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【書籍化】マメーとちっこいの 〜 魔女見習いの少女は鉢植えを手にとことこ歩く【コミカライズ】  作者: ただのぎょー
第二章:聖女なんていわれましても

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第132話:げんてーとっかってなーに?

 マメーたちが小屋に入ると、ランセイルが頭を下げて丁寧な挨拶をしようとする。だが師匠はそれを止めた。


「ご丁寧な挨拶なんざいらんよ、とっとと座んな」

「は。せめて手土産くらいは……」

「はいよ、ありがとさん」


 ランセイルが〈虚空庫〉から包みを取り出し、師匠はそれを受け取ると無造作に自身の〈虚空庫〉へとしまう。

 彼がここに来るのは初めてなのだ。座ってからも興味深げにきょろきょろと落ち着かない様子であった。


「むう、素晴らしい……」


 ルイスにはわからないが、魔術の付与された物品がたくさんあるなどしているのだろう。部屋の入り口の水晶やランプなどいくつかの物に視線が吸い寄せられている。

 卓には師匠が準備したのであろう、茶が供されている。

 ルイスはそれを一口いただいてから咳払いを一つ。


「ランセイル」

「……失礼いたしました。まずは先日、ルナ王女殿下が神殿より〈鑑定〉を受けましてその報告から」

「ルナちゃん!」


 マメーはぴょんと卓上に身を乗り出した。師匠が尋ねる。


「聞いても構わんのかね?」

「ええ、殿下ご自身と陛下より許可もいただいております。ルナ殿下は肉体操作系二つ星、限定特化:変身系三つ星以上だそうです」

「げんてーとっか?」


 マメーは首をこてんと倒す。彼女が聞いたことがない言葉だった。


「なるほどねぇ。変身の限定特化か……。マメー、限定特化ってのはね。一つの属性の中でもさらにその中でいくつかの魔術に対して特別に優れた才能があるときにそう言うのさ」

「うーんと……」

「例えばあんたの植物系なら〈繁茂〉みたいな植物を育てるのに特化した魔術師を見たこともあるし、逆に〈枯死〉のような植物を殺すことに特化した術者も見たことあるねえ」

「ピキ〜〜ッ!」

「ピ〜〜ッ!」

「ピュ〜〜ッ!」


 ゴラピーたちが師匠の言葉にぶるぶると震えて怯えだした。マメーは卓上のゴラピーたちを抱き寄せる。


「ししょー、ゴラピーこわがらせちゃ、めーよ」

「はいはい」

「ルナちゃんはしかさんになったり、まえにししょーがやったみたいにおおかみさんになるのがとくい?」

「〈完全獣化〉に〈部分獣化〉か。まあそうさね。別に動物になるだけじゃなくて、身体を無機物に変えることもできる。例えば腕を刃にしたり、肌を鎧のように変えたりとかね。あとは〈覚醒せし真夏の猛火〉なんてのは全身を炎に変える火属性の高位魔術だが、変身系であるとも言える」


 ランセイルは知識欲が刺激されて思わず尋ねた。


「ルナ殿下がそこまで扱えるようになると?」

「三つ星を超える特化型の才能は他属性の前提となる魔術を無視し得るが……ま、厳しかろうね」


 つまり、火属性の高位魔術を習得するには〈発火〉から順に火属性の魔術を研鑽せねばならないが、それを無視していきなりそれを覚えることがあり得るということだ。

 だが、それには魔女にしっかりと師事する必要があるだろう。王女である彼女には難しいと師匠は伝えた。


「ルナちゃんもまじょになっちゃえばいいのにー」


 マメーは気楽にそう言ったが、なかなかそうもいかないのである。


「それで? 王女の件の報告はありがたいが、それが本題じゃあるまい?」


 それだけならわざわざルイスにランセイルと二人して急いで森にやってくる必要はないのである。

 ランセイルは居住まいを正した。


「はい、そのルナ殿下の〈鑑定〉の儀ですが、イングレッシオ枢機卿が執り行いました」

「枢機卿が……ほう」


 その名を師匠は知らないが、いくら王族相手とはいえ、神殿が枢機卿という最高位に近い人物を出してくるのは確かに例外的であるように感じた。


「イングレッシオ猊下はまだ歳若く、ですが魔術……神殿では聖術と呼ぶこともありますが、それに熟達した人物であるようでした」

「ふむ」


 ルナ王女は魔力の放出ができないため、〈鑑定〉で魔術師と判別するのは困難である。魔術が熟達した人物を出すのは理にかなっていた。

 ランセイルは小さくため息をついた。


「そこで、ゴラピー殿がマメー殿に与えられた使い魔とバレました」

「なるほどね。どうバレた?」

「鑑定結果が『使い魔:小麦色のゴラピーちゃん』だったからでしょうかね」


 今度は師匠がため息をつく番であった。

 先日、青いのを〈鑑定〉した時に予測した通りの結果であったからだ。


「それで?」

「猊下はゴラピー殿にも〈鑑定〉をかけて良いか尋ねられましたが、陛下はそれを断られました。ただ、マメー殿に興味を持たれたのは確かでしょう。神殿の方で幼き賢人殿を確保しようとするのではないかと懸念があり、陛下が秘密裏に調査するよう命じられました。不才らはそれの警告にこちらに向かいましたが、接触があったと先ほどマメー殿から」


 マメーはこくりと頷いた。


「しんでんからしさいのひとがきたよ、っていった」

「そうさね、マメーを聖女候補にしたという使者が来たよ」


 ふうむ……と師匠は唸って茶をすするのだった。

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