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第15話:おやすみ、ゴラピー。

 マメーは夕飯を作る。師匠はしばしば薬作りや魔術の儀式、研究で一緒に食事をとれないことが多いのだ。一人でご飯を食べたり、一人で寝るのは慣れたものである。

 マメーは台所に連れてきたゴラピーたちに師匠の仕事について説明する。


「ししょーはいそがしい」

「ピキー」

「ピー」


 師匠があらかじめ作っておいてくれたミートローフがオーブンの中に入っている。〈保温〉の魔法が使われているから一昨日作ったものだがほかほかと湯気をあげていた。

 マメーはそれを包丁でスライスして皿にのせる。

 とうもろこしや豆、カットされたにんじんなどの付け合わせもお玉でミートローフの隣に盛った。


「きょうのおくすりはまんげつのひかりをあてなきゃいけないとか。まじゅちゅぎしきはおほしさまがちゃんとしてないとダメとか。むずかしい」

「ピキー」

「ピー」


 高度な儀式は単に呪文を唱え・身振りをすれば良いというものではない。魔法陣を描き、贄を用意するなどの準備をした上で星辰が(おほしさまが)揃って(ちゃんとして)ないと使えないものもあるのだ。


「ゴラピーたちはなんかたべる?」


 ゴラピーたちはぷるぷると首を横に振った。そして赤いゴラピーがちっちゃな指で水がめを差した。


「ピキー」

「おみずだけほしい」

「ピー!」


 マメーがそう言えば黄色いゴラピーがその通りとぴょんと跳ねた。

 マメーは焼いてあるまんまるなパンを温めなおして、壺に入っているやはり温かいシチューを皿に入れ、ミートローフと一緒に卓に持っていった。

 水はボウルに入れて卓に持っていく。


「ごはんできた!」

「ピキー!」

「ピー!」

「あるかなのかみさま、きょうのごはんをありがとうございます!」


 マメーは両手をぱちんと合わせて秘儀アルカナの神々への雑な食前の祈りとした。

 ミートローフにフォークをずんっと突き刺して口に運び、あむあむと噛み締める。素朴な料理ではあるが、一般的な平民よりもずいぶんと良いものを食べさせてもらっている。少なくともマメーがここに来るより前、こんなにおいしいものを食べさせてもらうことはなかった。

 マメーはシチューをスプーンでひとさじ口に運んで言う。


「おいしい!」

「ピキー!」

「ピー!」


 ゴラピーたちはわあいと喜びの声を上げると、よいちょとボウルのへりを乗り越え、ボウルの水に身を浸した。


「ピキ〜」

「ピ〜」


 くつろいだ表情で気の抜けた声を出す。


「ふふ、おふろはいってるみたい」


 マメーは楽しかった。森の奥で師匠と二人ぼっちの暮らしである。師匠は優しいがこうして食事時にもお仕事をしていることは多い。

 来客は珍しいし、共に食卓を囲む機会はさらに少ない。同年代の子など当然いない。師匠の使い魔たちは彼女にとってもお友達であるが、家の中に住んでいるのはいない。

 寂しくないかと言えばやはり寂しいのである。ゴラピーたちは彼女にとってとても嬉しい存在であった。


「ねっこから水をすってるの?」

「ピキ」

「ひりょうとかはいらない?」

「ピー」

「そっか、まりょくか」


 マメーが魔力を得てそれをゴラピーたちに分け与えるというのが、マメーの魔法なのだ。説明されたわけではないがマメーはそれがこの現象だと理解していた。


「ごちそーさまでした」

「ピキー」

「ピー」


 お話ししながら楽しい食事を終え、マメーがそう言えばゴラピーたちはよいちょとボウルから外に出てきた。濡れた足跡で卓が濡れるので、マメーは布巾で水気を取ってやった。


「ふあぁぁ〜」


 マメーがあくびをする。


「なんかもうねむい……」

「ピキー」

「ピー」


 ゴラピーたちもうーんと手を上に伸びをした。

 普段マメーが寝るのはもうちょっと遅い。ただ、今日マメーは初めて魔力を使用したのである。魔力が不足しているわけではないが、まだ不慣れなマメーにとって、これが疲労感となってあらわれているのだ。


「はやくねよ……」


 ゴラピーたちもうんうんと頷く。

 マメーはちゃっちゃとお皿を洗って、しゃこしゃこと歯を磨いた。


「ゴラピーたちはどうやってねるの? おふとんはいる?」

「ピキー!」

「ピー!」


 マメーが問い掛ければゴラピーたちはぶんぶんと首を振って床に降りたがった。

 マメーが彼らを抱き上げておろしてやると、彼らはてちてちと床の隅の方に走っていく。

 そこには昼に師匠から貰った鉢植え、ゴラピーたちが生まれた鉢植えが転がっていた。


「ピキー!」

「ピー!」


 ゴラピーたちはうんしょと鉢植えを持ち上げようとするが、さすがに重すぎるのか持ち上がらない。ぺちぺちと鉢植えの側面を叩いてマメーを見上げた。


「これ?」


 マメーが鉢植えのそばに屈んでゴラピーたちを持ち上げると、彼らは自分が生まれた方の鉢植えの上に降り立った。


「ピキー!」

「ピー!」


 元気よく土にあいた穴、彼らが出てきたところに潜り込んでいく。

 そして土に埋まって首から上だけ出した状態で、これでよしとでもいいたげに満足そうにひと鳴きした。


「ピキ」

「ピ」


 マメーはその様子にあははと笑うと、うんしょと鉢植えを抱え、とことこ歩いて自室へと戻る。

 ベッドサイドの机の上に鉢植えを置いてマメーは言う。


「おやすみ、ゴラピー」

「ピキー」

「ピー」


 こうしてマメーとゴラピーの一日は終わったのだった。

ξ˚⊿˚)ξ第一章というか一日目って感じですが第一章完です!


ここまで毎日更新にお付き合いいただいた皆様ありがとうございます!


ちょっとここで各種変更など。

1:

メインタイトルが「聖女なんていわれましても」だったんですね。聖女の話を早めにする予定だったんですが、予定が変わってしなかった上にかなり先になりそうなので変更しました。

→「マメーとちっこいの」です。よろしくお願いします。


2:

ジャンルを異世界恋愛→ハイファンタジーに変更します。まあ恋愛っぽい話してないし……。

いずれ恋愛っぽくなったら異世界恋愛に戻すかもです。また変えたら連絡します。


3:

とりあえず章の切れ目なんで3日くらい連載休止します。

というかもう1作品の「インテリマフィアのオルゾさん」がクライマックスからエンディング書いててこっちにリソースさけてないんですわ。それ完結させて戻ってきますんで少々お待ちください。



そんな感じです。

ご高覧いただいている皆様に感謝を。


章の終わりなので、感想とかブックマークとか評価くれると作者がとても喜びます!

ありがとうございます!(お礼先払いシステム)

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― 新着の感想 ―
[良い点] おもしろい2 [気になる点] 保温の魔法ですが、湯気でてることが表現されてました。それだと水分飛んでカチカチなのではと、湯気がどうでもいいことが気になりました。
[一言] 然るべき所に入って一安心。やっぱ鉢植えが一番落ち着くんでしょうなぁ。 通して読んでましたが、実に小気味良いお話です。続き待ってます!
[気になる点] お師匠様が協会にシカトされたと知るのはいつのことやら?
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