表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】マメーとちっこいの 〜 魔女見習いの少女は鉢植えを手にとことこ歩く【コミカライズ】  作者: ただのぎょー
第二章:聖女なんていわれましても

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

165/203

第164話:ないよ……でございますことよ?

「本日は午後より聖堂にてミウリー司祭とご面談の予定がございます」

「あい」


 朝食の最中、ナンディアがそうマメーに告げ、マメーはパンをもぐもぐしながら頷いた。

 ミウリーとは赤いゴラピーと会う時など顔を合わせているが、こういった形で呼び出されるのは初めてである。当然攫ってくるだけが目的ではないのだから、なんかやらされるのかなーとマメーは思った。

 午前中は神殿の経典を読まされ、礼儀作法の勉強もしてから、マメーは人払いされてひとけのない神殿の聖堂に連れて行かれる。伏目がちにしずしずと中央へと進めば、奥の祭壇には白の法衣を纏ったミウリー司祭がいた。

 マメーは身体の前で聖印を手で描いてから、手を胸の前で組んで腰を折る、神殿の修道女式の礼をした。この数日で教えられていた礼儀作法である。そして挨拶の口上を述べるのだった。


「ばんちょーたるいだいなかみをほーするしんでんがしさい、ミウリーさまにせーじょみならいたるマメーがごあいさつもーしあげます」


 めっちゃ棒読みであった。しかも間違えている。


「うむ、挨拶感謝する。直るが良い」


 マメーはぴょんと頭を上げた。お辞儀の所作は悪くなかったが、頭を上げるのに元気が良さすぎる。まあ、教養もない田舎娘なので、めくじらを立てることもない。ゆっくり矯正させれば良いとミウリーは思う。


「だが間違えておるな。万物の長たる、だ。繰り返すが良い」

「ばんちょーたる」

「略すでない」

「りゃくすでない」


 マメーの背後に控えているナンディアが思わず吹き出した。ミウリーはそちらをじろりと睨み、ナンディアは慌てて口元を隠す。


「万物の長たる、だ」

「ばんぶつのちょーたる」

「……まあ良いか」


 発音が変なのが気になるが、それもおいおいだ。


「して、マメーよ」

「あい」

「今日呼び出したのは他でもない。汝の聖女たる資質を見せるが良い」

「んー?」


 マメーはこてんと首を傾げた。


「マメーはマメーのことをせーじょとはおもってないけど、せーじょのししつってなーに? ……でございませうか?」

「枢機卿猊下が汝を聖女であると仰ったのだ。その力である」


 なるほど、その『すーききょーげーか』なる人の発言で、こうして連れてこられたのかとマメーは考える。だがそれはそれとして……。


「マメー、すーききょーげーかにあったことないよ? ……でございますことよ?」

「うむ、だがサポロニアン王都の神殿にてそう仰ったのだ」


 んー……、とマメーはしばし首を捻り、はっと気がついた。


「ゴラピー!」

「ピキー!


 祭壇の裏から赤いゴラピーの声がした。

 マメーはとてとてとそちらに駆け寄ると、籠の中に入れられたゴラピーを見つける。うんしょ、と籠を持ち上げて、とてとてミウリー司祭の前に戻ってきた。


「はい、これ」

「ぬ……汝の使い魔がどうした」

「そのすーききょーげーかは、ゴラピーをみてマメーをせーじょっていったはずだから、ゴラピーがせーじょのししつだよ。……でごじゃいましゅよ?」


 ミウリーは、はぁとため息をつき、どかりと椅子に腰を下ろす。


「普通に話すが良い。なぜこの使い魔が聖女の資質なのだ?」

「なんですーききょーげーかがそういったかはしらないよ。でも、ゴラピーをいっぴきルナちゃ……ルナおーじょでんかにわたしてるから、それをみてそのひとがそういったのだとおもうよ」


 ミウリーはマメーの持つ籠を受け取って持ち上げ、赤いゴラピーにうろんげな視線を向ける。


「ピキ?」

「これを王女殿下に……?」

「ん」


 王宮でルナ王女の呪いを解いた話がなされた可能性もあるが、それは師匠が〈誓約〉の魔術で口外を禁じているから、おそらくそれとは関係ないとマメーは考える。だが、ミウリーにそこまで伝えはしない。


「どうしてこれを献上したのだ」

「ルナおーじょでんか、ゴラピーのこときにいってたの」


 マメーはミウリーの言葉に素直に答える。〈隷属〉の魔術をかけられるわけにはいかないので、捕えられてからずっと協力的な態度を示している。

 そして嘘もつかない。師匠の教えには『高位の魔術師や魔女と話す時に嘘をつくべきじゃないねぇ』というのがあった。これは、相手が〈嘘感知〉の魔術を使っている可能性があることを想定している。実際、師匠の森の家の入り口には、嘘や悪意に反応する水晶の魔道具が置かれているのだ。

 だが、嘘はつかないが真実を語る必要はない。ルナ王女がゴラピーを気に入っていたのは本当のことだが、ゴラピーをあげた真相は、彼女の魔力をゴラピーに吸収させるためである。


「そんな王女殿下が気にいるような生き物には見えないがな……」

「ピキー! ピキー!」


 籠の中でゴラピーがぷんぷんと抗議の声を上げた。

 うむむ、と唸ってミウリーは懐から黄金の短杖を取り出すと、その先端をゴラピーに向けた。


「〈鑑定〉!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


『マメーとちっこいの〜魔女見習いの少女は鉢植えを手にとことこ歩く①』


2025年2月20日発売


画像クリックでTOブックスのページへ飛びます

i913987

『マメーとちっこいの〜魔女見習いの少女は鉢植えを手にとことこ歩くコミカライズ』


2025年2月17日連載開始


画像クリックでコロナExのページへ飛びます

i933786

『追放された公爵令嬢、ヴィルヘルミーナが幸せになるまで。 ~最強の平民、世界に革命を起こす~』


2024年11月12日発売


画像クリックでAmazonのページへ飛びます

i662244

『朱太后秘録 私が妃なんて聞いていませんが!』


2024年10月8日発売


画像クリックでコミックグロウルのページへ飛びます

i662244
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ