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【書籍化】マメーとちっこいの 〜 魔女見習いの少女は鉢植えを手にとことこ歩く【コミカライズ】  作者: ただのぎょー
第二章:聖女なんていわれましても

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第161話:ししょーにおてがみとどいた。

 ブリギットとウニーは空を飛んでいた。

 魔女協会の城を吹き飛ばし、協会長のカンディラにグラニッピナからの手紙を渡して、その返事を書かせた後のことである。

 今はその手紙を懐に、グラニッピナの住む森の庵へと向かっているところだ。

 天気は良く、蒼穹を切り裂くようにブリギットの箒が飛んでいく。ブリギットの操縦が荒いのは主に離着陸時や突如曲芸飛行を始めた時であるので、今はウニーもブリギットの背に掴まって、眼下の景色を見る余裕もあった。

 麦畑や牧草地の緑の間を街道が縫うように走り、その交わるところには町や村が点在する。そしてそれらはだんだんと少なくなり、広大な森へと差し掛かった。もうすぐ、マメーたちの住む庵だ。

 きっとまた師匠は急降下するに違いない。きゅっとウニーが回す手に力を入れ直した時である。


「あら?」


 ブリギットが疑問の声を上げるとともに、目をすがめて額に手をかざした。

 前方遠くに何か気になるものがあるようだ。


「どうしました、師匠?」

「ふーん、煙が上がっているわ。狼煙か火事か……」


 ウニーが問えば、ブリギットは呑気にそう答える。


「大変じゃないですか!」

「でもこれ、お婆ちゃん家じゃないわね。その向こう、エベッツィー村だわ」

「……あぁ」


 エベッツィー村と言えばマメーの生まれ故郷であり、マメーを虐げてきた実家のある村である。良い印象はないが、それでも火事となればまた別であろう。


「ま、急ぐわよ」

「はいっ……ひゃあーっ!」


 ブリギットが箒を加速させ、空にはウニーの悲鳴が響くのだった。


「……あら、お婆ちゃんじゃない。……何してんの?」


 地面に降り立ったブリギットがそう声を発した。

 降りる前から分かってはいたが、燃えているのは村全体ではなく建物の一つであった。そして村にはなぜか人の気配がなく、その燃えている建物の前にグラニッピナとランセイルがいるのが見えていたのである。

 ランセイルはブリギットに頭を下げ、グラニッピナは答える。


「神殿の祠を燃やしている」

「なんで」

「マメーの戸籍がここに残っていたからね。それを無くしてるのさ」

「へえ?」


 らしくない、とブリギットは思う。

 姉弟子はマメーがきて丸くなったが、元々は敵対者に容赦しない性格ではあった。だが、それでも魔女である以上、知識の蒐集家でもあり、決して書を焼くような真似はしないのだが。

 よろよろとウニーがブリギットの腰から離れて地面に降りると、きょろきょろと左右を見渡した。


「こんにちは、グラニッピナ師匠。……今日はマメーちゃんはいないんですか?」

「攫われたよ。神殿の奴らにね」


 グラニッピナは吐き捨てるようにそう言った。


「ええっ!」

「あら」


 ウニーが驚愕し、ブリギットは意外、というように声を漏らす。


「お、追いかけないんですか!?」

「お婆ちゃんが出し抜かれるなんて、何があったの?」

「血統と戸籍を利用した転移術が神殿の秘術にあるんだけどね、そいつを使われたから単純に追いかけられないのさね」


 師匠は何があったのかをブリギットとウニーに説明した。


「ひどい!」


 ウニーは憤慨する。ブリギットは頬に手を当てて言った。


「やっぱ協会長は一発のしとかないとダメだったかしら?」

「あれはお前さんじゃムリだね」

「そうよねぇ」


 はぁ、とブリギットは嘆息した。

 ランセイルがおずおずと、しかし好奇心を隠せずに問う。


「魔女協会にはそれほどの強者がいらっしゃる?」

「そりゃ魔女の頂点の一人だってのもあるし、相性もあるね。あれに攻撃通せる魔女はそういないんだが」


 ウニーは思う。城一つ吹き飛ばしても、中にいたはずの協会長は傷ひとつ負ってないように見えたものなあと。


「グラニッピナ師はいかがでしょう」

「そりゃお婆ちゃんはやれるわよ。協会長だって殺せる魔術を開発してたものね」


 ブリギットの言葉にランセイルが問う。


「あの〈滅び〉という魔術でしょうか?」

「……ちょっと、お婆ちゃん?」

「つい、かっとなってやった。ちょっとは反省している」


 まあ、マメーを攫われたとなればそれも仕方ないのかとブリギットは思う。

 師匠はブリギットに手を差し出した。ブリギットは協会長からの手紙をそこに置く。師匠はそれに目を通すこともなく懐にしまった。そしてブリギットに頭を下げる。


「ありがとうよ。それでな、すまんのだが」

「謝る必要はないわ。お婆ちゃん。マメーならあたしにとっても弟子みたいなものだわ」


 ブリギットは姉弟子の肩に手を置き、頭を上げさせる。そしてウィンクを一つ。


「最速の魔女が入り用でしょう?」

「ああ、必要だ。サポロニアンに一っ飛び頼むさね」

「お安い御用よ」

「ランセイルを連れていってくれ」


 ランセイルが驚いて問う。


「不才をですか?」

「王と王女に報告しな。神殿にも圧をかけさせるんだ。あんたが行った方がいいだろ」

「御意」


 箒は乗れて二人までであるから、ウニーはグラニッピナが預かることになる。ウニーが尋ねた。


「私たちはどうするんですか?」

「マメーを救うには神殿の契約を破棄させにゃならん。ここの戸籍は男爵領の神殿にも送られてるはずだから、まずはそれを潰す。そしたらマメーを探すさね」

「はい」


 ランセイルはブリギットの箒の後ろに跨った。


「じゃあいくわよ。あたしの身体にしっかり掴まってなさい。遠慮すんな。いい? 離したら死ぬわよ? 〈遥かなる空の彼方へ〉」

「う、うわあーっ!」


 男の悲鳴が天高くに消えていった。

ちなみにランセイルが〈束縛〉して忘れられている神殿の従者たちですが、スタッフ(狼)がおいしくいただいたと思います。


さて、本日11/12はコミカライズ版『ヴィルヘルミーナ』の発売日です!

既に店頭に並んでいるところもありますが、私は今日買いに行ってきます。

皆様もよろしくお願いいたしますー。

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― 新着の感想 ―
スタッフがおいしく頂いたの好きすぎる!! この作品大好きです!!!!!!
『ヴィルヘルミーナ』の発売おめでとうございます!!
ばあちゃん、こわい。そこにしびれる。
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