表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】マメーとちっこいの 〜 魔女見習いの少女は鉢植えを手にとことこ歩く【コミカライズ】  作者: ただのぎょー
第二章:聖女なんていわれましても

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

175/203

第174話:ゴラピーがやっとつちでおねむできます!

 ミウリーの部屋にいる赤いゴラピーの檻の中に植木鉢が用意される。


「ピキー!」

「うん、きょうはおやすみよー」


 赤いのとマメーは互いに手を振り合った。マメーがゴラピーげんきでますよーに、と言いながら土を指先で掘って柔らかくし、ゴラピーはそこに潜り込んだ。


「ピキ〜」


 赤いのはお風呂にでも入っているように土の中から顔だけだして、安堵したような鳴き声を上げた。

 いつも土の中で寝ているのに、ここ数日はそれができなかったのだ。マメーの魔力で動けるとはいえ、やはり植物であるから土の中は安心するのだろう。


「じゃーねー」


 マメーはもう一度手を振り、ミウリーに杖を返して自分の部屋に戻った。

 部屋にもどってしばし休憩していると、修道女のナンディアとその後ろから神殿騎士がえっちら箱を持ってくる。

 騎士が持ってきたのはプランター、長方形の箱型の植木鉢であった。すでにミントの苗が植えられていて、葉っぱがちょろりと出ているのだった。


「ミントさん!」


 マメーはわーいと立ち上がる。


「どちらに置きましょう?」


 騎士が尋ねたので、マメーは日の当たる窓際に鉢植えを置いてもらった。騎士はすぐに礼をして立ち去り、ナンディアが尋ねる。


「これでよろしいですか?」

「うん!」


 そう言いながらマメーはベッド脇の水差しを持ってくると、ミントに水をちょろちょろかけた。


「ひりょーとかって、つかってないの?」

「あまり用意がないですね」

「ふーん」

「必要ですか?」


 ミントは繁殖力旺盛であり、地域によっては雑草とも扱われるほどであるが、鉢植えでの栽培でこの時期、この大きさなら少々肥料をやった方が本当は良いのだとマメーは知っている。

 実のところ魔力を扱わない農業についての知識も、世の中では失伝しているものがあり、植物を扱う魔女にのみ残っているようなものもあるのだった。

 さっきのおいもさんもあんまり肥料とかもらってなさそうだなー、とマメーは考えながらミントの葉っぱをじっと見て、首を横に振る。


「だいじょぶ。ミントさんげんきそうだし」

「左様ですか。何か必要になればおっしゃってください」

「あい」

「では私はお……」


 ナンディアが立ち去ろうとしたとき、マメーが手に魔力を込めた。


「〈はんもー〉」


 ナンディアの目の前で、もさあっ、とミントの葉っぱが増えた。すかすかだった鉢植えは、一瞬にしてもさもさである。爽やかな香りがナンディアの鼻をくすぐった。

 芋が育てられるのだから、ミントだって育てられるのである。当たり前のことではあるが、これもミウリー司祭に報告せねばなるまい。


「……私は食事の支度などしてきますので」

「はーい、いってらっしゃーい」


 マメーが手を振り、ナンディアが部屋を後にした。扉がぱたんと閉まると、マメーはすぐにベッドへと駆け寄って、その下を覗き込む。


「ゴラピー、でておいでー」

「ピー」

「ピュー」


 鳴き声をあげて、のそのそと黄色いのと青いのが出てくる。


「ピッ」

「ピュッ」


 はいっと手をあげるゴラピーたちを見てマメーは笑みを浮かべた。彼らの頭上の葉っぱももさもさしていたからだ。

 以前、師匠の前で〈繁茂〉の魔術を使った時は、ゴラピーたちはマメーの魔法を全部吸ってしまっていたが、今回はちゃんとミントにも魔法がかかっている。


「マメーがまほーつかうのうまくなったからかな? それともゴラピーがとおくにいたからかな?」


 んー? とゴラピーたちは首を傾げた。葉っぱがもさりと揺れる。師匠がいれば答えてくれたのかもしれないが、今はわからない。ともあれだ。


「ゴラピーたちもミントさんたちといっしょに、うえられてるといいよ!」


 マメーがミントの鉢植えを部屋に要求したのは、黄色いのと青いのを隠しながら土で休ませるためである。


「ピー!」

「ピュー!」


 黄色いのと青いのは嬉しそうにぴょんと跳ねた。そしてマメーの手をつたって、いそいそと植木鉢の中に入っていく。マメーは先ほどやったのと同様に、土を掘り、ゴラピーたちはそこに潜っていった。

 よし、とマメーは満足して頷いた。

 その日は昼に芋を育てたが、それ以外は特に大きな出来事はなく、昨日までと同様であった。

 そして夜、ベッドの上でマメーはぱんと手を合わせた。

 これも日課となっている祈りである。


「あるかなのかみさま。ししょーとあえますよーに。ゴラピーがぶじでありますよーに」


 祈りもまた魔術の一形態である。マメーは感情や強い思いを魔力に変えられる魔女の一員である。それも星五の才能を有するほどの。

 そんなマメーの心からの祈りなのだ。


「ふあぁっ……ねよっと」


 マメーはあくびをひとつ。ベッドの上にころんと横になって布団に身を包んだ。すぐにすやすやと寝息が聞こえ始める。

 きょうこの日まで、マメーの祈りは実を結んでいない。ゴラピーは無事であるとはいえるかもしれないが、師匠と会うことはできていない。

 当然なのだ。祈りというのは、願いを聞き届けるものが必要なのだから。この部屋に彼女のたすけとなるものはいなかった。……だが、今はいるのだ。それは秘儀の神々でもなければ、神殿の奉じる神でもない。

 月光に照らされるミントの葉っぱが、もさり、と風もないのに動き始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


『マメーとちっこいの〜魔女見習いの少女は鉢植えを手にとことこ歩く①』


2025年2月20日発売


画像クリックでTOブックスのページへ飛びます

i913987

『マメーとちっこいの〜魔女見習いの少女は鉢植えを手にとことこ歩くコミカライズ』


2025年2月17日連載開始


画像クリックでコロナExのページへ飛びます

i933786

『追放された公爵令嬢、ヴィルヘルミーナが幸せになるまで。 ~最強の平民、世界に革命を起こす~』


2024年11月12日発売


画像クリックでAmazonのページへ飛びます

i662244

『朱太后秘録 私が妃なんて聞いていませんが!』


2024年10月8日発売


画像クリックでコミックグロウルのページへ飛びます

i662244
― 新着の感想 ―
ナンディアはミウリー司祭側でやっぱり監視役かあ
ミントさんが本気だしたらどうなるんや((( ;゜Д゜)))
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ