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【書籍化】マメーとちっこいの 〜 魔女見習いの少女は鉢植えを手にとことこ歩く【コミカライズ】  作者: ただのぎょー
第二章:聖女なんていわれましても

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第166話:ぽんってしました!

 聖堂を出て、修道士たちの宿舎を越えて、さらに裏手に向かうと孤児院がある。その横手には小規模な畑が広がっていた。

 畑には畝に沿っておよそ等間隔に、緑の葉っぱが茂っている。


「ここはー……おいもさんのはたけ!」


 マメーはぐるりと畑を見渡した。うーん、と唸る。


「おいもさん、あんまりげんきないねー?」

「私に言われてもわからん」


 マメーの問いに、ミウリーは興味なさげにそう答える。ナンディアがマメーのそばに近づいて答えた。


「例年とあまり変わらないかと思いますが……」

「うーん?」


 マメーは首を傾げる。

 実のところ、これはマメーの感覚の方がずれているのである。彼女にとっての『元気な』植物とは、植物系魔術の才能五つ星である彼女自身が丹精に育てた植物であり、世界で最高のものであるからだ。


「この孤児院において、子どもたちの食糧は信徒の方々からの寄付によって充分に賄われております。ここは彼らに農業を教えるための土地ですから、農家と比べるとあまり管理が行き届いておらぬのでしょうか」


 つまり一種の就労体験である。もちろん子どもたちがサボっているというわけでもない。ただ、マメーの基準が高いのである。


「ま、いっか」


 マメーは深く考えはせずに、こてんと首を傾げて尋ねる。


「どーするの、マメーもここでおいもさんそだてればいーい?」


 豊穣の聖女たる素質があれば、品質的に優れた芋を栽培できるのかもしれない。だが、それには時間がかかる。可能ならば他のことをさせたいものだとミウリーは考え、問うた。


「マメーよ、汝がこれを『元気がない』と言うのであれば、これを元気にすることはできるかね?」


 むむ、とマメーは考える。


「ピキキー?」


 ゴラピーも真似しているのか籠の中で首を傾げる。


「おいもさんをげんきにするまほー……」


 マメーは意識してそんな魔法を使ったことはない。マメーの育てる植物はちゃんと元気に育つからだ。

 魔術の名称で言えば〈豊穣〉や〈植物祝福〉ということになるが、実のところマメーはいつも日々の世話の中で無意識にそれを使っているのだ。

 マメーは何をすれば良いのか思いつき、ぱっと顔を輝かせた。


「さきにたっぷりおみずあげてもらえる? それとー、つえがほしーなー」

「子どもたちにやらせよ。杖はかつての聖女がためのものがある。それを貸与しよう」


 ミウリーがナンディアらに命じ、子どもたちによって畑にたっぷりの水が撒かれ、マメーに一本の純白の長杖が渡された。マメーの背丈よりも長い杖である。師匠の杖はねじくれて先端に大きな虹色の宝玉がはまっているが、これは真っ直ぐで、先端には無色の輝く宝石がはめられた優美な杖であった。


「ふおぉぉ」


 マメーは感嘆の声をあげた。そこに声がかかる。


「おい、そこのちびすけ」


 水やりをしていた少年であった。


「ちびすけじゃないよ、マメーだよ」

「そうか、マメーは孤児院にくるのか?」


 少年といっても、いま畑にいる孤児たちの中では最も体格が良く、年長に見える。彼らのリーダーなのであろう。

 マメーはぷるぷると首を横に振った。


「いかないよ」

「そうか。何してんだ?」

「マメーにねー、このおいもばたけに、まほーつかえってミウリーが」


 ぎょっと少年は驚いた表情を浮かべる。


「ばか、ミウリー司祭様だ」

「みうりーしさいさま」

「まあいいや、畑をダメにするなよ」

「あい」


 彼らが育てている畑なのだ。マメーは神妙に頷いた。


「お前、魔術師なのか?」

「うーん、マメーはまじょみならいだよ」

「魔女……何をするんだ?」

「どんどんぴーってする」

「は?」


 少年は続けて何か尋ねようとしたが、彼らが水やりを終えると人払いがなされたため、孤児院の方に連れて行かれてしまった。畑の前にはミウリーとナンディア、マメーと赤いゴラピーしかいなくなる。


「ではやってみせよ」

「あい」


 マメーは魔力を集中させる。


「ぷりみちぶなじゅじゅちゅ……」


 ランセイルが言っていた、原始的な呪術の形。マメーはしゃらりと杖を掲げた。前にどんどんぴーした時はなかった杖を要求したのには理由がある。

 杖とは魔術の補助具である。色々な効果はあるが、特に魔術の精度を高め、指向性を持たせることに長けているのだ。師匠が〈鑑定〉の魔術など繊細なものを使うときは必ず杖を使うのはそのためである。

 マメーは師匠が『それなら約束しな。歌や踊りに願いを込めるなら、しっかり範囲と効果を限定するんだ』と言ったことを覚えている。だから杖を要求したのである。

 マメーは杖の先端で地面を突いた。


「どんどんぴー」


 太鼓と笛の音を模してそう口ずさむ。


「ピキ?」


 ゴラピーはマメーを見上げて鳴いた。


「どんどん」


 マメーは言葉に合わせて、足で地面を踏み、畑の周りを歩む。


「あははー、どんどんどん」


 マメーは楽しくなってきた。部屋の中に閉じ込められるよりもお外にいた方がいい。植物と触れ合う方がいい。土の匂いが嬉しい。魔術は楽しい!

 赤いゴラピーは檻の中でピキーピキーと鳴いて、マメーに合わせててちてち足踏みを始めた。


「どんどんばーん!」


 マメーが軽く飛び跳ね、杖を振り回して畑に向けて、両足でばんと地を踏んでポーズを決める。

 ぶわり、とマメーの身体から魔力が波のように放たれた。


 にょきにょきもさぁっ!


 おいもは茎をぐんぐん伸ばし、緑の葉っぱをもさもさ茂らせた。

 ミウリーは叫んだ。


「なんなのだそれはっ!」

明日はコミカライズのチェックあるし更新お休みにしようかな?


うん、今週は火と土をお休みにします。

よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
なってねぇなぁ司祭!そこは「なんじゃぁそりゃぁ!」だろうが!!!
見える 見えるぞ ボヘミアンなラプソディが
最もフィジカルで、最もプリミティブで、そして最もフェティッシュな呪術( ˘ω˘ )
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