をうーんと広げて伸びをするような動きを取った。
「ピー!」
それは妙に高い鳴き声を上げる。
マメーは叫んだ。
「かわいい!」
赤い人型は仲間が増えた喜びを示すかのようにぴょんとジャンプして鳴いた。
「ピキー!」
師匠は叫んだ。
「なんじゃそりゃぁ!」
師匠は大きく溜息を一つ。
「はあ、あたしゃ何だか疲れたよ」
「ししょーだいじょぶ?」
「ピキュー?」
「ピュー?」
マメーが首を傾げると、赤い人型と黄色い人型は同じように身体を傾けた。
「はいはい、心配してくれてありがとね。とりあえずあれだ。ちょっと休むが、その前に一つだけ決めとくれ」
「なあに?」
「そいつらの種族名だよ。マメー、あんたの作った新種のマンドラゴラなんだ。命名権はあんたにある」
「えーっとじゃあ……ピーってなくマンドラゴラだからピーマn……」
「そいつはすでに存在する植物だねえ」
「……ピーマンおいしくない」
マメーは苦味や辛味のある植物は苦手であった。
「ピキー」
「ほら、そいつもピーマンちゃんと食べろって言ってるよ」
「言ってないもん!」
「でも食べなさいね」
「……あいー」
しょぼくれたマメーはぴょんと飛んだ。
「じゃあ! ひっくり返してマンp」
「それ以上はいけない」
師匠は手を突き出し、マメーの言葉を遮った。
「だめなのー? んー、ドラってつけるとドラゴンっぽいよね」
「そうさね」
実際、竜を表す種族や魔術にドラコ・ドラグなどの接頭語がつくものは多い。
「じゃあゴラピー!」
師匠は考える。そのような名前の動植物や魔獣の名前は存在しなかった筈だ。新種の名前としては問題あるまい。
どことなく間の抜けた名前ではあるが。
「……まあいいかね。とりあえずあんたらの種族はゴラピーだ」
「ピキー!」
「ピー!」
二匹は両手を万歳するかのように挙げて鳴き声を発した。どうやら喜んでいるらしい。
「あたしゃそいつらの件を魔女協会に報告せにゃいかんしね。とりあえず休んでから手紙でも書くわ」
「マメーは?」
「いつも通りに薬草園の植物の手入れをしておいてくれ」
「あい!」
マメーが右手を挙げて了解の意を示せば、ゴラピーたちもまたマメーを真似ているのか右手を挙げてびしっとしたようなポーズを取る。
その身体はピタッと止まったのに頭上の双葉はその動きのせいでふわふわと揺れていた。
やはりどうにも間の抜けた生き物である。師匠はそう思いながら、小屋の奥の自室に引っ込んでいった。
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