第16話:あさおきたらおはよーっていえるあいてがふえたのはうれしいのです!
ξ˚⊿˚)ξ連載再開ですわ!
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ぱちり、とマメーは目を開いた。窓の板の隙間がぼうっと白く光っている。
「……あさ」
むくりとマメーは起き上がった。くしくしと片手で顔の目のあたりをこする。
ベッドから降りると、暗い部屋の中を慣れた様子でぺたぺたと歩き、窓の方へ。
「よいしょ」
跳ね上げ式の、窓の木板をがたんと上げる。部屋に朝の爽やかな陽射しと空気が入ってきた。
つっかえ棒で窓の木板を固定して、いつも通りに明るくなった部屋を見る。
「……えへへ」
いつもと変わらぬ部屋、ではない。ベッド脇の机の上に師匠から貰った見習い魔女のメダルと、赤と黄色の二つの植木鉢が置かれているのだ。それらの土からは緑の双葉がぴょん、と元気よく天に伸びていた。
昨日生まれた新種のマンドラゴラ、ゴラピーである。それを見てマメーは笑みを浮かべたのだった。
とてて、と鉢植えの方にかけよる。
「うーん。ゴラピー、まだねてるのかな」
マメーはそっと葉っぱに手を当てる。お芋を抜くように茎を引っ張れば、すぽんと抜けて出てくるような気もしたが、それもなんか痛そうな気がする。
植物であっても人型であるから、頭の上の茎を引っ張られるのは髪の毛を引っ張られるような気がしてしまうのだ。
「うーんと、しょくぶつをおこすんだから……そうだ!」
マメーは鉢植えを抱えると、窓の方に持っていって葉っぱに光を当てた。
「よし」
マメーは植物に光が当たると起きてくる、元気になるのを知っているのだ。
マメーがその場から離れ、寝巻きから見習い魔女のローブに着替えていると、はたしてすぐに鳴き声がした。
「ピキー!」
「ピー!」
マメーがそちらをみれば、ゴラピーたちは土の中からぼこんと上半身を出し、空に向かって小さな両腕を上げて、うーんと伸びをしていた。
「おはよ、ゴラピー」
「ピキー!」
「ピー!」
マメーが近寄り、かがみ込んで声をかければ、二匹は土の中から足を引っこ抜いてマメーのほうに向き直ると、揃った動きでぶんぶんと右手を振った。
「げんき?」
そう尋ねるとゴラピーたちはうんうんと頷いた。マメーはにっこり笑って言った。
「それじゃいこっか」
マメーがそう声を掛ければゴラピーたちはぴょんと植木鉢から飛び降りて、てちてちとマメーの足元で歩き出す。マメーは彼らにぶつからないように、そっと部屋の扉を開けた。
マメーは台所に行って水瓶から水を汲み出してばしゃばしゃ顔を洗い、口をすすぐ。
ゴラピーたちは水に手をつけてふいーっと息をつくような仕草をしていた。水を飲んでいるのかなとマメーは思う。
彼らが満足したのか水から離れるのを待って、入り口のところの部屋に向かった。
「ししょーおはよー!」
「ピキー!」
「ピー!」
部屋に入ると師匠が椅子に座ってお茶を飲んでいた。匂いからして薬草茶だ。香りは良いが、マメーには苦くてあんまり好きじゃない味のやつである。
師匠はゆっくりと手を上げて挨拶に答えた。
「ああ、おはよう」
「きらきらいっぱい!」
マメーは叫んだ。
卓の上、師匠の手元にはいくつもの宝石があったのだ。それといくつかの液体が入った瓶が。それらは朝日を浴びてきらきらと煌めいていた。
「えっとー、ルビー! ダイヤモンド! すいしょー! それとー……」
マメーが一つづつ宝石の名を呼ぶ。白っぽいけど虹色に光る石の名前はなんだっけ。マメーがそう思っていると師匠が答えた。
「こいつはオパールさね、ホワイトオパール」
「オパール!」
そうだったそうだった。マメーは頷いて、黄緑色に輝く宝石を指差す。
「これが……クソリベラル!」
「クリソベリルな!」
魔術には輝石・宝石がしばしば使われる。石には魔力が宿るからだ。師匠はたくさんの宝石を持っているし、マメーも石の勉強をしているが、植物とは違ってこちらはまだまだである。
「むじゅかちい……」
マメーがそう言うと、下から鳴き声がした。
「ピキー!」
赤いゴラピーは卓の脚にしがみついていた。卓の上に登りたいようだ。
「ピー!」
黄色いゴラピーはマメーを見上げて両手を挙げた。抱っこを求めているように。
「あいあい」
どうやら二匹とも卓上が気になる様子だ。マメーはゴラピーたちを順に抱き上げると、卓の上に載せてやった。
「ピキー」
「ピー」
ゴラピーたちは感謝の声を上げると、てちてちと宝石のほうに近寄っていく。
品定めでもするかのように、じっと自分たちの頭ほどの大きさもある宝石を覗き込み始めた。
「きらきらたのしい?」
マメーが問えば、ゴラピーたちはこくこくと頷いた。
宝石をぺちぺち叩いたり、顔の高さに持ち上げたりする。師匠も何をしているのか気になるのか、特に口を挟むこともなく、彼らの様子を眺めていた。
「ピキー!」
「ピー!」
二匹は揃って同じ石を指差した。それはオパールであった。
「そうかい、それが気に入ったのかい」
ゴラピーたちは頷く。
「ふん、じゃあそれはあんたらにやるよ」
師匠は笑みを浮かべた。ゴラピーたちはやったあというようにぴょんと跳ねると二匹がかりでオパールを頭上に持ち上げる。
マメーはびっくりして言った。
「ししょーのきまえがいい!」








