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【書籍化】マメーとちっこいの 〜 魔女見習いの少女は鉢植えを手にとことこ歩く【コミカライズ】  作者: ただのぎょー
第二章:聖女なんていわれましても

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第154話:なんかふえてる。

「ゴラピー、どこー?」


 ベッドの下は暗くてよく見えない。マメーは外にいるナンディアたち修道女に聞こえないよう、小さな声で呼びかける。


「ピー」

「ピュー」

「ちゅー」

「……なんかふえてる」


 マメーは慌てて身を起こした。

 すると、ベッドの下からてちてちと黄色いのと青いのが姿をみせ、そしてその間に挟まれるようにして、ゴラピーよりもちっちゃな一匹の茶色いねずみがあらわれたのだった。


「ちゅー」

「ねずみさん! ……どうしたの?」

「ピー」

「つれてきちゃったの! ……んー、おいで」


 マメーが床に手を広げると、ゴラピーたちとねずみは、マメーの手のひらの上によじよじと登った。

 マメーは彼らを連れて椅子に戻ると座り直し、膝の上に彼らを置く。

 マメーはフィンガーボウルに手を入れてちゃぷちゃぷ洗う。


「んー、でもねずみさん。よごれてないのね?」

「ピ!」


 黄色いゴラピーが元気よく手をあげた。


「きれーにした」

「ピ」


 黄色いのは頷く。


「ししょーがゴラピーたちに〈じょーか〉がかかってるっていってたけど、それかな?」


 外を歩いていてもゴラピーたちの身体が汚れた様子がないというものである。その能力でねずみもきれいにしたのだろうか。

 膝の上のねずみは、かさかさとマメーの膝の上を歩き始めた。


「ピュ」


 青いゴラピーがねずみをあまり動かないようにと抱える。


「ちゅー」

「ピュー」


 マメーは動物系の魔術が使えるわけでもないし、ゴラピーとねずみの間に言葉が通じている様子もないが、何やら仲良くやっているようだ。


「あるかなのかみさま、きょうもごはんありがとうございます」


 マメーは秘儀の神々に祈りを捧げて食事を始める。ナンディアが戻ってきたときに食事が進んでいなければ不審に思われてしまうだろう。

 白くて柔らかいパンをちぎって口に運び、もぐもぐしながらマメーは尋ねた。


「それで、なんでねずみさんつれてきたの?」

「ピーピー」

「ピューピュー」

「ふむふむ」


 彼らの話すことによると、ベッドの裏、建物の壁と床の隙間に彼らがやっと通れるくらいの小さな穴が空いていて、そこをこのねずみが出入りしているのを見つけたという。

 こんな立派な聖堂でもねずみさんとかいるんだなあとマメーは思った。いや、立派で大きいからこそなのだろうか。実際のところ、聖堂自体にはねずみなどいない。食べるものなどないためである。こちらは修道士たちの宿坊であるから、食べるものがあって、ねずみたちも住んでいるのだ。


「そのあなをつかって、ていさつにいく」

「ピ」

「ねずみさんに、あんないをたのみたい」

「ピュ」

「そのおれいにたべものがほしい?」

「ちゅー」


 なるほど、とマメーは思った。お仕事を頼むなら対価が必要である。

 マメーはパンを自分が食べるよりもさらに小さくちぎって、膝の上に落としていく。ねずみはすかさず駆け寄って、パンを両手で持ちあがて齧り始めた。


「まだたべる? チーズはどうかしら?」


 ねずみはかりかりと一心不乱にパンを食べているので、マメーはパンをもうひとかけらと、チーズも膝の上に置いてやった。

 ねずみが頭を上げて、すんすんとチーズの匂いをかぐ。

 その時だった。扉がノックされたのは。そして扉の向こうからナンディアが入室を求める声がした。


「ひゃ、ひゃい! ちょっとまってね!」


 マメーはびくりと身を震わせる。

 ゴラピーとねずみたちもマメーの膝の上を右に左にと慌てる。


「みんな、いって!」


 マメーがそう言うと、ねずみはパンを口に咥えたまま、ゴラピーたちは頭上にパンのかけらとチーズのかけらをのせて、マメーの着る法衣の裾をつたって、床へと降り立った。


「それじゃあゴラピーがんばって! ねずみさんもよろしくね!」


 ゴラピーたちはベッドの下に向かっててちてち走り、途中で一度振り返って手をぶんぶん振って、再びてちてち走ってねずみと一緒にベッドの下へと消えていった。

 マメーが椅子に座り直してふー、と息をついたところで、部屋の扉が開きナンディアが戻ってくる。

 彼女はきょろきょろと部屋を見渡した。


「いま、どなたかいらっしゃいましたか?」

「いいいいいいないよ?」

「そうですか……。マメーさん、どうかされました?」

「な、なんもしてないよ!」


 マメーはぷいっと目を合わせず、パンを口に運ぶ。ナンディアが身を屈めてマメーと目を合わせようとすると、マメーは逆側をぷいっと向いた。


「あーおしょくじおいしーなー」


 とても棒読みであり、とても不審であった。そもそもパンばかりを口にしていて、他の料理がほとんど減っていない。


「そうですか、お肉やスープもしっかり召し上がってくださいね?」

「ひゃい!」


 マメーは慌ててスプーンを手に取る。

 先ほど風呂で、マメーは嘘つかないと言っていた。だがこれは嘘をつかないのではなく、嘘がつけないのではないかなとナンディアは思ったのであった。

明日明後日は更新をお休みします。

次回は日曜日に投稿の予定ですー。

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― 新着の感想 ―
明るい兆し(ねずみ)がいいですね 拐われて1日で目まぐるしい展開が凄い
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