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【書籍化】マメーとちっこいの 〜 魔女見習いの少女は鉢植えを手にとことこ歩く【コミカライズ】  作者: ただのぎょー
第一章:角の生えたお姫さま

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第13話:こんどおともだちがおうちにきてくれるっぽいのでうれしいです!

 ルイスが帰っていったので、マメーは卓の上のカップを片付けていく。


「ピキー」

「ピー」


 ゴラピーたちも器を持ち上げようとするが、師匠の乾いた指がそれをとめる。


「割れ物を運ぶのはおやめ」

「うん、わたしがやるからだいじょぶよー」


 マメーはさっとそれらを水場へと持っていった。

 師匠はゴラピーをじっと見る。頭上の花を引き寄せ、中のつくりを観察したり目のそばで手を振ってみたり。


「ピキー?」

「ピー?」


 彼らは特に抵抗するような様子もなく、されるがままである。


「花の構造はどっちかっつーとりんごに似ているさね。さっき食べていた魔力の実がりんごだったからかい? マンドラゴラの花の構造も混ざっているのかねぇ?」


 ちゃっちゃと洗い物を済ませてマメーが戻ってくる。


「ししょーはゴラピーたちになにかごよう?」

「いや、用なんてないさ。ただ、新種のマンドラゴラってんなら色々調べておかんとねえってだけさ」

「そうだね」

「本当は薬効とか調べるのに刻みたいんだがねえ」

「ピキー!?」

「ピー!?」


 ゴラピーたちは卓の上を走って逃げていった。


「ひっひっひ」

「もう! ししょー! ゴラピーこわがらせちゃめーよ!」


 師匠は笑い、マメーは咎める。

 師匠はマメーの頭をぽんぽんと叩いた。


「うんにゃ、あたしゃやらんがね。だが珍しい生き物を捕まえようとする悪い奴はいる」

「うん……」

「魔女たちもさ。捕まえて実験しようって奴ばかりだろうさ」

「うーん……うん」


 マメーは今までに会ったことのある魔女たちを思い浮かべて、そんな気がすると頷いた。


「ピキー……!」

「ピー……!」


 二匹は身を寄せ合ってぶるぶると震え出した。


「だいじょぶよ。そういうのにはちゃんと、め! するから」


 ゴラピーたちはマメーに抱きつくとぶんぶんと頷いた。

 師匠はマメーに声を掛ける。


「さて、ちょいと魔法の続きでも見てやるとするかねえ」

「ししょー、おくすり作りはおわったの?」


 師匠は首を横に振る。


「作業の続きが夜にならんとできんのよ。満月の光を当てながら練り合わせることって手順があってねぇ」

「たいへん」

「まあね。魔法薬は面倒よ」


 師匠は肩をこきこきと鳴らすような動きをとる。


「おつかれ?」

「いや、今はそうでもない。明日は疲れて昼に寝てるかもしれんがね」

「あい」

「ブリギットのやつは面倒な薬ばっかり作らせるよ」


 マメーはぴょんと椅子の上でお尻を跳ねさせて右手を挙げた。


「ブリギットししょー!」

「そうさな」

「ウニーちゃんのおししょー!」


 ブリギットもまた魔女であり、ウニーという弟子を抱えている。ウニーもまた魔女界隈では珍しい幼児で、マメーの友人なのであった。


「おくすりできたらブリギットししょーも来るかな?」

「取りに来るって言ってたねえ」

「ウニーちゃんも来るかな!?」

「連れてくるんじゃないかねえ」


 マメーはぴょんぴょんと跳ねた。師匠は笑う。


「ウニーに魔法が使えるようになったところを見せておやり」

「うん、まほうつかえるようになってウニーちゃんおどろかせる!」

「ピキー!」

「ピー!」


 マメーが気合を入れればゴラピーたちもぴょんと跳ねた。

 師匠はゴラピーたちに視線をやる。


「……そうさね」


 こいつら見せればそれだけで驚くとは思うが、まあせっかく気合が入っているのだ。水を差す必要もあるまい。

 さて、と師匠は杖を取って一振りした。四角い鉢植えが飛んでくる。それはすぽりとマメーの手に収まった。


「はちうえ……ミント!」

「そうさね」


 鉢植えには緑色の葉っぱがもさもさと生えていた。マメーの言う通り、ミントの葉っぱが清涼感のある匂いを漂わせている。


「ピキー?」

「ピー?」


 マメーが卓に鉢植えを置けば、ゴラピーたちも興味あるのか鉢植えを覗き込むようにしてミントを見た。


「さっきマンドラゴラに魔力を通せただろ? まあそいつらになった訳だが」

「うん」

「魔力は回復しているかい?」

「うーん、まりょくへったかんじしない」


 師匠は溜息を一つ。一応、魔法を使い始めだから魔力が枯渇しないようにこうやって時間を開けているのだが、五つ星ともなればそんなものかとも思う。


「それならいいさね。今度は魔法植物ではない普通の植物に魔力を通せるかやってみなっていう話だ」

「うん」

「ミントはよく育つ植物だが、さすがに単純に魔力を流しただけじゃあダメだ。〈豊穣〉とか〈繁茂〉といった魔術にしてやらにゃならん」

「まほーしょくぶつじゃないから」

「そうさね」


 というわけで師匠はマメーが学んでいた〈植物成長〉の術式が、正しい身振りや詠唱できるか、問題ないことを確認した。


「よし、じゃあやってみな」

「あい」


 師匠はマメーに見習い用の小さな杖を渡した。マメーは杖を持って慎重にその先端をミントの鉢植えに向けて振りながら、高らかに詠唱した。


「〈しょくぶちゅーせいちょう〉!」


 魔法の光がミントの鉢植えに向かう。

 ぽん! ぽん! と音がした。


「ピキー!」


 ゴラピーたちの頭上の花がたくさんに増え、あじさいのような玉になっていた。

 マメーは叫んだ。


「かわいい!」


 師匠は叫んだ。


「なんじゃそりゃぁ!」


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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱマメーの友人は、ウニーなんですねえ( ˘ω˘ )
[良い点] 師匠のなんじゃあそりゃあ [気になる点] そのうち原料としてナマコも出てくるんでしょうか
[良い点] 伊賀海栗タグが付いていないか、確認しに行きました ✺✺✺✺✺✺✺✺✺✺✺✺✺✺✺✺✺✺✺✺✺✺✺✺
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